カメラオブスクラが映し出す日常
1.カメラオブスクラとは
『カメラオブスクラ (camera obscura)』とは、ラテン語で“暗い部屋”を意味します。カメラオブスクラは像を投影するためのものであり、古くから素描などに利用されてきた装置です。映し出される像はピンホールという小さな穴を通り、実像が逆さまになって映し出されます。カメラオブスクラの原理を利用していた当時のヨーロッパの画家たちは、映し出された像を素描で残していたため、今でいうところの撮影という行為は素描であったといえるでしょう。レオナルド・ダ・ヴィンチやヨハネス・フェルメールなどの巨匠も絵画を描くためにカメラオブスクラの原理を利用していたのではないかと言われています。カメラオブスクラの原理を用いた長い歴史の中で、ようやく今のフィルムカメラやデジタルカメラといった媒体が誕生しました。
2.カメラオブスクラを作るに至った経緯
私はスマートフォンを手にしてから写真を撮るようになり、毎日のようにスマホで景色や食べたものを撮影していました。その後、中学2年生になり、父からミラーレス一眼レフをもらい、写真の世界に更にのめり込みました。もちろん、出来上がった写真を見ることも好きですが、ファインダーを覗き込んだときに感じる高揚感が一番好きです。自分のすぐ目の前にあるものでも、ファインダーというフレームを通して対すると、そのものに強い価値を感じるようになります。ベランダからの景色、通学路の道端、家族や友人の姿…普段何気なく感じているそれら全てに価値があり、自分の目の前に当たり前でなく存在しているのだと感じさせられます。
ファインダーから見る景色は万華鏡のようなもので、ファインダーを覗いて初めて見える現実とは別の景色に感動します。写真そのものの魅力はもちろんですが、ファインダーのあるカメラを使ったことのない人がファインダーを覗いた瞬間に感じる魅力もまた別に存在していると私は思います。そんな気持ちを共有したく思い、箱がファインダーそのものとなる箱カメラ(カメラオブスクラ )を使った作品を作ることに決めました。
3.箱カメラの完成に至るまで
まずは、カメラオブスクラのしくみを知るためにあらかじめ設計された箱カメラのキットを購入しました。大きさはそんなに大きくはなく、手のひらサイズといったところです。
画像のように、前面には丸いピンホールという穴が空いており、そのピンホールを光が通ることによって背面のトレーシングペーパーに像が写るという仕組みです。箱自体は前後2つの箱が重なってできており、箱カメラの幅を伸ばしたり縮めたりすることで、ピントが調整できます(一眼レフなどのカメラレンズの伸び縮みと同じ要素になる部分です)。
試しに外を写してみると画面全体がぼやけてしまい、何度も苦戦しました。
また、高性能なセンサーがついているわけでもないので、光の加減が非常に重要になってきます。暗い部屋で撮影すると全体が暗くなってしまい、写すのがとても難しく、光が多すぎるところで撮るのもかなり白飛びが起きるため困難です。暗いところから明るいところへカメラを向けると、バランスの良い光加減になります。
箱カメラのキットには入っていませんでしたが、凸レンズを通すと像がかなりボケることなく写ることがわかりました。前面のピンホールにレンズをあててみました。先ほどの画像と比べると一目瞭然、手前にある窓の柵からその奥にある建物まで、かなりピントがあっていることが分かります。
ということで、このプロトタイプを元に約二倍の大きさの箱カメラを制作しました。左がキットの箱カメラで、右が新たに制作した箱カメラです。
黒テープで補強をして、ようやく箱カメラが完成しました!
ピントもかなり良い感じです。
トレーシングペーパーに写る像を見ながら状況を何度も変えて、納得のいく箱カメラ(カメラオブスクラ )が完成しました。
wixの個人サイトにて、実際の作品を公開していますので是非ご覧ください!
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