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迷走神経反射で倒れた

ワクチン接種は自衛隊の大規模接種会場を選んだ。
選んだ、と言えるほど選択肢はなかったんだけど。

本当は自分の住んでる自治体でかかりつけ医院でファイザーが打ちたかったよ…
(この時はモデルナが変異株に有利だとかって情報はまだなく、副反応が出やすいというデメリットだけであとはファイザーもモデルナもだいたい一緒という認識だった)

予約できそうなのは文化庁の職域接種か自衛隊か、文化庁の方が予約が取りやすそうだったけど、自衛隊の予約にチャレンジしたのには理由がある。

注射嫌いの自分はアーティストのわがままが許されそうな(許されません)雰囲気のある美術館でヤダヤダ主張許され環境でやるより、自衛隊の厳しそうな(イメージです)ピリピリした空気の中で有無を言わさず意志を無視され命令に従うのみ!みたいな状況で打ってしまった方が最終的な精神的なダメージは少ないんじゃないかと思ったのだ。

初めて予約サイトを開いて、時間になったらスムーズに進められるよう夫とも連絡を取り合って予習していざ18時。
さっきまで開いていたページはなくなってゼロからの状態(伝われ)自動でページが何度も読み込まれる。でも全然だめ。
あ〜〜競争率すげ〜〜〜またワクチン打てない見捨てられ国民気分になるのか〜〜あはは〜〜死ねってこと?死んでもいい存在って事だよね?みたいなすごく投げやりな気持ちになりながらPCの前で世界を呪っていたらぽん、と画面が変わり、次のページに進めた。信じられない気持ちで震える手でワクチン接種日と時間帯を選択する。

予約できた。

びっくりしてぼーっとしていてハッとする。
夫の分もすぐさま予約すべきだったのだ!連絡をとっている間にあっという間に全枠埋まってしまった。
自分だけ予約取れてしまった…なんかこの辺りも悲しい気持ちになった。一緒に住んでるんだから一緒に予約できたらいいのに…
(後日夫も無事予約できました)

ついに注射か…
ワクチンが日本に来てから注射の映像はずっとテレビで映像流れてて、その度怖くて目をつぶったりチャンネル変えたりしていた。

私はなぜか、27歳頃から針を刺すと具合が悪くなってしまうようになった。
小学校中学校は毎年とか数年おきに注射イベントがあり、その時は全然平気だった。やだな〜とは思ってたけど。
なぜか割と大人になってからだめになってしまったのだ。歯医者の麻酔もだめだし採血もだめ。必ず気分が悪くなってしまう。
毎年の健康診断では採血の時は横になった状態でやってもらっている。看護師さんありがとう…


接種の日が近くなるにつれ、脳内で痛さの度合いをシミュレーションしたり、大丈夫大丈夫、と言い聞かせたり、頭の中は注射のことでいっぱいになった。
前の日はもう全然眠れなくて、朝方にやっと少し眠れただけだった。

12:00 家
これから未知の注射を打つ恐怖と緊張でもう何もかも集中できず心ここに在らず。

13:00 駅
予約した時間より随分早く着く電車に乗る。小さいボトルのイオンウォーターを買う。

14:00 接種会場最寄りの駅に着く。
ほとんど知らない駅なのでちょっと迷ったり、なんかトラブルが起こったりして、不可抗力で会場にたどり着けず、やっぱり今日は接種できませんでした、のパターンを心のどこかで期待していたんだけど、改札を出た途端、目の前にデカデカと
「接種会場 こちら」
のポスター。矢印めっちゃでかい。わかりやすい!とても!
しかもそれが数メートルおきにかなり目立つ感じに貼られている。
…逃げられない!!!!
そう感じてなんかもう一人で笑ってしまった。
絶対逃がさないようにされてるじゃん。

他にもおそらく接種目当ての人がちらほらいて、流れるようについていく。地下から地上に上がるポイントにスタッフらしき人がいて誘導している。
うん、逃げられないね〜。


地上に出たらすごい開けた大きな場所で気持ちいい。
「自衛隊 大規模接種センター」の文字のプリントされた大きな横断幕みたいな布がばたばたはためいて、目の前の人たちはずんずん歩いて、
人類vsウイルス、みたいな壮大な気持ちになった。

結局スムーズに到着してしまったので予約した時間よりも1時間弱早くついてしまったけど、時間きっちりで始まるということではなく、2時間おきくらいの時間帯に入っていればもういけますよ的な感じだったのでそのままGOした。

