ジャンプ力が上がるのはどっち?~カウンタームーブメントジャンプとドロップジャンプの比較実験から考える~
バスケやバレーなど、到達点の高さが求められる競技では、ジャンプ力は必須の能力です。
そのジャンプ力を向上させるにはどのような練習が最適か、ヒントになりそうな研究があったので紹介します。
2020年の研究です。
ひとことで言うと、
カウンタームーブメント ジャンプ(Counter Movement Jump)
ドロップ ジャンプ(Drop Jump)
を比較したものです。
カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)
いわゆる、上体と腕の振りで反動をつけた垂直飛びですね。
ドロップジャンプ(DJ)
こちらは、高いところから飛び降り、その反動を利用して飛ぶ方法です。
どちらも定番のジャンプですが、この2種目がどれぐらいジャンプ力を向上させたかを比較した実験です。
33人の女性バレーボール選手を対象に行われました。
年齢幅は15~32歳。
地域レベル(regional level)のチームで、週2回以上の練習を行っているとのことです。
論文には、
ジャンプやプライオメトリックの経験はあるけれど、長期にわたる特別なジャンプ、レジスタンストレーニングの経験はない
とあります。
要は「普段の練習でそれなりにジャンプをしてはいるけど、ジャンプ力向上のための特別な手法やトレーニングはやってませんよ」という意味でしょう。
おそらく、ごく普通のレクリエーションとしてバレーボール競技をやっている人たちだと思います。
日本でいうなら、趣味やクラブ活動といった感じでしょうか。
さて、そんな選手たちが全6週間にわたって、ジャンプトレーニングを行いました。
CMJグループとDJグループに分け、普段の練習に先立ってジャンプトレーニングを行ったようです。
ジャンプは実験者の指示の下で実行。
CMJグループはカウンタームーブメントジャンプ(助走なし、腕振りあり)を、
DJグループは37㎝の台からのドロップジャンプ(腕振りあり)を行いました。
1回のセッションあたり合計60回、できる限り全力でジャンプします。
具体的には、
3~5秒の間隔で、3回ジャンプする
3回ジャンプするごとに30秒の休憩
3回ジャンプ×5セット(計15回)終了ごとに2分の休憩
15回を4シリーズ(計60回)跳ぶ
という手順で行います。
これを週2日、6週間行いました。
週あたり120回のジャンプですね。
それから「3回×5セット」とありますが、そのうちの1セット、つまりトレーニング総量の20%は、もう一方のジャンプを行うように調整したそうです。
つまり、CMJグループは12回のカウンタームーブメントジャンプにつき3回のドロップジャンプを、
DJグループは12回のドロップジャンプにつき3回のカウンタームーブメントジャンプを行ったということです。
これでトータルの回数が 80% : 20% になりますね。
論文には、その理由について「タスク特定的上達(task-specific improvements)の影響を減らすため」とあります。
論文では詳しく説明されていませんが「動作そのものに習熟して数値が改善されたのか、それとも筋力などが向上して伸びたのか、分からなくなる」という問題への対策なのだと思います。
人間には、一つの動作をひたすら行うと、その能力だけが特化して上達するという特性があります。
スポーツ科学者としては、フィジカルトレーニングとスキルトレーニングの概念を区別したいのでしょう。
ただ、この辺は議論するといくらでも難しい問題が出てくるので、あまり突き詰めて考えなくても良いと思います。
アスリートとしては、どんなメカニズムでもジャンプの数字が伸びればそれで問題ありませんので。
ということで、お待ちかねの結果を紹介しましょう。
実験結果
下図をごらんください。
どうやら全部で4種目、記録を計測したようです。
CMJを
腕振り助走なし、腕振りあり、腕振り助走あり
の3パターンに分け、
DJはそのままで、
それぞれ計測しました。
これは
腕振りあり → ブロック
腕振り助走あり → スパイク
という、バレーボール競技固有の動作に対応させよう、という意図からのようです。
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