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おいしい和食屋さん(3)
イタズラされた手紙
やあ。わしゃ、ねずみの五郎じゃ。
今な、大変なことになっとるんじゃ。やよい殿が『私たちが帰れないのはねずみの五郎のせい』と言うてな。わしゃ、そんなつもりはないんじゃよ。じゃが、みちる殿も黙ったままじゃ。困ったのう。わしゃは、仲良くするためには、美味しいものを食べてもらったり、作ったりすることだと教えられてきたのじゃ。でも人間の世界では無理なことなのかのう。あ!わしゃ、良いこと思いついたぞい。わしゃは、『わしゃはやよい殿とみちる殿と仲良くしたいのじゃ。じゃから、なぜ二人に和食屋を営んで欲しいのか教えてあげよう。』と仲直りを提案したのじゃ。良い考えじゃろう。
「え!知りたいかも!ね、やよい!」
おお。みちる殿は乗り気じゃ。やよい殿は・・
「うーん。そうしたらお寿司とか、ステーキとか食べられる?食べられるなら、教えてほしい。」
食いしん坊じゃな。まあ、二人とも乗り気ということで良いかのう。じゃが『お寿司』は寿司。『ステーキ』とはなんじゃろうか。わしゃ、聞いてみた。
「ステーキはお肉を焼いて味づけをした、洋食の中では一番人気の料理だよ。」
やよい殿が答えてくれた。ほう、『ステーキ』とは肉を焼いて味付けしたものなのか。うまそうだな。
よし、約束通り、二人に教えるぞい。じゃが、少し『緊張』するなあ。まあ、大事な大事な理由じゃからなあ。わしゃは、理由が書いてある小さな半紙を二人に見せた。
『和食屋を営んで欲しい理由は二人がだから。 五郎』
ありゃ?文章が少しおかしいぞ。一番大事な理由が書いていない。わしゃ、筆で書いたのになあ。よく見ると三つ葉の絵が描いてあるぞ。三つ葉の絵はこのは殿の着物の柄じゃな。きっと、このは殿がわしゃが書いた手紙にイタズラをしたのじゃな。まったく・・
「見せて見せて、あれ?理由が書いてないじゃん。嘘つき!」
みちる殿が残念そうに言った。すまんなあ。
「はあ?信じたのに、結局嘘ついたんだ。もう!」
うう。次はやよい殿に勘違いされてしまった。このは殿・・わしゃ、『裏切りねずみ』になりたくないからのう。どうするべきか。このは殿を叱るか、二人に『言い訳』をするか。よし、二人に謝って訳を説明することにしよう。『すまんなあ。書いていない理由は、隣の茶屋で働いている、このは殿がイタズラしたからなのじゃ。じゃから、本当にわしゃは嘘をついていないぞ。』ってな。
「そうだったんだ。ねずみの五郎さん、ごめんね。」
みちる殿は、信じてくれた。が、やよい殿が、頬を膨らませて怒っているようじゃ。
「え?その『このは殿』って人のせいにしないであげてよ。やっぱり、ねずみの五郎が私たちを騙したに違いない!」
困ったのう。これは直接このは殿に謝ってもらうしかないな。
チャランチャラーン。いらっしゃいませ!
元気そうな、このは殿の声が聞こえた。相変わらず元気そうでよかったわい。
なぜ、イタズラされた人の心配をするのかって?それは、わしゃの命の恩人だからじゃよ。それにしても、二人に誤解を解いてもらうために連れてきたのじゃが、『何で連れて来られたのだろう』と不思議な顔をしとるわい。そう思うのも無理はない。だって『隣の茶屋に用がある』とだけ伝えて連れてきたのじゃからな。さてと、このは殿と話をしようかの。わしゃはこのは殿を呼んだ。
「なあに、五郎ちゃん!今日も可愛いねえ。」
予想通り、謝ろうともしない。きっと、イタズラをしたことを忘れているのじゃろう。じゃが、このは殿がイタズラをしたことは嘘じゃあない。着物の柄という証拠があるのじゃから。
「うふふ。このはの化粧が可愛くなっているの、気づいたかしら?新作よ。」
この通り、このは殿は美容に気を遣っている。本当だ、化粧が変わっているのう。
気を取り直して、わしゃは今日困っていたことなどを、このは殿に話し始めた。
「・・・・・・・。」
じゃが、絶対に謝ろうとしない。ずっと黙ったままじゃ。この状況が一番困るのう。
「あっごめんなさい。このは、自己紹介していなかったですわ。『神崎このは』よ。ここの茶屋、『茶葉』で働いているの。よろしく。」
むむむ・・
「あの、あたし達、なんでここにいるんですか!」
みちる殿が、わしゃとこのは殿に聞いた。わしゃは『手紙の理由がわからなかったのは、ここで働いている、このは殿がイタズラしたから。と伝えたかったからじゃよ』って答えたぞい。
「ちょっと、五郎ちゃん!子供に変なこと教えないで!大丈夫だよ、お姉さん、いたずらなんかしてないからね〜」
このは殿は焦った様子で誤魔化している。誤魔化したって構わないがな。
「私は、ねずみの五郎が正しいと思う。なんとなく。」
珍しく、やよい殿がわしゃの味方をしてくれた。よかったぞい。だって、ここでこのは殿の味方をされたら困ってしまうからのう。
「やよいが、ねずみの五郎さんを味方にするなんてなんて珍しい。」
みちる殿もびっくりしているようじゃな。
しまった、長居していたのう。そろそろ、『和の心』も開店してもいい頃じゃな。
くくく・・とても楽しそうじゃな。