医療/ヘルスケア/公衆衛生xGenerative AI、研究・社会実装における現在地
こんにちは、守屋祐一郎(@ymoriya)と申します!「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」Ubie株式会社(Ubie Discovery)にて、医療機関向けの事業開発に従事しています。
Q.Generative AIは私たちの「健康」にどう影響するのか
OpenAIがChatGPT,Whisper用のAPIを公開してから、1週間ほどが経過しまし
た。驚異的な体験だったため、この一週間ひたすら触ったりリサーチしています。この革新的技術が人々の「健康」にどう影響するのかと言う観点で、医療/ヘルスケア/公衆衛生領域におけるGenerative AIの研究、社会実装の動向について、自分の勉強メモも兼ねて、noteにまとめていきたいと思います!
4月から入学したSPH(School of Public Health,公衆衛生大学院)での学びに絡めて、Generative AIに関しても理解を深めていきたいので、今後随時updateしていく想定です!
※特に機械学習に関しては初学者なので、ぜひお気づきの点があれば、優しくご指導いただけると嬉しいです
編集履歴
2023/3/9 公開
2023/3/16 GPT-4に関して追記
2023/3/19 プロンプトエンジニアリングに関して追記
要約
2023/3のOpenAI API公開を契機に、Generative AI社会実装のギアが上がり、様々なサービスが世に生まれ始めている。医療/ヘルスケア領域は産業の特性上遅行しそうだが、多様な課題解決に寄与する期待がある。
Generative AIはそこそこの精度で大量の情報を高速で処理することが得意。医師や研究者などの専門家と一般生活者のコミュニケーションの架け橋となること、様々な臨床/研究ワークフローの効率化が期待される。
専門家と一般生活者、他言語間の情報の非対称性が減少し、集団と個人の双方で、より円滑な対話、合意形成、行動変容が迅速に実現できるようになる未来が訪れるかもしれない。合目的にAIを選定する目利き、実践的なプロンプトエンジニアリング等の「適切にAIを使いこなす能力」の価値が高まる。
Generative AIの特徴
「Generative AIとは、人工知能の一種であり、データから新しいコンテンツを生成することができる技術」とあります。
本記事ではChatGPTを中心に幅広くGenerative AIについて情報収集してみたいと思います。
現在想定されている使途や特徴について、以下の記事が参考になりました!
また、現状想定されているGenerative AIの限界として、以下のような点が懸念されているようです。
推論や意思決定のプロセスを説明できない。倫理的、モラルな判断はできない。
限定的な問題に対する、一般的な観点からの回答は可能だが、実際の事例に対する1 to 1の問題解決はできない。
時系列や実世界のコンテクスト、ニュアンスに弱い。
上記を踏まえて、具体的なユースケースを調べてみたいと思います。
その前に:GPT-4の衝撃(2023/3/16追記)
本記事を作成してからたったの一週間でOpenAIよりGPT-4が発表されました。(陳腐化が早すぎる…)
以下の開発者向けのデモ動画、GPT-4 Technical Reportで語られている内容がわかりやすかったです。
以下の点が印象的でした。
入力、応答可能文字数が増加した(2,500字程度->25,000字程度)
文字数制限の解消により、医療関連の情報処理においても活用余地が広がりそうか
画像での入力が可能になった
文字、音声のみならず、視覚にも入力の裾野が広まった
画像出力にはDALL·EやStable Diffusionがあったが、加えて入力も可能に
また、創薬に関しても言及されていました。以下のユースケースにて紹介します。
ユースケース
Determinants of Healthを意識した切り口で、雑多にヒットした論文を中心にリサーチしながら興味深いなと感じた点をまとめていきます。ぜひおすすめの論文や資料があれば、教えていただけると幸いです!
