“Flatten the Curve”の認知が広がるまで
COVID-19が報じられてから、毎日様々な情報が入ってきます。WHOやジョンズ・ホプキンス大学CSSEが日々集約したデータを更新しつづけ、それらを可視化したダッシュボードやチャートが大量に出現しました。
人々が答えを探しているときにシンボリックな一つのチャートが、バズりました。このイラストで2コマで表現してあることと #FlattenTheCurve がメッセージとしてわかりやすかったからでしょうか。
ニュージーランドの微生物学者スージー・ウィレスさんが提案し、イラストレーターのトビー・モリスさんが描いたGIFアニメです。3月9日に投稿されて、(3月16日時点で)270,000RT、377,000 Favシェアされ、世界各地の放送メディアで取り上げられたほか、複数の言語に翻訳されています。
これには元ネタがありました。2月28日に、アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィアにあるトーマス・ジェファーソン大学人口健康学部のドリュー・ハリス助教授がこんな画像をツイートしています。
彼は、2007年発表のCDC(アメリカ疾病予防管理センター)による論文にあった図を参照して作成しました。
パンデミック対策トレーナーとしての仕事をしていたこともあり、医療システムのキャパシティがあることを示したくて、定量的な根拠なく、Photoshopが調子悪くKeynoteでピッと線を付け足しました(Healthcare system capacityと書かれた線)。これがのちに騒動の元となります。
ときを同じくしてイギリスの Economist でも同じ元ネタの図を取り上げていますが、この図は2007年のCDC論文に忠実であり、医療システムのキャパシティを示す横線は存在しません。
一般的な認知へ
このチャート全体として、実際の数値データを反映していないのに、さも反映しているように見えてしまう、という問題を抱えています。それは医療システムのキャパシティについても同様ですが、医療システムのキャパシティ自体は現実に存在しており、後追いの報道では、対応がわかれました。
3月10日にVoxが記事化しています。ここには医療システムのキャパシティの横線が存在しています。
3月13日New York Timesの記事。こちらでは医療システムのキャパシティの横線は存在していません。
日本では
報道機関よりも早く、政府機関の対策本部でいち早くこの図が「基本的な考え方」として示されていました。「教科書通り」の対応だからかわかりませんが、2月28日のトーマスさんの画像シェアよりも早く、2月23日の「新型コロナウイルス感染症対策本部」第12回会議にて、この図が初登場しています。医療システムのキャパシティについても触れています。