今回は、前回【26話】 の続きです。
続 ライブへの情熱 「唯 いよいよね」 「そうだね 梨紗ちゃん」 「唯 緊張してる」 「してないよ ワクワクして楽しいよ 梨紗ちゃんは どーお」 「私は少し緊張してるわよ」 「してないでしょう 梨紗ちゃん 目がキラッでしてるよ」 「そっ そうかしら 唯にはすぐ分かってしまうわね」 「そりゃ そうだよ」 「じゃあ いくわよ」
1曲目:ロマンス(岩崎宏美)唯バージョン ラブリーキュート な唯 ちゃんが、観客に向かってペコッとお辞儀をして、ニコッとします 。 そして、アイスビーテイー な梨紗ちゃんの、エレクトーンでのハードなイントロが始まります。 すると、突如変貌する唯ちゃんは、ハードに縦横無尽に動き回り、中高音からの力強く且つクリアーに歌い出します。 もう唯ちゃん、ノリノリです。 梨紗ちゃんの、力強く流れるようなベース音、ベースペダルを両足で操作しています。 真骨頂は、ラストのサビの繰り返し、唯ちゃんの一番の見せ場です。
「あなたお願いよ 席を立たないで 息がかかるほど そばにいてほしい あなたお願いよ 席を立たないで 息がかかるほど そばにいてほしい」
これがワンセット。 1stセットはオリジナルキーで、2ndセットは半音上げ、3rdセットは更に半音上げ、普通ならここでオリジナルキーにもどしてエンディングに入るのですが、梨紗ちゃんからのアイコンタクトで、4thセットで更なる半音上げを、そして一気にオリジナルキーに戻して、観客を指さし、
「~あなたが」
で、ピタッと演奏が止る。 あえて、「好きなんです」は言わず含みを持たせる、終わり方です 静まるホール、唯ちゃんがペコッとお辞儀をして、ニコッとします 。 そして、大きな拍手が響き渡ります。
2曲目:そよ風の誘惑(オリビア・ニュートン・ジョン) 梨紗ちゃんのピアノから、静かに始まるイントロが奏でられます。 唯ちゃんは、マイクスタンドのマイクを、両手で包み込むようにしてニッコリとして、クリアーな高音と裏声を適宜に入れて、歌い上げて行きます。
「There was a time when I was in a hurry as you are I was like you~」
そして、曲の中盤から後半にかけて、徐々に盛り上がるところで、唯ちゃんは、マイクをスタンドから外して、片手に持ち直します。
「Have you never been mellow have you never tried to find a comfort from inside you Have you never been happy just to hear your song Have you never let someone else be strong」
唯ちゃんのボーカルと、梨紗ちゃんのピアノが一体化して、エンディングへと向かっていきました。
ベートベン交響曲第7番第4楽章(ピアノで演奏)と、エルガー行進曲 威風堂々 第1番(エレクトーンで演奏)を繋ぎ合わせて5分以内に収るように、また曲もロック調にアレンジした曲です。
今日の梨紗ちゃんは、ノッテいます。 梨紗ちゃんのノリは、唯ちゃんのそれとは異なり、静かにノリます。 表情が虚ろになり、冷たさが増し、あくまでも軽くゆっくりと、首を縦に横に振ったりします。 唯ちゃんが言うには、
「あ~あ 梨紗ちゃん また どっか行っちゃったよ 唯の所に戻ってくるんだよ~」
だそうです。
拍手喝采で終えた梨紗ちゃんと唯ちゃん、お辞儀をして、無事大成功で初ライブが終了しました。
気になる次の人 そして、次の人の演奏が始まりました。 どうも、高校生ぐらいの男の人です。
「次の人 学生服着てるんだよ 高校生かな 梨紗ちゃん」 「そうね あの制服だと中学じゃないかしら 私達より学年上だと思うわ」 「アコギだけでやるみたいだよ 何するんだろうね」 「プログラムには クラップ(Clap ) と ムード・フォー・ア・デイ(Mood for a Day) ってあるわよ イエス(YES) の曲ね」
「イエス・・唯はラウンドアバウト(Roundabout) しか知らないんだよ」 「私もよ」 「始まるよ 少し見るんだよ」 「そうね・・・・上手ね・・どんな人か気になるわね」 「左手 忙しいね」 「こんな曲も あったのね」 「拍手沢山 もらえるといいね 梨紗ちゃん」 「そうね 唯 そろそろ行こうか」 「そうだね もう唯お腹ペコペコだよ」
拍手の心配は、全くいりませんでした。 そのテクニックに、拍手喝采だったのです。 唯ちゃんと梨紗ちゃんよりも。 この男の人、そのうち出会うことになります。
唯ちゃんと梨紗ちゃんは、その後も小規模なコンサートに出場しました。 その中には、老人施設の慰問や保育園などの、ボランティア的なものもありました。 ポップ系以外にも、クラッシック・演歌・アニメ・童謡等その場に合った曲を演奏したそうです。 活動は、中学3年生の、1学期中間試験前まで続き、高校受験勉強のため中断しました。 二人の活動は、意外にも学校内で知る者は、いなかったようです。
そして、高校合格後、高校1年の春にバンド結成することを目指し、楽器店のメンバー募集掲示板に、張り紙をしました。
「メンバーの募集です 募集だよ ギター、ベース、ドラムです だよ 下手な人はいりません、上手な人でお願いします お願いだよ」
と、これで本当に来るのでしょうか。 いきなり、ハードル上げてしまいました。 唯ちゃんと梨紗ちゃんの実力からしたら、致し方ないかと思いますが。 張り紙には、店長さんの計らいで、唯ちゃんと梨紗ちゃんの写真が入ってたそうです。 もちろん、梨紗ちゃんは嫌がりましたが、唯ちゃんと店長さんに、無理やり説得させられてしまいました。
さて、高校1年の春に、バンドが結成されるのでしょうか。 唯ちゃんはともかく、梨紗ちゃんが納得出来るような、上手な人が入ってきてくれるのでしょうか。
この話は、また近いうちに、想いでを語って貰いましょう。 また、次回に、お会いしましょう。
【索引】 【登場人物】
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