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デジタルプラットフォームの仕組みを利用規約にもれなく反映させる方法

「デジタルプラットフォームのひな形が見つからない!」とお悩みの方へ

最近、デジタルプラットフォームの利用規約についてご相談をうかがう機会が増えました。その際に時々うかがうのが、「ひな形があればいただきたいです」というご要望です。

ただ、デジタルプラットフォームの場合、ひな形は基本的に存在しないと考えていただくほうがよいと思います。デジタルプラットフォームと一口にいっても、そのサービス内容は様々であり、汎用的なひな形を作成することは困難だからです。

基本的に、デジタルプラットフォームの利用規約については、法律の専門家に作成を依頼されることをおすすめします。とはいえ、「スタートアップの段階なので、法律の専門家に依頼するだけの予算がない」というお悩みをお持ちの方も少なくないと思います。

今回は、デジタルプラットフォームの利用規約を自作するためのコツを、私が利用規約作成に関わる際に意識していることを踏まえてご紹介します。

はじめに何をすればよいか?

デジタルプラットフォームの利用規約作成でつまづく理由は?

デジタルプラットフォームの利用規約を作成するのが難しいのは、なぜでしょうか。それは、運営者・ユーザー間、そして、ユーザー間の権利義務関係が複雑に絡み合い、整理が大変だからです。

この整理がうまくできれば、利用規約作成の難易度は、大きく下がります。

例えば、次のようなデジタルプラットフォームを考えてみましょう。

デジタルプラットフォームのイメージ図

このデジタルプラットフォームは、農作物などの生産者が生産品を出品して、消費者が値段を付けてその生産品を競り落とすことができる、いわば「バーチャル競り」です。

さて、このようなサービスの利用規約を、どのようなステップで作成していけばよいのでしょうか。

まずは「人」「モノ(サービス)」「お金」の関係に着目する

どのようなデジタルプラットフォームでも、必ず、登場「人」物がいます。そして、だれかがだれかに、「モノ」や「サービス」を提供します。さらに、モノやサービスに関連して、「お金」が支払われます。これらの関係性に着目してデジタルプラットフォームの仕組みを整理すると、かなり分かりやすくなります。

「人」「モノ(サービス)」「お金」に着目して整理した結果

さて、「バーチャル競り」を「人」「モノ(サービス)」「お金」の関係に着目して整理すると、上のようになりました。

それぞれの法律関係を成立する

次に、「人」「モノ(サービス)」「お金」の関係について、法律関係に置き換えて考えます。そうすると、「バーチャル競り」は、次の2つの整理がありうることが分かります。

【スキーム1】販売者・購入者間で売買契約成立。運営者がお金の仲介。
【スキーム2】運営者が再販売。販売者に商品発送を委託。

「人」「モノ(サービス)」「お金」の関係はどちらのスキームも同じですが、それを法律関係としてどう説明するかによって、問題になる課題が変わってきます。

上の例であれば、【スキーム1】については運営者に資金決済法が適用されないためにどうすればよいか、【スキーム2】については運営者が生産物のキズに対する責任を負うリスクを許容できるかが課題になります。

このように整理していくと、利用規約作成において何を検討すればよいかが明確になります。

複雑なデジタルプラットフォームも単純化して考える

ここまでお読みいただいた方から、自社のデジタルプラットフォームは、「バーチャル競り」よりもはるかに複雑だから、そんなに簡単には整理できない!というお声をいただくかもしれません。

しかし、複雑なプラットフォームであっても、機能を細分化して考えると、1つ1つの機能はそこまで複雑でないことがほとんどです。

機能を細分化して考えたイメージ

機能を細分化したうえで、1つ1つの機能に対して前述した整理を行うと、デジタルプラットフォーム全体の仕組みを、うまく法律関係に落とし込むことができます。

参考になる類型のサービスを探す

さて、デジタルプラットフォーム全体の仕組みをうまく法律関係に落とし込むことに成功すれば、次は、参考になる類型のサービスを探してみてください。

例えば、「バーチャル競り」であれば、次のようなサービスを参考にすればよいと考えられます。

  • 生鮮品を取り扱うECサイト

  • インターネットオークションサイト

  • 売買の場を提供するデジタルプラットフォームサービス

  • 決済代行のような仕組みを持ったサイト

「バーチャル競り」と全く同じサービスを見つけることは困難ですが、上のような一般的なサイトを見つけることは簡単です。このように、複数の類型のサービスを探して、各サービスの利用規約の特徴をうまく抽出することができれば、利用規約作成のステップを大きく前進させることができます。

構成メモを作る

構成メモの参考例

さて、ここまで来ると、さっそく利用規約を書き始めたくなりますが、まずは焦らずに、構成メモを作ってみてください。何となく作成に着手できそうな気がしても、いざ構成メモを作ってみると、色々と分からないことが出てきます。その際には、改めて、他者サービスの利用規約を参考にしてみてください。

デジタルプラットフォームはミニ国家

利用規約の作成案件に携わっていると、デジタルプラットフォームがまるで「小さな国家」のようだと感じることがよくあります。デジタルプラットフォームの利用規約作成に対して、まるで国家の法律を立案しているように感じるのです。

私は、デジタルプラットフォームの利用規約に対して、次のようなイメージを持っています。

デジタルプラットフォームにおける利用規約の機能
国家における法律の機能

このような形で比較すると、デジタルプラットフォームにおける利用規約の機能と、国家における法律の機能は、よく似ていると思います。

デジタルプラットフォームの利用規約を作成する際に、「ミニ国家の立法担当者」になった気持ちで取り組むと、何を書くべきかイメージしやすくなります。

第1に、運営者とユーザーとの関係では、収益を回収するための仕組みを明確化しておくことが重要です。国家でいうところの税法に近いと思います。

また、デジタルプラットフォームの秩序を乱すユーザーに対して、適切なサンクションを課すためのルールづくりも重要です。これは、国家でいうところの刑事法や行政法に近いと思います。

第2に、ユーザー間については、お互いの権利義務関係に関するルールや、紛争が生じた際の解決ルールを明確化しておくことが重要です。国家でいうところの民事法に近いと思います。

これらがすべて備わった利用規約は、「優れたルール」といえます。

参考書籍のご紹介

最後に、デジタルプラットフォームの利用規約作成について取り上げた拙著(2022年9月出版)をご紹介いたします。

書籍情報はこちら

この書籍では、オンラインサービスのスタートアップで企画段階から必ず押さえておいていただきたいテーマを実務視点でピックアップし、詳しく解説しました。

利用規約のサンプル(3種類)、プライバシーポリシーのサンプルを全文掲載したほか、個人情報保護法、特定商取引法、資金決済法などオンラインサービスにかかわる様々な法律の中から「これだけは必ず押さえておきたい!法律知識」を厳選して解説しました。

特に、次のサービスに関するテーマを中心に取り上げています。

  • ECサイト

  • 動画投稿サービスなどのコンテンツ共有サービス

  • フリマサービス

  • クラウドファンディングプラットフォーム

  • スキルシェアサービス(フリーランス募集プラットフォームなど)

Amazon紀伊国屋オンラインサイトほか、ジュンク堂、紀伊国屋書店など全国の書店で取り扱っています。

書籍について、詳しくは、こちらのページをご覧ください。

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