#10 バタバタ茶製造と朝日町生産の経緯
2021.10.12
初めに
こんにちは、ささです!前回は、お茶の分類の中でバタバタ茶はどのような位置付けなのか、このお茶の歴史や特徴について紹介しました。
今回は実際の製造方法と、朝日町でバタバタ茶が生産されるようになった経緯を紹介していきます。前回の記事の中で、もともと朝日町ではお茶を生産しておらず、外から仕入れていたというお話をしました。朝日町でどのようにして生産されているのか、これまでどのような道のりを歩んできたのかについて、ぜひ注目しながら読んでいただけると嬉しいです!
取材には、朝日町商工会(以下、商工会)さんとバタバタ茶伝承館さんにご協力いただき、一部写真は朝日町観光協会の上澤聖子さんからご提供いただきました。また一部、新型コロナウイルス感染拡大前に撮影された画像もあります。
1章 お茶の製造方法
お茶の「刈り取り」から茶葉の「乾燥」まで、合計6つの工程を紹介します。今年は7月30日と31日に茶葉の「刈り取り」、「裁断」、「蒸す」、「室の中に入れて発酵させる」という4つの工程を行いました。その後、8月5日から30日まで「切り返し」を行い、翌日の31日に「乾燥」を行いました。製造には約1ヶ月を要しています。以下で具体的な作業内容を紹介していきます。
1、刈り取り
お茶畑は、なないろKAN前にあります。茶葉を刈り取るための機械を使って、畝に沿って刈り取っていきます。一本の畝を往復することで、木全体の葉を刈ります。
今年は長雨の影響で、茶葉の先が少し枯れてしまっている部分もありますが、品質には問題ないそうです。ここの畑には2種類の茶樹が植えられており、やぶきたとふうしゅんという品種がブレンドしています。刈り機から空気が出ているので、刈り取った茶葉をすぐに後ろの袋の中に飛ばして集めています。この畑の畝を一往復しただけで、茶葉の重さは4人では支え切れないほどになっています!
2、裁断
刈り取った茶葉を、蛭谷にあるバタバタ茶伝承館へ運びます。刈り取りの際に茶葉だけでなく枝も同時に刈り取っているため、裁断機を使って大きな葉や長い枝を細かくします。
この後の作業をしやすくするために、裁断しているそうです。大量の茶葉を滞りなく機械に入れる作業はとても骨が折れました。実際に体験してみて、一緒に作業をしていたおじいさん方がとても元気で、重労働を物ともしていない様子に驚きました。
3、蒸す
裁断し終わった茶葉を蒸し器に入れます。前回の記事で紹介したように、茶葉にはもともと酵素が存在しており、刈り取った後その働きで自然発酵が進んでしまいます。これを止めるために蒸し器で加熱し、殺菌しています。蒸し上がった茶葉を、揉むようにして空気に触れさせ、人肌の温度に冷まします。
茶葉を蒸すことで、お茶独特のいい香りが漂っていました。ただ気温が高い日に作業していたこともあり、蒸気がこもった室内はとても暑かったです。この状況でも、おしゃべりをしながら作業を続けれおられたおばあさん方の元気さは、素晴らしいなと感じました。
4、室の中で発酵させる
人肌に冷ました茶葉を、室に入れてむしろ(藁などで作られた敷物)を被せます。この室には発酵菌がついており、これらを用いて茶葉を発酵させていきます。
茶葉は菌がついている周りから発酵が進んでいきます。今年は1700から1800キログラムの茶葉を収穫したため、それら全てを二つの室に分けて入れました。
5、切り返し
発酵の過程で、茶葉の温度は次第に上昇していきます。70度以上になると、発酵菌が死滅してしまうため、温度を下げる必要があります。室に入れていた茶葉を一度外へ出し、空気に触れさせ温度を人肌ほどに下げたのちに、また室へ入れ直します。気温が低い朝5時に作業を開始し、大体65度から40度ほどまで下げます。この作業は、発酵を始めた4~5日後に開始し、2日置きに温度が上がらなくなるまで合計12回行います。
むしろをめくって温度を計測中
茶葉をほぐしている様子
この作業が一番経験と勘を必要とします。温度が上がりすぎないように、切り返しを行う日を調節したり、今後の気温をみて茶葉の温度の上がり方を予測し、どのくらい温度を下げるかも決めたりします。また切り返しの段階では、お茶の香りも少しずつ変化してきており、紅茶のような豊かな香りと発酵した少し酸っぱいような香りもしていました。
6、乾燥
発酵が終わった茶葉を天日干しにします。
この乾燥が完了すれば、バタバタ茶の完成です!
