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「読み語り『父と暮せば』」誕生!Side:岩渕健二

「芝居屋ゆいまの」の4人が、それぞれどのように「読み語り『父と暮せば』」と関わっているのか、関わるようになったのか、のエピソードを本人が語ります。今回は竹造役の岩渕健二の場合――

親父からきいたこと、きけなかったこと

大正9年生まれの親父は、乙種合格で、赤紙が来たのは戦争の末期。それでも馬の世話をする兵隊として宮崎県にいたらしい。
アメリカが沖縄に上陸したあとは、宮崎県の海岸に穴を掘って、爆弾を持ってアメリカ兵を待ってたらしい。
親父からきいたこと、これくらいのことしか覚えていない。
戦後教育を受けた自分は親父が話す体験談を「耳にタコ」と拒絶したからだ。

親父は19年前に亡くなった。今、なぜもっと話をきこうとしなかったかが悔やまれる。

東京の現代座に入団して『星と波と風と』というお芝居で、ミクロネシアで死んだ上等兵の役をもらった時、大阪の親父に電話した。
「当時の話をきかせてくれ。」「あらたまって話せるもんやない。」そんな電話での会話が想い出される。

「親父、部隊の名前は? 宮崎県のどこやったん? 馬は何頭ぐらいいたん? なんで馬なん? 誰が乗る馬なん? どんな飯やったん? どんな兵舎やったん? 戦友は? 海岸に穴を掘ってたってどれくらいの穴? だれが掘ったん? 1日何交代やったん? 穴の中で飯はどうしてたん? トイレはどうしてたん?……。」

今ならききたいことがたくさんあるのに……そんなことを想う。

縁あって2016年から、原爆を落とされた広島の3年後の『父と暮せば』(井上ひさし作)を前橋でやらせてもらうようになって、また親父にきけなかったことを思い知る。だからいろいろ調べ考える。
前橋市民ミュージカル『灰になった町』に参加した時もそうだ。そして、そのとき群馬町に飛行場を作って練習していたことを知る。特攻機が知覧に向かったことを知る。
2018年『ホタル帰ってこい』の朗読劇をやらせてもらった。知覧の食堂の小母ちゃんと特攻兵の交流。『ホタル帰る』という本をもとに構成したものだった。

いろいろ考える。自分という世代が語り継がなければいけないことを。
うまく語り継げなくても、演じ続けることが語り継ぐことになるかもしれない。

「親父の体験をしっかりときいて、本にでもまとめてあげれなくて、ほんまにごめんな。でも年取ってきた自分がやれることを、やってみるからな。」

*   *   *   *   *
芝居屋ゆいまの京都公演「読み語り『父と暮せば』」
2024年4月6日(土)17:00~/4月7日(日)14:00~
会場:法光寺(京都市上京区中長者町通西洞院西入中橋詰町172)
定員:各回40名(お申し込みが必要です)
料金:1000円  中高生500円 当日受付にてお支払い(現金のみ)
お申し込みはこちらから↓↓↓Googleフォーム
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