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一生片想いの頃の心持ちで、世界を愛していけたらいいね


片想いの時が一番楽しいのは自分の理想だけを追い求められるから。

太ももの肉が増えて、明らかに太ったと確信しつつこの贅肉で誰かを救う事は出来ぬものかと考えている。脂肪を吸い出し誰かに与えて命を救えないだろうか。

この脂肪に意味を与えてやろうとしているが、こいつらは今から私に定着するかはたまた私の努力で消え去るかの二択である。出来れば後者であって欲しいが、筋トレが嫌いなので前者になりそうである。カロリーよ、死滅せよ。

もしかしたら現代社会において必要な特殊能力は、空を飛ぶでも心を読むでもなく、カロリーを消す能力なのではないだろうか。どうでもいいけど。

ケーキが並んだショーケースを見ると思わず足を止めそうになる。デパ地下食料品の宝庫、ケースの中身を輝かせるためだけに配置されたライト。魅惑的で蠱惑的で。足を止める瞬間は一目惚れと似ている。

一目惚れを人にした事がないからした事ある人に聞きたいんだけど、どんな気持ちですか?あ、好き!ってなるのかな、タイプ!ってなるのかな。それとも時が止まったように思えるのだろうか。

服やアクセサリー、生物以外の物にときめきを感じない限り買わないようにしている。だってこれだ!と思わない限り買っても使わなかったりするから。私は自分の直感をこの時ばかりは信じている。

一目惚れって言葉があまり好きでないのは、自分がそれなりに言われてきて少しばかり不快になったからだと思う。別段綺麗なわけでもないのに、どうして一目惚れなのかは分からない。あんまり言うと自分を下げまくるのでもう言わんけど。

高校生の時に付き合っていた恋人に、どこが好き?と聞かれた事がある。その時私は、優しい所だと言った。彼は穏やかで声を荒げるようなタイプでもなく、話をする時どんな相手でも目を見て頷くような人だった。

それが私にとっては新鮮だった。何故なら動物園状態の家で育ったからである。私の家は当時とにかくうるさくて、関西の色が強く平気で暴言が飛びまくっていた。

冗談で言っているのは分かるけど、その暴言たちは確かに私を傷つけていた。子供だった私はそれに言い返す事も出来ずいつも嫌な思いをしては同じ食卓、同じ空間にいる事が苦しかった。

ちなみに今では随分強くなったもので、実家で口喧嘩が起きた際には絶対に勝てるほどだ。暴言には理路整然と真実を猛スピードで捲し立て、で?ほらほら、返して来いよと言う度、驚くほど可愛げがなくて笑ってしまう。

自分を護るためには必要だったから培ったのに、決して良いスキルではないのが笑える。そんなスキルを培うような状況だったのが切なくて堪らない。お前はよく今日まで生きている。


話を戻そう。とても穏やかな人だった。すぐに罵倒が飛ばす人間とは違って、私はその穏やかさに自分にない所を見つけ、あ、この人だったら付き合ってもいいかなと思えたのだ。ちなみに、告白は公衆の面前でやられたので絶対に断れない状況だった。フラッシュモブってこんなに不快なんだと思ったものである。

私は聞き返した。どこを好きになったの?彼は言った。一目惚れだと。

???一目惚れ??は?

照れながら言う彼に、一目惚れ?と返す。思っていた性格とは違ったけどと言われた時、何だそれと思ったのだ。

穏やかで優しい彼は時折、一目惚れした私のイメージを私に押し付けてきた。同級生より大人っぽくて、しっかりしてそうで、優しくて。彼が作り出した私のイメージは、確実に私の首を絞めた。

貴方が勝手にそう思っただけでしょ?いい子にしている私を見て、何も知らず決めつけただけでしょ?