体温を測って消毒して受付のテントで書類を出して本人確認とかして、色分けされたファイルをもらってどんどん進んで行く。
待機する椅子もたくさん置いてあるけどほとんど座ることなく次、次、と進む。空いている時のディズニーランドみたい。(もっというとスターツアーズ的な)
前のグループが館内に案内される間に少し座っていたら、自衛隊の白い制服を来た上官っぽい人(以下:上官)が私のところへやって来る。
えっえっ!なんだ?なんか怒られるのか?(自衛隊に来てるのになんだその服装は!なんだその覇気のなさは!腕立て50回!とか)
って思ってたらなんか首から下げるネームカード的なやつ渡されて、「計測中」とある。
館内に入って出てくるまでの時間を計っているので協力してもらえますか?と。

上官〜〜〜〜!

これ使命?任命された?私だけ?選ばれちゃった?使命感とか責任感の強さ顔に出ちゃってた?(ただ先頭に居ただけです)
ちらっと自分の注射嫌いで普通の人よりも時間が余分にかかるのではという心配もよぎったけど
私のような人間も一つのサンプルとして役に立てるのではと思い、喜んで承諾した。注射を打って経過観察の15分も終わって出て来たら、このカードを上官に渡せば良いのだ。
ちょっとしたミッションができて少し楽しくなってきた。

数分も経たないうちに館内に案内され、床の矢印に沿って進んで行く。
ソーシャルディスタンスの誘導に従い少し止まっては、進み、を繰り返し、
ダンジョンみたいな建物を進む。数人ごとに分けられてエレベーターに乗る。
若い女の子たち三人組。楽しそう。お友達と注射なんて、なんかいいなあ〜。

エレベーターを降りて、次の部屋。もうここから医療ゾーンだ!めっちゃ病院ぽい人たちいる!
もう数メートル先は注射である。来てしまった…だんだん元気がなくなり、がっくりしてくる。

予診票を出して質問に答えるブースで、ああもうそろそろ私、しっかり気を持たないとまた倒れるぞと思い始め、前のめりなコミュニケーションモードに切り替える。
医者、割とスルー。注射苦手なんです!って訴えても「じゃ横になって打ちます?」くらいの反応(今思えば十分な応対なんだけど。この時「怖いよね!でもがんばろ!!」的な感情労働を医者に求めてしまったのが間違いだ。)自分の恐怖心をまともに取り合ってもらえなかったように感じて不安な気持ちが少し大きくなる。次の医者にも恐怖を訴えるが同じような感じ。そうだよね〜いちいち感情使えないよね。甘えるな〜ここは自衛隊だ〜


それでついに注射のブースの前にスタンバイして、看護士さんに案内され中に入る。
打ち手は自分の母親くらいの年代の女性、アイメイクばっちりだけど怖そうな感じではないぞ。ここで自分の恐怖心を吐露しないと完璧に毎回倒れるので、意を決して、
注射めっちゃ怖いです!と伝える。すると「え〜〜〜?まあチクっとはするけどさあ〜」みたいな!ノリで!返してくれた!ありがたや!!!
お話ししてもらえらことで、相手も人間だしここにいるのは全員人間だし今までこの部屋で注射打った人たちもみんな人間!大丈夫!
って少し元気が出て来て、打つときも話しかけながら打ってくれて、そして驚いたのは本当にマジで全然痛くなくて(毎年の健康診断の採血みたいな、ジク〜っとする感じが全くない!カナブンとかカブトムシが肩に止まってるくらいの感覚)ほぼ一瞬で終わり、え、いつ抜いたの?ってくらいわかんなくて、え?え?マジですか?すごい、え?みたいに混乱しながらシールを貼られ、ゴッドハンドは「ふふ、私、うまいでしょ?」とめちゃめちゃかっこいい一言を放ち、もうこの人をどんな言葉で讃えたらいいのかわからなくなりほとんどばかみたいな賞賛の言葉を口からポコポコこぼしていたら看護師にはがされ退出し、ふわふわした気持ちで、本当に、、、終わったのか、、、と開放感と嬉しさでまたスターツアーズの廊下を歩き何となく左肩の内部に熱さや重さのようなものを感じながら、次の予約をとり、15分の経過観察ルームに入った。

一応、監視員の看護師さんが座ってる近くの席に座る。

座って夫やマネージャーに接種完了報告を送る。
それからSNSを見たり、気になってたことを調べたり、ほんの30分切り離されていた世間のニュースがすごく新鮮に感じた。

