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第11話~朽ちさせない~
22時の港。穏やかな波が寝息を立てるように揺れている。すやすや眠る子供たちをベッドに残し、男たちは今日も船に乗り込む。そして朝陽が船を照らす頃、港には網いっぱいの魚たちが水揚げされる。それらは選別され、全国各地の消費地市場に運ばれる。そして船乗りの男たちは子供らの寝顔を見に我が家へと帰っていく。
先ほどの魚たちは、未明のいわき中央卸売市場に到着。静かに眠るいわきの街の中心で、荷受たちがせわしく魚を並べる。そして仲卸や小売のバイヤーに入札され、素早くトラックに積み込まれる。時刻は6時30分。
やがて、包丁を入れられ、朝の売場に並べられる。そして家庭の食卓へと運ばれ魚たちは長旅を終えるのだ。
2010年、魚の消費量は肉に逆転された。これほどのロングランを終えた魚たちの行き先が減少している。魚屋はこの20年で約80%も減った。
常磐沖は日本に2ヶ所しかない潮目がある漁場。魚種は豊富で、味は絶品だ。我々魚屋は、そんな誇れるいわきの水産物の消費量を上げていかねばならない。魚食文化普及で終わらせない、魚食文化不朽が僕らの役目だ。(いわき民報掲載)