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おいしい和食屋さん(1)

ねずみとの初めての会話

はじめまして!私の名前はやよい。漢字では弥生とかくよ。今は塾トモのみちるんと塾の帰り途中です。でもね不思議なかごバックが二つ、目の前にあるんだ。不思議でしょう?
「あたし、気になる!開けてみようよ。」
みちるんが言った。そしてすぐ、えいって中身を開けた。

えっ!身の周りの景色と服が一瞬で変わっちゃった!私もみちるんもびっくり。「わーい!これが着物!?」
でもみちるんは嬉しそう。だって景色は山、川、住宅、店、森だけだよ。なのにみちるんたら着物に夢中。確かに可愛い、わたしは花柄もように青色の着物、みちるんは水玉もようと花火柄の着物だ。
「あれ、ここ何もないじゃん。帰りたくなっちゃったなあ」
みちるんがやっと周りに気づいた。そこに低い男の人の声が入ってきた。
「何を言っとるんじゃ、ここはいい土地じゃぞ」
声がする方をみたら耳の大きなねずみがいた。
「失礼、名を言っておらんかったな。わしゃ、ねずみの五郎じゃ。」
へっ!?次はねずみがしゃべってる!
「そうなんだ!あたしね、みちるっていうんだよ。よろしくね!」
先生には知らない人(人じゃないけど)とは、話しかけたりしちゃダメって言われていること、みちるんは忘れていた。だから私は名前は教えなかったよ。
「クマ頭のやつはみちるというのだな。髪が長いやつは何というのか?」
でもねずみの五郎っていうねずみ、私の名前聞こうとしている。私、言いたくないのにな。そう思ったけど仕方なく名前を教えた。
「ほう!やよいか。いい名じゃな。」
褒められて少し嬉しい気もするけどやっぱり、怪しい。

塾の帰りから、ものすごいハプニングっていうか、いろんなことが起きてる。それもあるのか『ねずみの五郎っていうねずみ』て呼ぶのめんどくさくなっちゃった。「実は大事なおねがいがあるのじゃ。」
そう言ってねずみの五郎が小さな紙切れを見せた。
『和食屋を二人で営み 幸福を届けろ』どういうこと?私たちはまだ小学生だよ!?ねずみの五郎は何を考えてるの?私の頭の中は『?』でいっぱい。
「和食屋を二人で・・み?」
みちるんは予想通り乗り気。そして『営み』の漢字が読めてないから教えてあげた。いとなみって読むんだよ。ってね。
「二人とも、考えておいておくれよ。」
そう言って、ねずみの五郎は木でできたお店(多分看板に文字が書いてあるけど私は目が悪くて読めない)の方向に去っていった。

いやいや。おかしいでしょ。私たちここがどこかもわからないし、帰る方法もわからないのに何でおいてくのよ。意外と足が早かったから走って追いかけた。
「二人とも帰らないのかい?帰る場所なら、あそこの『船乗りのおじさん』に行けば帰れるぞ。」
ねずみの五郎がそう言ったから、帰れる!ってホッとした。と思ったら
「すまん、『船乗りのおじさん』は営業時間外じゃったわい。」
船乗りのおじさんの案内板を見たねずみの五郎はそういった。ちなみに、『船乗りのおじさん』は船に乗ってお出かけをサポートする、空港みたいな場所らしい。それで、私たち帰れないじゃん。みちるんに目で『どうするの?』って合図したら『そんなことは、気にしない。』ニヤニヤした顔でこっちを向いた。全く、今の状況がどんなに大変なことかわかってないみたい。こんな状況だったらパニックだよ、普通。

「二人とも今日は泊まっていくかい?」
さっきまで黙ってたねずみの五郎が急にそう言った。泊まっていく?おかしい、おかしい。知らないねずみと一緒に泊まるなんて考えられないもの。ていうか、ねずみなんだから、布団とか、テーブルとかは全部、ねずみサイズだろうし。
「うん!泊まりたい!ねずみの五郎さんのお家行きたい!『和の心』ってお家なんでしょ。」
みちるんがまた、意味不明なことをいった。みちるんは目がいいから、看板の『和の心』が読めたんだ。へえ、和の心かあ。いい名前だなあ。
「そうじゃ。『和の心』じゃよ。そんじゃ、行こうかね。」
みちるんのせいで勝手に話が進んじゃった。大丈夫かなあ。