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【講座レポート】「ボランティア受け入れのコツ実践編/新しい人も、続ける人も、ハッピーに活躍できるための工夫とは」

ゲスト:
NPO法人若者メンタルサポート協会 理事長 小杉沙織さん、中村俊也さん
NPO法人シブヤ大学 学長 大澤悠季さん
卯めこども食堂 学生ボランティア 上符(うわぶ)百香さん、中村毬白さん

進行:
認定NPO法人サービスグラント 代表理事 嵯峨生馬

日時:2025年1月30日(木)13:30-16:00


2024年に結・しぶやで行いました「団体の現状とニーズに関する調査2024」の結果から、活動を大きくしたいがボランティアや担い手が足りない、ボランティアをどう受け入れたらいいか、という声が多く聞かれ、ボランティア受け入れは関心の高いテーマであることがわかりました。
そこで本講座では、ボランティアが積極的に活躍している3団体に登壇いただき、三者三様のボランティアの在り方をお聞きしました。ご自身の団体でのボランティア受け入れにさっそく活かせるヒントが見つかるかもしれません。

【登壇団体紹介】
NPO法人若者メンタルサポート協会

24時間のLINE相談事業をすべてボランティアで対応しています。主な対象は10代の若者で、相談者で一番多いのは中高生です。相談者ごとの担当制で同じ人が相談を聞くようにしています。相談件数は通常は年間2~3万通、コロナ禍下では4万通ありました。
若者対象に特化したカウンセラー養成講座なども研修として開催しています。
「若者が自立し自信をもって幸せに生きていける社会を作る」をビジョンに活動しています。

NPO法人シブヤ大学

渋谷のまち全体をキャンパスに見立て、誰でも無料で参加できる大人の学びの場を、ボランティアによって運営しています。フルタイムのスタッフは1人。ボランティアは、毎月の授業の企画もできます。
参加者は、10代から80代まで、30~40代の働き世代が多いのが特徴です。19年間で、1,587講座を開催、45,555人が参加しています。
 
卯めこども食堂

恵比寿の料亭が閉店する際、子ども食堂としての活用についてボランティアセンターに相談がありスタートしました。
食事の前の約2時間は、絵を描いたり宿題を見てあげるなど、ボランティアと子どもとの交流の時間です。学生ボランティアは、大学生、渋谷教育学園渋谷中学・高校の学生ボランティアの皆さん。1回あたりの?参加者は約10名、ボランティアは4名ぐらいで、1~2カ月に1回運営しています。


進行:団体のボランティアにはどんな方がいらっしゃいますか?

小杉さん(若者メンタルサポート協会):ドイツ在住の主婦、北海道のフリースクール勤務、会社勤務など様々な方が、仕事の合間などの隙間時間にLINE相談の対応をします。私が活動について長く発信しているSNSや本を通じて関心を持ち、問い合わせて来て加わってくださるケースがほとんどです。LINE相談をしてきた子が卒業して、相談員やスタッフとして手伝ってくれるという循環も生まれています。
相談にくる子は家庭環境に困難を抱えている子が多いので、この人なら話せるという距離感や温かみを大切にしています。
ボランティアの方には研修を受けてもらいます。オンラインの支援がメインなので、離れていながらいの支援、相談員のモチベーション維持、協力体制と知識やスキルの向上なども課題です。
以前は誰でもボランティアとして受け入れていましたが、中には、支援することより、必要とされていることで自分の存在価値を保とうとするケースがあります。子どもたちと共依存を起こしてしまったり、無意識にコントロールしたりという人も出てきました。そこで、数年前から研修や面談をするようになりました。トライ&エラーを繰り返しながら発展させてきています。

