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【演劇】イギリスの不倫作品、『背信』 どう読む?

一年生の夏休みの宿題「あさがおにっき」がなんだかんだ六年生まで習慣になった。
あれから10年以上。今になってなぜ文章を書きたいんだろうか。

2023.2.21 yuiko

  劇団競泳水着さんの企画する #戯曲を稽古して通してみようの会 に参加した。戯曲はハロルド・ピンターの『背信』。主な登場人物は3人で、ロバート、エマ(ロバートの妻)、ジェリー(ロバートの親友、エマの不倫相手)だ。物語は9場面ある構成で時代を逆戻りするように書かれている。つまり9場が一番古い時代だ。集まった俳優は14人。同じ役も、場面ごとに分担して演じる。私は3場のエマのみ稽古した。#全員稽古場日記 で稽古初日と最終日のことを書いたが、今回は自分の所を切り取ってさらに付け加えてもう一度記録してみようと思う。劇団主宰の上野さんにもご快諾いただいた。文章を書くきっかけをありがとうございます。



1月16日(月) 顔合わせ 
3場エマ役小川結子

 顔合わせ前、ほんとはヨガにいって身体を動かしたかったが、雨が降っていたし、気圧の日?と聞くと、そう、だというので頭痛も確かだった。だからコーヒーをちょっと大きいサイズで飲むことにした。稽古場近くのカフェでコーヒーとその店人気のシュークリームを購入。店内で過ごした。しっかりした生地と生地の間にたっぷりめにクリームが入っているシュークリームは、フォークで食べるのが難しく(私はそもそも食べるのがとっても下手。)隣の人がどんなふうに食べているかとりあえず観察した。

 今回稽古するハロルド・ピンターの『背信』を久しぶりに一読したのは1月2日。この話は逆再生展開で時間を遡って進んでいくので、読者/観客は登場人物たちの間で起こる出来事や結末を先に知ることになる。(上野さんは逆サスペンスという言葉を使っていて、いいなと思った。) 俳優はどこでどの程度情報をひっかけて提示していくか考えようがあると思った。キーワードになりうる「物と場所」の思い出、思い入れも今のうちに整理しておきたい。戯曲のポイントに色分けした付箋を貼り、登場人物の関係性ごとに年表を時系列で整理した。この作業は今までやったことはなかった。

 そんなあとでやはり気になるのはこの戯曲のテーマ。まず私の好きな場面にこういうのがある。エマが劇中読んでいる本の内容について夫ロバートと話すシーン。

エマ「この小説のテーマは何だと思ってるの?」
ロバート「背信だ。」
エマ「いいえ、それは違う。」
ロバート「そうかね?じゃ何だい?」

…『背信』のテーマは背信ではない???

もう一つ好きなところはエマと不倫相手のジェリーのシーン。

エマ「つまり何が言いたいの?」
ジェリー「僕は何も言いたくなんかない。」
エマ「でも、あなたは何を言おうとしているの、そんなことを言って?」

 言葉の裏の意図を探ろうとしているのがよくわかる。お互いがひっかかることはなんなのか、それを相手はどのくらい分かってないのか、2人のズレを読んでいて楽しい。

挙げた2つは作家から読み手へのメッセージのようだ。人物目線だったカメラが一瞬俯瞰に切り替わるみたいで、台詞の意味が二重三重に思えるのが好き。『背信』は人からものにフォーカスしたり、時空がぼわんってなったり、カットが変わったなと感じる瞬間が多くある。演劇で表現するのは難しそうだけどこのイメージを持っていたい。
でも作家がピンターだということを考えると、ほんとは特別なメッセージなどないかもしれない。ただ匂わせているだけ?とにかくおしゃれ。

ー顔合わせ前のカフェでコーヒーを飲みながら、なぜロバートとエマは別れることになるのか、一番気になっている点について巡らせる。新たにひっかかる台詞について考える繰り返し。私なりの仮説が立ち、今までの解釈より進んでちょっぴりアガる。別のピンター作品の印象も頼りにしていたけれど、そっちに引きずられすぎていたなと気づく。不倫相手ジェリーに対する新たな複雑な気持ちも生まれた。
それから読み合わせの目標を立てる。

①作家(翻訳家)が指定している 、。… ー や、ト書にある「間」と「沈黙」を使い分ける。
(全ての記号やト書の意味を一度仮決めして書かれている通りに読むと、役が何に重きを置いているか見えるような気がする。)
②シーン中の不在の人を意識する。

ー 本読みが始まった。
相手役の方は共演経験はないがお知り合い。芝居への取り組み方がひたむきで決して誇示しない素敵な方。台詞のベクトルや音量の使い分けに色気を感じる。(それにしても、出会いよりも別れに色気を感じるのはどうしてだろう…?) やり取りのリズムの創り方で息が合う感覚が既にあって感謝感謝。良い意味でここから裏切っていけたらいいな。

 女性の書き言葉が身に馴染まない。どうせ喋れるようになってしまうのだが、自分の言葉に落とし込む前にこの違和感は忘れたくない。人が書いた言葉、翻訳された言葉、別の人物が話す言葉、ということ。

 今回の企画、同じ役を時代ごとに分担して数人で演じる。聞いていると特にエマ役が段々若がえる感じが引き継がれていって面白い。
それからもっとエマは嘘をついてもいいのではと感じた。劇中ジェリーが記憶が曖昧だと指摘されることが多く、彼は「今」が一番大事で快楽を欲してると読んでいるが、実はエマが話す記憶の方が全部嘘だったりしてね。

 読み合わせ終了。今日は自分の解釈を共有しなかった。話してしまうと自分の中で固まってしまいそうで…。でもこれからはなるべく考えたことを明かしていきたいな。
 立ち稽古に向けて、『背信』の背、背中をどのタイミングでどこに向けるのか、色々試したくなった。

おしまい。


ここからが付け足しだよ
  このあと、背中に加えて三角形の意識も加えるようになる。不倫の三角関係を立ち位置や目線で表現できるのか…?というチャレンジだ。
 カメラというキーワードも残り続けていて、目がカメラになったみたいに、私が見つめる先を観客に今注目してほしいと目で訴えることもあった。顔→手→手で持っているもの のように視線を動かすといった風に。



 次は劇団競泳水着さんの稽古場日誌に載せていない期間のことを書こうと思う。「あさがおにっき」の初期みたいに、つらつらと並べ立てるだけかもしれないけれど。

おしまい。


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