Medical Care
臨床意思決定支援 (CDS,Clinical Decision Support)
ChatGPT自体がより多くの臨床情報を活用することによる精度向上が示唆
一方で、適切な診断は難しく、やみくもに頼ると、不正確な診断や治療の遅れのリスクが生じるとの指摘も。一般的な回答しか提供できず、トレーニング データをリアルタイムで更新することができないため
医学研究支援
文献レビューにおいてはフェイクを出力する頻度が高く実用的ではない旨が示唆
文献の翻訳、要約はかなり便利。
この記事で紹介している文献も多くはChatGPTを用いて短時間で要点把握をしています。
メディカルライティングの補助には一定の活用可能性があることが示唆
ChatGPTを活用した部分がイタリック体で記載されており興味深いです
以下のnoteが詳しかったです!
実験:PROから簡単な解析と示唆を抽出してもらう実験もしてみました。文章は期待以上に自然で驚きましたが、計算はダメそう。
臨床業務支援
患者情報の要約等を通じた事務作業の削減、専門用語や医療用語を患者向けにわかりやすく翻訳することによるコミュニケーション支援、患者のコンプライアンスとアドヒアランス向上が示唆
💡SPHではヘルスコミュニケーションにも注力して勉強したいので、この辺りめちゃくちゃ注目しています。
医学教育
医学生が診断・問題解決のスキルを練習するための症例シナリオの生成、パーソナライズされた学習体験の提供、説明文章・視覚資料の生成、医学研究の要約の生成
創薬
(2023/3/16追記)化合物の提案
プロンプトは日本語では以下のようになります。
特に行動を(人間が解釈可能な形で)指定しつつ、N回繰り返すよう指定していることが肝であると考えます。
Medical Careまとめ
💡大きくは①専門家・患者間のコミュニケーション円滑化/効率化、②事務タスクの簡便化と簡単な示唆抽出等による臨床業務や研究業務の補助、③人間の処理限界を超えた大規模な情報の処理と加工、などが期待されている。一方、現状正確性や専門性、患者のコンテキストを踏まえた臨床的判断のクオリティは今ひとつであり、医療従事者の業務代替は否定されている。
Environment
気候変動の精度向上
モデルのパラメータ化、データの分析と解釈、シナリオの生成、モデルの評価などにより、気候予測の精度向上が期待されている。
💡まさに醍醐味といった活用事例かつ、対話型になったことで人間が解釈に要する専門性が減ったのではないかと思います。複雑な問いを複雑なまま解き、簡単な結果を得られる時代。
環境教育
研究者のタスク実行効率化、言語的ハードルの削減等により、環境教育がより効果的に行われ、大衆への浸透に貢献することが期待されている。一方、大規模な計算資源の活用にはエネルギー消費量増加の懸念もある。
Risks and Benefits of Large Language Models for the Environment
💡環境に限らず、様々な領域で大衆への浸透を後押しすることに期待します。個人的には、税金や法律周りを相談させていただきたい。
Individual Behavior
ヘルス/サイエンスコミュニケーション
専門的な知見、意見が一般生活者向けにわかりやすく翻訳されることで、生活者の行動変容が促進されることが示唆
Generative AI as a Tool for Environmental Health Research Translation
💡主体的に情報を取りに行き吟味するリテラシーが必要な情報も、対話型でわかりやすく粘り強く説明してもらえると、良い体験になりそうです。
ワクチンのFAQ
信頼性の高い情報源(例:WHOやCDC)の代替として使用することはできないが、簡潔で偏りのないコンテンツとして(陰謀論でない)COVID-19ワクチン情報をユーザーフレンドリーに提供できることが示唆
💡大衆にとってのわかりやすさと正確性のバランスは非常に難しい課題ですが、一方通行でない対話型UXは、理解&行動変容しやすそうです。
Genetics and Biology
to be updated
Social Circumstances
to be updated
AIを使いこなすプロンプトエンジニアリング
※2023/3/19追記
こうした新しい道具が活用されるプロセスにおいて、道具そのものの発明に加えて、道具を活用する手法がセットで重要になると考えます。