目の前に座っていた看護師さんが交代している。
手には小さなバッグを持っている。パステルカラーのミニトートから
水筒とかハンカチが見える。こういうバッグってなんか愛おしい。
その人のプライベートを垣間見たような気がして、性格とか、好きなお店とか、SNSにどんな投稿をする人なのかな、とか想像してしまう。

そろそろ15分経つ。注射痛くなくてよかったな。なんか腕の中が熱い感じがするけどみんなこうなのかな?
もし15分経ってこの場所を出て、その5分後とかに具合が悪くなったらどうしたらいいんだろう?ちょっと心配だな…
あ、水分取らなきゃ、イオンウォーター飲も。駅のホームの自販機で買っておいた自分、ナイス。

ごくり。
よし、飲んだ。ふ〜〜もう後1分でここ出られるな。なんかさっきから腕の中が熱いしなんかジンジンするような気がするけどこれ普通だよね?または気のせいだよね?
ん?あれ、なんか具合悪いかも、いや、気のせいかも、落ち着こう、いや、これやばいな、看護師さん…

で、よろよろ〜〜〜〜〜


ワッと数人の看護師が集まって来て荷物を全部手から離され本人は車椅子に載せられ名前を言えるか尋ねられ、答えられなくて、あ〜とかう〜〜んしか言えなくなり、吐き気がして手を取られて血圧を測るやつとか指に挟む酸素のやつとかをつけられながらゴロゴロゴロ…と運ばれていく。


ああああ〜〜〜やっっちまった〜〜〜〜〜またやっちまった〜〜〜〜恥ずかしいいいいいいい
あともうちょっとだったのに!!!!悔しい!


運ばれながら、だんだん意識は回復して行って、救護室に着いた頃にはもう喋れるようになっていた。
まだ少しフラフラしそうだったけどもう歩ける!帰れます!って感じだったけど10分横になって経過を見なければいけないらしく、
もう大丈夫なのに…恥ずかしい…申し訳ない…と思いながらベッドに横になる。

ベッドの周りにわらわらと関係者が集まって来て、私の首にかけられていた上官から託された例のアレに気づかれ、あ、コレ、どーします?のようなやりとりがあり、あっけなく首から外され、◯◯の部署のやつだね、そこに持って行っておいて、と持っていかれてしまい、私は、心の中で「それは!だめえええええええ!それじゃ意味ないんだ!私が持っていかなきゃだめなんだ!上官と約束したんだ!」と叫んだが口には出せずこれが今回かなり心残りだった!!!!!使命!果たせなかったよ上官!

戦場で作戦途中で死んだ兵士ってこんな気持ちなのかなって思った。こりゃ悔しいや。そりゃあ成仏できないよ。任命された時のあの気持ちがあったからなおさら。

ベッドに横になってる間に看護師さんがついてくれていて、ちょっとお話したり、こういう人たくさんいるから全然気にしないでね、次回は横になって打つのがいいかもね、みたいなやりとりをしていたら奥から宝塚みたいな麗しい長身短髪の女性のドクターが様子見に出て来て「なに…え?フンッなんだ迷走神経反射か…」とめんどくさそうにまた奥に戻って行った。山岡士郎みたいだった。

もう大丈夫ですねとなり、出口まで案内しますとめちゃめちゃむきむきの看護師さん(救急救命士?)が付き添ってくれて、無事(?)1回目接種を終えることができました。帰りに東京駅の美味しいとこでチョコレートを買った。

この日からきっかり7日後にモデルナアームになった。熱々カユカユ。熱さまシート貼ってどうにか凌いだよ。

最後になりましたがこの日関わってくださった全ての皆さん、本当にありがとうございました。
自分はマジで一人では生きていけないし割と簡単に死んでしまう存在なんだということを肝に銘じてもっと謙虚にもっと人の気持ちを想像してできたら誰かの助けになるように生きて行こうと改めて思いました。

そして長い文章を読んでくれた皆様、お付き合いいただきありがとうございました!

もうすぐ2回目!無理せず横になって接種しようかな…


無事終わって落ち着いたら銀座のヴェンキ(めちゃうまそうなアイス)を食べに行く!!


あと2回目副反応に備えて熱冷まシートたくさん買っとこ。


接種みんな終わったらさ〜〜スナックやりたいよね〜〜!!!

あなたのおかげで生きているのかもしれません。