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おいしい和食屋さん(7)
まずい!
ねずみの五郎じゃよ。今な、久美殿にわしゃ達が作った、料理を召し上がってもらっているのじゃよ。どう言われるのか・・久美殿は最初に味噌汁を食べ始めた。
「うん。とてもいい味ね。にんじんの甘みが好きだわ。」
味噌汁は好評だ。炊き込みご飯は・・
「ま、まずい!なんて残念な味なんでしょう・・」
「こんな味、こんな料理は初めてだ!」
久美殿が一気にそういった。ビクッとした。そして悲しかった。なぜじゃ・・?なぜなのじゃ・・?いつの間にか、みちる殿とやよい殿の気配がなくなっている。きっと悲しくて出ていってしまったのだろう。
「久美様!そんな言葉はいけません。」
「すみません。今日は帰らせていただきます。私も食べましたが、二品とも美味しかったですよ。また来させて頂きます。」
如月さんは、『とても美味しかったです!』と書いてある、紙をわしゃに渡して、帰っていった。
やよい殿とみちる殿は寝床で寝そべりながら、積み木をしていた。
さっき、みちる殿が夢中になっていた積み木じゃ。積み木は20年前のものじゃが・・
「ねずみの五郎、久美様達は帰っていった?」
やよい殿が聞いてきた。『ああ帰ったぞ。』とわしゃは答えた。
「ひどいよ、あたし達が心を込めて作った料理だったのに。あんなことを言うなんんて。」
みちる殿は悲しそうだ。わしゃもとても悲しい。
「もう、久美様をお店に招かないでね。」
やよい殿がそういった。久美殿は悪気があって、ああいったわけではないと思うがなあ。
わしゃは二人にさっきの出来事を詳しく説明した。
『久美殿はきっと、真鯛とか、海老とか豪華な料理しか食べなかったんじゃろなあ。しかも、調理している人は如月殿、料理が上手じゃからとても味わい深いのだろう。今日の料理は誰でも気軽に食べられる、そんな料理だったから、久美殿にはおいしいと感じなかった。そう思うぞい。でも、如月さんは『とても美味しかったです!』と言う紙までくれたのじゃから、『おいしさ』は本物じゃよ。』
とな。
「そうだよねえ・・」
涙声でそういったのはやよい殿だった。
「私、まずくてまずくてしょうがなくて、食べれないほどなのかと思ってた。だけど、ねずみの五郎のおかげで、久美様の気持ちに気付けた気がする。みちるんも『大丈夫!あたしたちの料理はまずくなんかない!』って言ってくれたね。みちるん、ねずみの五郎、ありがとう。」
急に感謝されて、驚いたわい。もう何が何かわからないのう。じゃが、わしらが作った、炊き込みご飯のように、心がほかほかしているのは分かる。
「やよい、そんな言ってくれるなんて、珍しいじゃん!感謝しているのは伝わるけど、言葉にするなんて。とても嬉しいよ・・」
二人とも、本当に心の優しい子供なんじゃな。一緒に和食屋を営めることもとても楽しみじゃなあ。
まあそんなこと二人に言えるわけがない。恥ずかしいしなあ・・