大澤さん(シブヤ大学):参加者はウェブ上で常時募集しています。関わり方は、学びたければ学生に、企画を作りたければボランティアスタッフ(ボラスタ)になって作る側に、授業料無料の仕組みを支えるなら寄付サポーター、の3つがあります。
ボラスタの皆さんは「作る」に興味を持った人たちで、19年で累計約500~600人になります。半期に1回、次の半年間の希望を聞いて、関わり度合いを調整しています。実際に積極的に稼働している人数は40~60人ぐらい。大学生から定年退職後の方まで幅広く、職業も、会社員、フリーランス、主婦など様々です。
関わり方も多様で、毎月来る方、5年ぶりという人もいるなど、皆さん来たい時に来ます。シブヤ大学があってほしいという想いが強く、だからこそみんなで一緒に作っていきます。
活動は、毎月の授業の企画。流行っている、バズりそう、ではなく、自分がいま受けたい、新しい趣味を見つけたいからみんなでやってみたい、仕事でこれに悩んでいるからそれをテーマにしたい、など等身大の授業であることを大事にしています。
そして、企画だけでなく、当日の運営、参加者とのコミュニケーションなどの学びの場づくりもボランティアを中心に行っています。
さらに、NPOとして組織全体を考えたい人は、ファンドレイジングや寄付、広報に関わったり、ビジョンマップを作成したり、建築の仕事を活かして拠点のリノベーションを考えたりなど、、プロジェクトごとに運営の裏側で関わっている人もいます。

上符さん(卯めこども食堂):私は、「しぶやボランティアセンター」で1年インターンをしたご縁で参加するようになりました。
中村さん(卯めこども食堂):こども食堂に関心がありボランティアセンターに相談し、卯めこども食堂を紹介されて、2023年の設立時からボランティアコーディネートを担当しています。
規模が小さく1~2か月に1回と開催回数も多くないので、大学生数名と、渋谷学園渋谷中学・高等学校のボランティア部の人たちで運営し、新規ボランティアは積極的に募集していません。
活動は、みんな楽しんでやっています。調理は元料亭の浅見さんと奥さん。学生ボランティアは食事の用意や食事中の対応、後片付けなどと、調理を待つ間のフロアの安全管理です。
進行:おふたりともボランティアセンターの紹介だったのですね。ボランティアを集めたいと思ったときに、ボランティアセンターに相談するのは1つの方法ですね。

進行:ボランティアの参加案内、定着、育成について、どのような工夫をしていますか。

中村さん(若者メンタルサポート協会):ボランティア相談員募集で大事にしているのは、理念、ビジョン、ミッションの理解です。ホームページでも大きく取り上げて、募集のときにもまず共有するなど、若者に寄り添っていくという理念に賛同いただいているかをまず確認します。
理想としているのは、臨床心理士、公認心理士などの有資格者かどうかなどではなく、親身に相談に乗ってくれる近所のお兄さんお姉さんのような関係です。
研修は、まずLINE相談のいろはから。それから、リストカット、オーバードーズはどうしたらいいかなど専門的なテーマを全般的に学んでもらい、私が相談者になって研修生が実際にLINEのやりとりをします。長くて1カ月の研修をしてから現場に出てもらい、現場に出ていってからも近況の確認、困りごとを聞くなどのフォローを定期的に行い、半年を目途に独り立ちしていきます。

大澤さん(シブヤ大学):まずシブヤ大学の授業日に来てもらい、午前中の説明会でビジョンの共有、ボランティアをしたい理由やそれがなぜシブヤ大学なのかを1対1で聞きます。午後は授業の現場(受付、記録、ファシリテーションなど)に入ってもらい、夕方のボラスタの振り返りにも参加してもらいます。そして打ち上げ。一連の体験をしてもらってから、本登録をしたいかどうか確認します。

中村さん(卯めこども食堂):研修などは行わずに自然体で活動しています。ボランティア同士も「はじめまして」というケースが毎回多く、その場で何をするか考えたりコミュニティを構築していく時間を作っています。代表の浅見さん自身もボランティア活動が初めてという中でのスタートだったので、みんなで意見を出しながら進めています。

進行:ボランティアの継続やモチベーション維持において、大事にしていることはありますか?

