ファッションは、デザインだけではないんだと知ってしまったから Lunch#80 西村すみれさん
自分が本能的に、小さい頃から好きだったもの、それをはっきりと答える人ってどれくらいいるのだろう。そして、それを大人になっても追い求めている人って、どれくらいいるのだろう。
もちろんそれだけが幸せのかたちではないけれど、それでも、小さい時に抱いた夢のままに進める人がいたら、ちょっと羨ましいと思うのも事実。
西村さんはまさにそんな人生を送ってきたのですが、それと同時に、どんな道をこれから進むのかという悩みも抱えています。
一本に見えていた道が、広がっていくような感覚なのかもしれません。
そんな西村さんとのポイントはこちら、
・本能的に好き
・ビジネスとの出会い
・迷いまくっているこの先の道
まずは、本能的に好き、です。
西村さんの将来の夢は、世界的に有名なファッションデザイナーでした。それは、物心ついた時から、気づけば当たり前のようにあった夢でした。
それは、なぜという質問すら受け付けようのないほどの原体験的な感覚だそうです。
もし、ルーツを探すとしたら、お父さんが建築関係の仕事をされていて、お母さんは音楽に傾倒していた、そんな両親のものとで育ったのが西村さんでした。
小さい頃から、アートに触れる機会も多く、何かを作ることに強い興味を持っていました。そして、その対象が、気づけばファッションだったそうです。
そのファッションへの思いはずっと強く、その思いのまま今では、アパレル系のメディアの運営をしたり、アパレルのブランドを友人と立ち上げてデザイナーをしたり、とファッションとの関わりを強く持っていました。
そんな本能的に好きなファッションに対しての思いが、最近少し変わり始めたのだそうです。それは、大学に入って、色々な経験をするようになったからかもしれません。
というのも大学のゼミでは、サステイナブルファッションという分野を研究していて、ファッションというものが、どうやれば環境によく、消費者にとっても良いものとなるかを研究するものだそうです。
そのためには、素材の作るところから、サステイナブルなデザインももちろん、さらには、どう流通させるのが良いのか、というファッション業界をかなり俯瞰してみる必要があるのです。
そして、それはデザインというファッションの1つの側面だけを見ていたらできることではないために、複雑で難しいものだそうです。
そんな思想との出会いもあって、西村さんは、ファッションをデザインという側面からだけではなく、流通や素材・環境問題など様々な観点から考えるようになり、その視野が広がる一方で、思い描く将来の夢も変わってきたのでした。
次は、ビジネスとの出会い、です。
西村さんは元々、ファッションデザイナーを目指していたのですが、作るだけでなく、どうやって伝えるのか広げるのか、を考えるきっかけとなったのは、高校の授業がきっかけでした。
西村さんが通っていた高校は、京都にある私立高校で、かなり国際色豊かでプログラムもかなり多様なものでした。
その高校の中でも特に国際的なコースに進んだ西村さんは、1年目で日本文化をしっかりと学び、2年生の時には、カナダの高校で1年過ごし、3年生の時には、グローバルリーダーシップスタディーズという勉強があり、そこではビジネスや起業についても学んだのでした。
そこで、宇治市の地域活性化をテーマにビジネスモデルを考える授業がありました。西村さんは、その授業で、洋服のデザインと、宇治市の伝統産業である和服とを混ぜ合わせるビジネスモデルを発表し、このビジネスモデルが実際に地域活性化の1つとして採択されたのです。
さらに、このビジネスアイデアを持って、マサチューセッツ工科大学(MIT)でのビジコンに参加して優勝します。
このように、ただファッションをデザインするだけではなく、どんな風にビジネスとして成立させるのか、地域を盛り上げるのかという面でも考えるようになった西村さんは、気づけばファッションをより広い視点で考えるようになっていったのでした。
そんなことを考えるようになって、大学では、サステイナブルファッションという、新しいファションの思想についての研究を始めるのでした。
本能的に好きだった、ファッション・デザインという分野から、ビジネスという考え方を獲得し、さらには、サステイナブル、つまり環境への影響、世の中への影響までも考えるようになった西村さん。
視野が広くなった分、どこに進めばいいのかという悩みは深くなっていったようです。
最後は、迷いまくっているこの先の道、です。
年明けすぐにお会いした西村さんですが、実は年末年始にとても深く悩んでいたそうです。それも自分がどのような道に進むべきかについて。
去年の秋くらいから、西村さん自身どのような道へと進もうか悩んでいたのですが、それ以上に多忙を極めていたために、深く悩むことも考えることもできないまま、日々を過ごしていました。
そんな中、このままではダメだと考え、周りにも忙しすぎて心配されるようになっていきました。
具体的には、慶應ビジネスコミュニティ(KBC)という学生起業家支援団体の副代表、学校のゼミの研究、デザインの専門学校(ダブルスクール)、ダンスサークル、友人の主催するイベントへの参加などなど。
どれか1つだけでも、普通の大学生なら、てんてこまいになってしまうほどの物量を、2個も3個も掛け持ちしていたそうです。
そんなことをしているうちに、好きでやっていたはずのダンスや、楽しみにしていたイベントに、行きたくないと思うようになってしまいました。好きが、忙しさのせいで、いやいや行く、になってしまった時に、西村さんはやばい、と感じたのです。
やっとのことで、自分の内側に溜め込まれたストレスの塊に気づいた西村さんは、これじゃダメだ、ということで。
ひとまず、辞めれるものから辞めていき、自分に時間を整理していきます。そして、今では、インターンとゼミの関わるプロジェクト2つだけに絞ったのです。
それでもまだまだ多いような気もしますが、西村さんは、ここから自分が継続したいのはどれかを真剣に悩んでいるのです。
というのも、西村さんは、次の4月から大学4年生になり、多くの学生と同じく就職活動へと進んでいくことになるのです。
周囲の友人の多くは、起業やVCなど、自分でビジネスをするという道へと進んでおり、西村さんもその道を考えないわけではないですが。
その一方で、企業に勤めるという選択肢も捨てきれず、深く悩んでいるようです。
西村さん自身、自分のことを器用貧乏と称するほどに、幅広くいろいろなことができる人で、そのせいでどれか1つに絞ることに困難さを感じているようです。
それでも、若いうちに1つの専門分野の知識と技術を身に付けたいとのことで、自分のためにも、この悩みを突破したいと考えているようです。
そして、その悩みを突破するためにも、今はとにかく動かなきゃ、とスイッチを入れて、就職活動も含めた、西村さんの活動に積極的に動いていくようです。
西村さんの悩みに、答えが出るのがいつかはわかりませんが、それでも、この先いろんな活動を通じて、こっちの道、あっちの道へとまた色々と積極的に進んでいくことは、間違いない気がします。
そして、その道が、ファッションの世界を良くすることにつながっていることも。
2020.1.8 西村すみれさん
六本木にて