現状多くのツールにおいて自然言語によるプロンプトの指定が主であり、その品質により推論、生成、ひいては出力の品質が大きく異なります。
こうしたプロンプトの最適化はプロンプトエンジニアリングと呼称されています。AIに対する指示、コミュニケーションと見立てた際、従来のテキストコミュニケーションにおけるTips(シンプル、明確、背景情報の記載、フォーマットの活用etc)は大いに活きそうです。
他方で、相違点を理解し実行する(Chain of Thoughtを踏まえたstep by stepの指定,Dont'sを記載しないetc)ことも同時に重要であると考えます。
以下の説明がわかりやすかったです。
また、プロンプトエンジニアリングを助ける(ChatGPTにプロンプトを作成してもらう)手法に関しても検討が進んでいるようです。これは衝撃的でした…使いこなしていきます。
私のプロンプトエンジニアになって欲しい。あなたの目標は、私のニーズに合わせて最高のプロンプトを作るのを手伝ってもらうことです。そのプロンプトは、ChatGPTであなたが使用するのに使われます。
次のプロセスに従ってください。
1. あなたの最初の応答は、プロンプトが何についてであるべきかを私に尋ねることです。
私は私の答えを提供しますが、次のステップを経て、継続的な反復を通じて改善する必要があります。
2. 私の入力に基づいて、2つのセクションを生成します。
a) 改訂されたプロンプト(書き直されたプロンプトを提供します。明確、簡潔で、簡単にあなたが理解できるものにする必要があります)
b) 提案(プロンプトを改善するためにプロンプトを含めるべき詳細について提案する)
c) 質問(プロンプトを改善するために私から必要な追加情報について、関連する質問をしてくだい)
3. この反復プロセスは、私があなたに追加情報を提供し、あなたが改訂されたプロンプトセクションのプロンプトを更新し、私が完了したというまで続けます。
※引用元のnoteは以下です。
未来はどちらを向いているか
上記から以下のような傾向が読み取れます。
Generative AIは、医療従事者をサポートするが、代替はしない(できない)
そこそこの精度で大量の情報を高速で処理することにおいては人間を凌駕するが、緻密、正確な計算や処理は苦手
医師や研究者などの専門家と一般生活者のコミュニケーションをつなぐ役割に期待がかかる
今後の妄想及び冒頭の問いへの現時点の答えとしては、
Generative AIが医師や研究者などの専門家と一般生活者をつなぐ架け橋としての役割を担う。専門家と一般生活者、他言語間の情報の非対称性は減少し、集団と個人の双方で、より円滑な対話、合意形成、行動変容が迅速に実現できるように
人間 with Generative AIによる出力・生産性最大化に向けて、合目的にAIを選定する目利き、実践的なプロンプトエンジニアリング等の「適切にAIを使いこなす能力」の価値が高まる
といった姿になっていくのかな、と考えています。
終わりに
Generative AIの技術的な面はまだまだ無知(伸び代)ですし、実用例や研究に関しても勉強を始めたばかりですが、触ってみて本当に驚嘆しました….!
SPHで勉強したいことがたくさんあったのですが、この体験がかなり衝撃的だったことに加えて、世の中に出てきたばかりで皆横並びな中、突き抜けるチャンスがあることも踏まえ、今後注力して勉強していきたいです!
未来を大きく動かす強力なドライバーが多数存在して、本当に楽しい時代を生きているな、と思います。技術オリエンテッドに偏重しないよう、ユーザーと向き合い、正しく課題解決を推進していけるよう頑張ります!
これからも随時情報をアップデートしていきたいと思います!
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最後に宣伝を…!
Ubieでは、一緒に「健康」の未来に挑戦して行ける仲間を絶賛募集中です。
抜群に優秀なエンジニアメンバーとのGenerative AIに関する議論も非常に楽しいです!ぜひお気軽にコンタクトください!
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私も参加させてもらっています!
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