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「エキセントリック」か「コンセントリック」か?それが問題だ ~最適な筋力トレーニングの動作について、比較実験から考える~
エキセントリックとコンセントリック。
筋力トレーニングをしていると、時おり耳にする言葉です。
どちらも「筋力の発揮」に関わる用語で、
コンセントリックは通常「短縮性(筋収縮)」と訳されます。
たとえばベンチプレスの、バーを挙上する局面を思い浮かべてください。
大胸筋が収縮しながら、筋力が発揮されていますね。
このような筋力の発揮の仕方を、コンセントリック(収縮)といいます。
それに対し、エキセントリックは「伸張性(筋収縮)」と訳されます。
同じくベンチプレスで、逆にバーを下降させる局面を思い浮かべましょう。
このときは大胸筋が伸ばされながら、同時に筋力が発揮されています。
少し意外に思うかもしれませんが、バーベルを完全に自由落下させているのでない限りは、下ろす局面でも筋力は発揮されているのです。
山や階段を下りるだけでも、筋肉は疲労しますよね。
それから、この記事の主旨からは少し外れますが、他にはアイソメトリック(等尺性)という動作もあります。
筋肉が伸びも縮みもせずに、筋力が発揮される状態です。
これは、いわゆる「空気イス」や、動かない壁を押している状況などがあてはまります。
ということで、通常の筋力トレーニングであれば、必ずエキセントリックとコンセントリックの動作がセットになっています。
バーベルやダンベルを下ろして、挙げる。
マシンのレバーを押して、戻す。
なので、基本的にはこの両者を無理に分けて考える必要もないといえばないのです。
なのですが、この
エキセントリック動作とコンセントリック動作のどちらがより筋力向上、ないし筋肥大に寄与するのか
というのは昔から業界の謎というか、大きな疑問とされていました。
たとえば、遅発性筋肉痛などはエキセントリック動作の方が強く引き起こされるので、コンセントリックのみで行った方が効率よくトレーニングができるだろう、という意見もあります。
そんなわけで、今回この記事で紹介する論文はズバリ
エキセントリックとコンセントリックのどちらの動作が筋力向上に有効か
を比較した実験です。
(ただし、これが分野で唯一の比較研究というわけではありません)
2011年の研究で、リオデジャネイロ州連邦大(UNIRIO)による研究です。
よく似た名称の別の大学で、リオデジャネイロ連邦大(UFRJ)というのもあるようで、ややこしい……
いちおう、どちらも国立というか公立(Federal)の大学なのだとか。
ただ、ブラジルは連邦制の国なので、日本とは制度の違いがあるかも知れません。
まあ、最近は日本の国立大も「独立行政法人」(正確には国立大学法人)化されているので、「国立」という意味あいは以前より薄れているのかもしれませんが。
さて、実験は42名の健康かつ運動未経験の男性を対象に行われました。
今回の実験では、その被験者を3つのグループ(各14名)に分けています。
各グループの主なデータは以下の通りです。
コンセントリックグループ(CE)
年齢 :26.6歳 ±2.1
身長 :176㎝ ±14
体重 :78㎏ ±3.9
体脂肪率:12.25% ±2.97
エキセントリックグループ(EE)
年齢 :28.2歳 ±2.8
身長 :175㎝ ±14
体重 :76㎏ ±4.7
体脂肪率:13.91% ±3.33
コントロールグループ(C)
(比較対照のための、何もしないグループ)
年齢 :27.2歳 ±3.3
身長 :176㎝ ±14
体重 :77㎏ ±4.1
体脂肪率:13.34% ±3.22
これらのグループが、
ベンチプレス
バイセップカール
の2種目を週2回、8週間行いました。
(全16セッション。ただしCグループはトレーニングをしません)
どうやら、上半身の種目で実験したのですね。
ちなみにバイセップカールについては、上腕を支持台に乗せて行う「プリーチャーカール」を実施しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1729208336-MRtL3PTGnAValDu7wJpKc5go.jpg)
ベンチプレスは、いわゆる通常のベンチ台で行うバーベルベンチプレスです。
実験の開始にあたっては、事前に2度の1RM(=最大筋力)測定を行ったうえで、その記録を元に負荷が設定されました。
トレーニングの内容は次の通りです。
ウォームアップ
CEグループはコンセントリック動作のみ、EEグループはエキセントリック動作のみで、
1RMの40%を用いて10回(両グループ共通)
1RMの80%を用いて10回(EEグループのみ)
行う。
メイン
コンセントリックグループ(CE)
1RMの80%を用いて、コンセントリック動作のみのトレーニングを行う。
エキセントリックグループ(EE)
1RMの120%を用いて、エキセントリック動作のみのトレーニングを行う。
どちらのグループも、
10~12回×3セット
行っています。また、
インターバルは3分
12回を3セット達成出来たら、次回のセッションで負荷を10%増量
挙上、ないし下降の動作は3秒かけて行う
などといった条件があるようです。
それから、トレーニング経験のある方ならおそらく「どうやってコンセントリック、エキセントリックの動作だけでトレーニングしたんだろう」と思うことでしょう。
(自分もそうでした)
どうやら論文によると、被験者の横にサポートの人たち(researchers)がついていて、1動作ごとにバーベルを受け渡ししていたようです。
なんというか、なかなか手間のかかる実験ですね。
今回は被験者が初心者ということで、重量が軽いのでまだいいですが、もし上級者だったらさぞ大変だったことでしょう。
サポートの作業自体が筋トレになりそうな勢いです。
さて、気になる実験の結果はどうなったでしょうか。
下図をごらんください。
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