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おいしい和食屋さん(8)

美味しく食べてもらいたい!

こんにちは、神崎このはです!五郎ちゃんの隣のお店、『茶葉』で働いているの。
今日は、お仕事が終わった後、(夕方)五郎ちゃんのお店に、『弟子』がいると聞いたから、お店に行って、美味しいものを食べるよ。何が食べられるのかなあ。
「おーい!神崎さん!ボーッとしていないでさっさと動いてちょうだい!」
このはに、注意をしてきたのは、『後藤さん』。とても優しい仕事仲間。
「今日のまかないは『肉野菜丼』!神崎さんが好きな料理だから、いつもより、2倍頑張りましょうね!」
やった!今日の昼食はこのはの大好きな食べ物だ!やる気が出てきた!頑張るぞー!

午前の任務は終わりました!今は後藤さんと昼食の時間を楽しんでいるよ。たったの、80分間だけどね・・だからこそ、昼食の時間が尊い・・
「神崎さん、まかない、美味しい?」
後藤さんがにっこり聞いてきた。もちろん、『はい!とても美味しいです!』と答えたよ。
「それはそれはよかったねえ・・ご飯いっぱい食べられて幸せだねえ・・」
意味ありげに、後藤さんが山盛りの『肉野菜丼』を見つめた。少しの沈黙が続いた後、後藤さんはこういった。
「昔は、戦争で食べ物が配給制、または食べられないことがあったの。戦争から何年経ったかしらね・・これから、始まる可能性だってあるかもしれない。そう思うと怖いわあ。ごめんね、長話しちゃって。」

束の間の80分間が終わったよ・・終わってしまったのは残念だけど、後藤さんの言葉が、耳から離れない。戦争・・数年前は食べられないのが当たり前だったのかな。戦争はこれから始まったっておかしくない・・
そう思うと怖くなってきた。そうだ、夕ご飯のことを考えよう。五郎ちゃんたちの作ったご飯を食べて、家に帰ったら暖かい湯船に浸かろうかなあ。
そんなことを考えていたら、後藤さんが、
「神崎さん、今日はやる気が出ないのかしら?」
と聞いてきた。このはは、『いえ!大丈夫です!』と答えたよ。


6時間の仕事が終わり、やっと、夕ご飯の時間!さて、五郎ちゃんのお店は・・
あっ!見えた。『和の心』って書いてある建物。
カランカラーン。
「おお、このは殿じゃな。イタズラの件は反省したのか?でも今の様子だと、イタズラをしていたのが嘘みたいじゃな。」
えっ?このは、嘘つきだと思われているみたい。そんなの嫌だあ!このはは『ごめんね、このは、イタズラした覚えはないのだけれど。でも、夕ご飯はここで、済ませたいの。だから、ここで食べてもいい?』と言った。
「いいが、みちる殿とやよい殿はいないぞ。だってもう、6時を過ぎているから、夕ご飯を食べているのじゃからな。」
よし、ごまかせた。そっか、今日は弟子たちに会えないみたい。でも、今日の目当ては食事だからいいか。
「このは殿、何を食うかい?」
五郎ちゃんが食事表を見せてくれた。このはは、『肉汁蕎麦』を注文したよ。

カランカラーン。
違うお客さんが来たみたい。
「こんばんは、山崎恵太だ。」
山崎恵太・・初めて聞く名前だな。
「恵太殿、久しぶりじゃな。大きくなったのう。」
五郎ちゃんがこのはの肉汁蕎麦を作りながら、山崎恵太さんと話している。
「ねずみの五郎くん、君はとても素晴らしいよ。僕のことを覚えていて、調理もできて。羨ましいよ、僕は、調理なんて似合わないんだから。」
自慢なような嫌味のような。会話力がないこのはにとっては五郎ちゃんたちの会話が理解できないな。
「似合うと思うが。あっ!このは殿の『肉汁蕎麦』できたぞ。」
五郎ちゃんはすぐ料理を持ってきてくれた。しかも美味しい!いい夕食だなあ!

カランカラーン。
お腹が幸せいっぱいになったので、お家に帰ります。でも、お客さんでいた、『山崎恵太』って人が気取っているような態度だったから、少し嫌だった。思い出したくもない。『肉汁蕎麦』は美味しかったんだけどね。もう、湯船に浸かってそのことは忘れよう。あ!もうお家に着いた!
「このは!おかえりー。」
お母さんが出迎えてくれたよ。
「今日の仕事、どうだった?楽しかった?」
お母さんは、いつもこのはのことを知りたがる。なんでだろう?母親ってみんなそうなのかな?何回も聞かれ過ぎて、今日も『いい感じだったよ!』と答えた。

チャプン・・
あ〜あったかくて気持ち良い!今日の出来事全部忘れられるくらい!湯船に浸かると、疲れも取れるし、嫌なことも忘れられるし、もう最高なことしかないなあ!
「このはー!今は11時30分!もう寝ないと朝起きられないわよ!」
ああーお母さんは、このはの至福の時間まで奪おうとしてくる!
っていうのは嘘で、本当はもう、湯船に3時間以上入っているから、遅くなっちゃったんだ。よし、寝る準備をしよう!

今日は本当に疲れたな。あ、天井に小さな穴が3つある。直さないのかな?
後藤さんは、9時間働いていたから、このはよりも、とても疲れただろうなあ。
五郎ちゃんの『肉汁蕎麦』美味しかったなあ。また、食べたいな。

色々考えながら、ゆっくりと目を瞑った。そうしたら、真っ暗な世界が広がっていくような感じがした。この感じ、とても楽しいなあ。眠いし、もう何も考えずに寝ちゃおう。でも何も考えずに眠るのって意外と難しいなあ。それでは、おやすみなさい。