中村さん(若者メンタルサポート協会):研修カリキュラムを通し、LGBTQ、解離性同一性障害などいろいろなケースを踏まえて学び、交流をしています。もう1つは、支援する自分たちも成長させてもらっているのだということを共有しています。支援する中で、例えば自分の親に対する感情などを発見するなど、相談員としても気づきがあります。
小杉さん(若者メンタルサポート協会):相談員の親睦、家に招いての食事会などもすごく有意義だと感じています。やめようかと思っていた人が、親睦の場に参加をして撤回したり。相談員も人間なので、アットホームなオフでの仲間とのつながりも大事です。飲みながらの意見交換も貴重です。
大澤さん(シブヤ大学):シブヤ大学も、つながりや出会いが魅力の1つです。学びは口実で、人に会いに来ているという人も多く、継続の理由だと思います。役割も明確に決めずその時々で自分で選ぶことができ、企画、運営、そして役割がなくてもいいなど、柔軟で関わりやすいようです。
また、自分はリーダーだから何でもできなければと最初は頑張っていましたが、仲間からすると寂しい、頼ってほしいという声もありました。どう頼ったらいいか数年悩みましたが、今は、弱みも悩みも見せて、一緒に悩んでいます。みんながやりたいことについて一緒に悩み、できたら祝う、というプロセスを共有することが大事だと思っています。
中村さん(卯めこども食堂):ボランティアメンバーのLINEに「参加できる人は来てください」と声をかけて活動しています。来られるときに参加するなど臨機応変に動けることも、継続できている理由ではないかと思います。
子どもと関わるのが好きで食事前の時間が楽しくて来る人、数学が得意な人が数学を教えるなど、興味や強みを活かせるのもいいところです。
上符さん(卯めこども食堂):食事が終わると振り返りをして、運営に関する案などを出しています。


【参加者からの質問】
Q: ボランティアだけで対応できないときのフォロー体制や専門機関につなげるなど、対応や工夫はありますか?
A(中村さん 若者メンタルサポート協会):緊急性のある相談者を児童相談所や警察につなぐということは今のところなく、相談者からのニーズとしては、保健室登校の希望を学校の先生に代弁してください、精神科の先生にこれを伝えてください、などが多いようです。未成年の相談者を通報すると親との関係性が悪くなることがあります。通報してほしいのか、誰に伝えたいのか、そのままにしてほしいのか、本人がどうしたいかが大事です。

Q: ボランティア募集案内に入れるといい情報や内容はありますか?
A(中村さん 若者メンタルサポート協会):ブログやSNSで活動内容を発信しているので、理解して来てくれる人が多いです。
A(大澤さん シブヤ大学):ホームページに掲載しているビジョン・ミッションへの共感が、1つのフィルターになっていると思います。授業の参加経験なくいきなり企画する側を希望する人には、まず体験で授業を見てもらいます。双方イメージと違うと思ったら無理に参加しないことも大事です。

Q:ボランティアを辞めてしまう人はどれくらいいますか。
A(中村さん 若者メンタルサポート協会):年に1人、2人程度。協会が嫌で辞めるという人は少ないです。ビジョンへの共感がある人に仲間になってもらっていることがポイントではないかと思います。
A(中村さん 卯めこども食堂):大学生ボランティア3人のうち2人は卒業します。これまで積極的な募集はしていませんでしたが、大学生ボランティアを募集するかもしれないフェーズにいます。


【ゲスト ご所属団体ご紹介】
NPO法人若者メンタルサポート協会
ご登壇:理事長 小杉沙織さん、中村俊也さん
https://www.wakamono-support.jp/

NPO法人シブヤ大学 
ご登壇:学長 大澤悠季さん
https://www.shibuya-univ.net/

卯めこども食堂
ご登壇:学生ボランティア 上符百香さん、中村毬白さん
https://shibuyaku-kodomo-table.jp/event/卯め-こども食堂