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日本企業から学ぶことはないと言われたインド発のグローバル企業向け商談を振り返る
インドでの最大の学びはグローバルIT企業の宝庫であること
Findyでは今年からインドでの事業展開を始めています。具体的には開発生産性SaaSであるFindy Team+(チームプラス)の展開のためにインドでの挑戦を開始しました。
CFOの河島さんにも実際にインドに住んでもらい、インド人スタッフを数人採用して、顧客開拓を行なっている状況です。成果としては数社のクライアントが生まれ、最近ではインドユニコーンからの初めての受注も獲得しています。
そんなインドでの最大の驚きは、グローバルなITが勃興し始めていることです。例えば、エンジニアの方は一度は耳にしたことのあるPostmanもバンガロール発の企業で今はアメリカに登記を変更して、グローバルで事業を展開しています。
他にもCRMやヘルプデスクソリューションのFreshworks、クラウドベースのウェブ・アプリテストプラットフォームのBrowserStackやフードデリバリーで中東や東南アジアにも進出しているZomatoなど挙げれば数十社出てくるようです。ちなみにPayPayの決済技術も元を辿れば、Paytmとの提携からですね。
日本国内発の企業で本当の意味でグローバルで成功しているITプロダクトの会社はほぼない中で、改めてインド企業の凄さを実感しています。
日本のIT企業から学ぶことがなかったと言われた衝撃的にフィードバック
とあるインド発でアメリカ市場でも一定のシェアをとっている1000人規模のITベンチャーのCTO向けに商談プレゼンをしたことがあります。
45分ほどプロダクトの詳細や思想についてはヒアリングしてもらいましたが、結局は失注でした。その後、現場で導入の検討を進めてもらっていた方が、上記のようなフィードバックがあったとの共有を受けて、自分の力不足を実感しました。確かにCXOレイヤーはインドだけではなくアメリカ西海岸やシンガポール、ドバイなどに移住していることも多く、彼らの情報収集力や日々の友人起業家との会話などのレベル感、視座感は自分たちが思っているよりもはるかに高いのかもしれません。
「学ぶことは何もない」と言われたのは悔しくもあり、はっと目が覚めるいい機会でした。
また、次回のリベンジに向けて自分自身も当たり前にグローバルな経営者と渡り合える視座感を身につけていきたいと思っています。
リスペクトしてもらえる日本の製造業の存在
一方で、スズキやダイキン、ソニーなど確固たる地位をインドで築いてきた企業がたくさん存在しているのも事実です。40年以上前からインドの地に降り立ち、根を生やしてきた先人には頭が上がりません。先日、たまたま滞在していたバンガロールで、インド人のおじんさんに話しかけれた際に、「日本の企業は自国のサプライヤーを連れてくるだけではなく、インドの地場企業の育成にも真剣に取り組んでくれるから好きだ」という話をもらいました。
上記のようにIT分野で短期で何かを提示できることは、残念ながら今の日本のベンチャーには持ち得ないかもしれませんが、長い年月コミットメントし続けることで、結果にコミットしインドのエンジニア組織における良い循環を生み出せる存在になりたいと改めて思いました。
ちなみに、日本のアニメの影響も大きく、街中にはおそらく著作権の問題は大いにありそうですが、呪術廻戦がすごく人気のようなプリントされたバックなどが露天にも売られています。Findyの社員も日本のアニメが好きという優秀なスタッフがジョインしてくれるので、本当に日本のアニメを世界に送り出している作家や出版社の方には感謝しかありません。
海外展開を通して見えてくる日本IT企業の相対的な位置付け
インドからですが海外展開に取り組んで本当に良かったと感じています。まず、2000年代前半は製造業で中国が台頭し、世界の市場を席巻していきました。その中で太陽光発電やEVなどでは日本の企業が大きく遅れをとる結果となっています。また、IT領域ではもちろんアメリカ企業が強さを発揮していますが、一方でアメリカの物価が上がりすぎ、エンジニアの給与水準も日本と比較して3~4倍になる中で、アメリカ企業が作ったプロダクトが世界で売れるかというと高すぎるということになりそうです。また、中国はグレートファイアーウォールの影響もあり、ITの世界では相互に接続していくことが難しい状況になっています。
そんな中、上述の通りインド発のグローバルIT企業が当たり前に出てくるとすると、日本のSaaS市場なども彼らの存在が事業上のライバルになってくるような気がし始めています。ただ、インドでもハイスキル層のエンジニアの年収は日本と変わらない水準になってきています。つまりはこれまでインド企業が当たり前に取り組んできた、インドでスピード感を持って開発し、価格を抑えて欧米市場に挑戦するというのは取り組むモデルとしてはありなのではと思っています。
個人的には、そんなインド発グローバルIT企業に日本のベンチャー企業もどれだけ学んでいけるかが肝になってくると思っています。
バンガロールでのラウンドテーブルでのディスカッションが盛況
Findyでは最近、ラウンドテーブルをバンガロールで開催しています。
具体的にはインドのベンチャー企業や外資系企業の開発拠点におけるCTOやVPoEをお呼びして、「開発生産性」や「技術負債」をテーマに土日の朝からディスカッションをするイベントを開催しています。
めちゃくちゃ面白かったのが、土日の朝からで、20~25人くらいが1テーブルを囲んで、全員が話して全員が突っ込むスタイルです。本当にツッコミが入るので、先日は9時から11時のラウンドテーブルの予定が9時から12時までと1時間伸び、その後も最大で1時間ほど立ち話している方もいて、とにかくエネルギッシュで健全な少し長めの朝会でした。
Findyの領域にとって一番大事なのは、コミュニティの存在だと思っています。短期では結果につながるかは分からないものの、日本だけではなくバンガロール、ソウルなどでもコミュニティを作り、やがてシンガポールで各コミュニティが融合するような取り組みをやっていきたいと思います。また今後の広がりに向けて小さなヒント得た感覚もあります。ちなみにラウンドテーブルには日本のCTOも定期的に招待しているのでご関心ある方はお気軽にご連絡ください!
上記のインド企業からの学びや相対的な視野感の話いかがでしたでしょうか?
現地で頑張る河島さんには事業が立ち上がるまで粘って頂きつつ、自分もインド、韓国、台湾、ベトナム、シンガポールなどを回る中で視野・視座を広げていければと思っています。