『石の声』を上映するにあたって
私が通っていた小学校の学習発表会(学芸会)では、最年長の6年生は平和劇を行うのが通例で、私の代は八重山で起きた『戦争マラリア』がテーマとなった。
第二次世界大戦時、沖縄では大規模な地上戦が展開されて多くの人々が犠牲となった歴史がある。ここ八重山では空襲や砲撃はあったものの上陸作戦は行われてはいない。しかし、日本軍の命令によるマラリア有病地帯への強制移住により多くの島民が命を失った。「もうひとつ沖縄戦」と呼ばれているそうだ。
八重山全体では約3万人いた人口のうち、2人に1人がマラリアに感染。そのうち3600人以上の島民が死亡している。波照間島においては、島民は西表島の有病地帯に強制移住させられた末に全島民が感染し、1/3もの人々が犠牲となった。
この戦争マラリアをテーマにした舞台劇で、私は波照間島の人々をマラリア地獄に追いやった日本軍側の工作員に配役された。陸軍中野学校出身の山下虎雄軍曹である。
初めは小学校の先生として現れた山下虎雄だが、実はこの人物は『疎開』を名目に波照間島から島民を追い出して家畜などを略奪する目的で送られてきたスパイだったのだ。山下役の私は、日本刀を振りかざして逆らう子どもたちや島民を脅した。
毎年、6年生の戦争劇では鑑賞に来たおじいさんやおばあさんが涙を流す。台詞を覚え、体を使って演じ、当時のことを知る方々が私たちの演劇に反応を見せることで、幼いなりに当時の私の中に八重山の戦争の記憶が落とし込まれたように思う。
今回、ゆいシネマで上映されるアニメ「石の声」も八重山の戦争マラリアをテーマにしたものだ。私が小学生当時、6月23日あたりにはこの「石の声」がよく小学校や地域で上映されていたことを記憶している。当時の先生や大人たちが私たちに引き継いできた戦争の記憶を、このゆいシネマ上映会を通して私も次の世代やこの戦争を知らない方々に繋ぐことができたらと思う。ぜひ大人だけでなく子どもたちにもこの作品を見て欲しい。
ご来場お待ちしています。