面倒見が良さそうとか、引っ張ってくれそうとか、何だか馬鹿みたいだった。私はこの人の穏やかな所に惹かれたのに、この人は私の見た目だけで決めたのかと。中身の事は言及しない彼に、瞬間で冷めたのを憶えている。

それでも頑張ってイメージ通りの私でいようとした。けれどそんな事が出来るはずもなく、限界が来た私は早々に別れを告げた。

私は彼の面倒を見れるほどの人間でも、しっかりしても、優しくも、何でもない。

等身大の私は自由が好きで、一人の時間も好きで、結構我儘、口が悪い、面倒くさがり、面倒は見て欲しい、リードはしてくれ。のタイプだったから。

以来、一目惚れと言われる恋愛を全てへし折って来た。何故なら一目惚れですと言われ、何故?と聞く度、彼と同じ理由が返って来るからだ。しっかりしてそうとか、そりゃあ外面は良いですて。

私は生きやすくなるために外面をよくしているだけなのだから。見かけもあってか私の周りにはいつだって、お尻を叩いて、ほら!頑張れ!と言って欲しいような、少し女々しいタイプの異性ばかりが集まった。

でも、そんな人間を私は望んでいない。

お尻を叩くなら頑張れじゃなくて、勝手にやっとけと言うだろうし、大事な事は人任せにすんな!選択を他人に委ねるな!と怒るだろう。

メンタルに難がある人が近くにいると本音をぶっ放してやりたくなるし、自分が疲れている時はそっちに釣られてしまう。私はそこまでメンタルの強い人間じゃない。ただ、強いフリが得意なだけで。一人で立つしかなかっただけで。

需要と供給は笑ってしまうくらい合わない。いつも言っているが私が好きになる人は私みたいなタイプの人間を好きにはならない。一人で生きていけそうだねって言われた時は、頭を鈍器で殴ってやりたかった。うさぎかリスか分からん小動物系女子のケツを一生追ってろと思った日もある。


だから、一目惚れという言葉に対してあまりいい印象を持っていないのだ。そもそも一目で惚れたのなら、そこからどんなモンスターが出ても惚れたままでおれやと言いたい。言わんけど。

25年生きてきて、私のモンスター具合はいい感じに煮詰まった。むしろ弾け飛んでいる。なので、仕事で会う人や外で会う人たちに対し愛想笑いを続けてもそこから付き合うとかが想像出来ないのだ。だってモンスターだから。

モンスターは思う。

多分、片想いをしている時が恋愛において一番楽しい時期なのではないかと。

相手を追いかけたり、追われたりする時が一番、自分勝手にいられるからだ。付き合うまでのワクワク感はその瞬間しか味わえない。相手の事をよく知らないからこそ、自分の理想を勝手に押し付ける事が出来る。

付き合ってからでは自分の理想が何度も崩れ去るだろう。お互い付き合うために頑張っていたら尚更、手に入った瞬間怠惰になり求めていたような恋人ライフが送れない人も沢山いるのではないだろうか。

相手が察してくれるとか、分かってくれるとか、何で怒ってるのか分からないとか、すれ違いは大体相手に理想を求めているからだ。片想いの時はそれでも良かっただろうが、一緒になってからじゃ意味がない。

女性に多いが、察して欲しいという言葉は結構難しいと思う。モンスターはメスなので、それを言いたくなる瞬間があるのも分からなくはないが、どちらかというと思考が男性的なので、無理に決まってんだろと返したい。

女友達でもいるが、どうして分かってくれないの?という言葉は、分かってもらうための努力をした後に言えと言いたい。人類は色んな考えの人が居るので、察するのが苦手な人も多い。

分かってもらうために言葉にしたか?大体の事は言葉にしないと伝わらないのをモンスターは知っている。嫌われたくないから口に出来ないと言う人もいるだろう。でも察してよ!と怒鳴られるくらいなら言葉にした方がずっといいと思う。

好きだとか愛してるだとか、言葉にしなくちゃ伝わらない事は沢山ある。言わんでも分かるだろと思うかもしれないが、定期的に言葉にしないと想いは薄れていく。

時間は思い出を綺麗にし、今を薄れさせていくから。幸せだった記憶ばかりが輝いて、今目の前にいる相手が言葉を伝えてくれない影響で心が離れるなんて当たり前にあるから。

どんな事も、言った方がいいのである。デリカシーのない発言以外。


でも多分、一目惚れだとか、片想い中とかの時が一番楽しいのだろうなと思いながら今日もモンスターは一人、暖房のついていない部屋であるはずのない温もりを探すのである。

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優衣羽(Yuiha)
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