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元気でいろとは言わないが、日常は案外面白い

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作家による日記風エッセイ
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2023年4月の記事一覧

四つ葉のクローバーを回しながら帰るくらいには子供のままで

幸福は掴みに行くものでもあるが、時折道端に落ちている時もある。 区役所の外、円形の白い広場の周りにシロツメクサが咲いていた。子供の頃母に連れられ遊びに行った。花が咲く春先は彼女に花冠はどう作るのか聞いていたが、未だに作れた例がない。花冠は想像以上に花がいる。そして当時の私は想像以上に地道な作業が嫌いだった。 結局花冠も腕輪でさえ作れた事がない。時折母が作ってくれた腕輪を付けて喜んでいたが、もし自分に子供がいたら作れただろうか。多分無理。想像以上に無理。 クローバーが、沢

多分この言葉も、誰かのレプリカになるかもしれないが

レプリカみたいな 人生が言葉や立ち振る舞いに出ると言う。子供の頃、半信半疑でその言葉を聞いていた。大きくなるにつれ、テレビの中に映る人、周囲にいる大人の顔に少しずつ違いを知った。 いつも怒っている人は眉間に皺が寄っていて、よく笑う人は笑い皺がある。表情が豊かな人は上を向いている事が多く、無表情の人は前か下を向いている。博識の人の話すスピードは速く、無知の人の話は繋ぎ言葉ばかりだ。 自信がある人は背筋が伸び、後ろめたい事がある人はいつも周囲を気にしている。正義感だけで生き

世界に微笑んでもらうのではなく自分が世界に向かって微笑め

花弁が転がった 桜の花びらの不思議な所が散って道路に落ちた後、風が吹いたら縦に回るよう車輪みたいに舞う事。他の花には見られない特性だ。秒速5cmで落ちる花弁に、人は目を奪われる。 大きな花が落ちるのは首が落ちるみたいな残酷さがあるが、細かな花弁が散っていくのはまるで人の生の時間が鮮やかに散っていくからなのか。何にせよ人間は、特に日本で生きる人間はこの数週間に目を奪われる。 たまに捻くれた人間が桜が嫌いだと言う。私の母がそうだ。咲けば誰からも愛されて散り際すら大事にされる