乾燥の作業後、1ヶ月経った頃に商品として販売されます。今年のバタバタ茶は10月に販売予定です。まめなけ市場さんやなないろKANさんなどで購入することができます。
ここまでの作業の様子を動画にまとめてみたので、こちらもご覧になってみて下さい!
2章 朝日町でのバタバタ茶生産への想い
前回の記事では、これまで外からバタバタ茶を仕入れていたというお話を紹介しました。ここでは1章で見たように朝日町でバタバタ茶が生産されるようになった背景にある想いを紹介します。
現在バタバタ茶の販売を行っている株式会社あさひは、昭和60年に設立されました。背景としては、商工会の村おこし事業の一つとして始まりました。国からの補助金がおりることから、この時期には全国的に村おこし事業が盛んに行われていました。事業内容はイベントと特産品が対象となっており、イベントに関しては宮崎の花火や舟川の桜が、特産品はバタバタ茶と金糸瓜、玉ねぎの粕漬けが取り上げられました。
特産品において商品の取り扱いやすさのなどの理由から、バタバタ茶以外は農業協同組合の女性部に移譲することになりました。バタバタ茶に関しては、旧小杉町でお茶を作っている荻原さんという方がいたため、そこから会社として品物を仕入れることで、蛭谷でのお茶の風習を残そうとしました。しかし、「自分たちの手で作った生葉を用意できないのに、自分たちでお茶を作る力がないのに、バタバタ茶を自分たちの特産品と言うことができるのか」という話が出ました。そこで朝日町でお茶作りに挑戦することになりました。
村おこし事業は商工会の事業として始まりましたが、商工会は営利団体ではないためお茶を販売することができませんでした。そこで、株式会社あさひという第3セクター(地方公共団体と民間企業の共同出資によって設立される事業体)として販売をしました。商工会の村おこし協議会がお茶を生産し、株式会社あさひがそこから仕入れて販売するという流れを作っています。町と卸売り業者と商工会が株式会社あさひの株主となっており、その三者が協力して生産と販売に関わっています。現在、主に商工会がバタバタ茶の製造を担っています。
3章 製造法確立までの道のり
2章に続いて、実際に朝日町で製造するにあたってどのような経緯があったのかを紹介します。
現在の製造方法に至るまでは、約30年もの間試行錯誤を繰り返してきました。平成2年から10年の間は、蛭谷にバタバタ茶愛好会という組織を作ってもらい、組織の方々がお茶作りに挑戦しました。当時、お茶作りのノウハウは全くない状態から挑戦が始まりました。茶葉の収穫時期が決まっているため、一年に一回毎年のようにお茶作りに取り組んできました。しかし、なかなかうまくいかず毎年生産した分が在庫に残ってしまっていました。お茶を作ろうという意欲がなくなってしまうと、バタバタ茶文化を引き継いでいくことができなくなると思い粘り強くお茶を作っていましたが、世の中の人にお茶を届けることはできていませんでした。
そこで平成13年に、もともとのお茶の仕入れ先であった小杉町の荻原さんに相談することにしました。最初の1、2年は自社の製法を守るために、なかなかお茶作りにおいて大切なことを教えてもらうことができませんでした。その後荻原さんがお茶の製造をやめる決心したことで、自分の意思をついで欲しいと商工会にお話があり、3年間朝日町に来てもらい製造法を教えていただきました。茶葉の刈り機や裁断用の機械、蒸し器、室を譲り受けたことで、道具に付着していた自然発酵をさせる菌を用いて見事製造に成功しました。このような試行錯誤を経て、今の朝日町産のバタバタ茶が流通しています。
製造する上で大切にしていることは、文化としてのバタバタ茶を守っていくことです。商品としてお茶を外の地域に売り出して利益をあげること、これももちろん町おこしにつながります。しかし、製造する場所や生産者が限られていることから、本当に必要としている蛭谷や朝日町の人々に届けることを第一に考えています。人々をつなぐ媒介となっているお茶を守るため、今でも毎年製造を続けています。
終わりに
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
製造方法と朝日町で生産された経緯についてまとめましたが、いかがだったでしょうか?
自分たちでお茶を作ってこそ、胸を張って特産品であると言える。この心意気に感動しました。さらに知識や経験がない中でも、粘り強く製造を続けてこられた想いの強さに感動しました。
次回は、バタバタ茶製造に長い間関わっている商工会の平木さんへのインタビュー内容を紹介するので、そちらもお楽しみいただけると嬉しいです!
ご協力いただいた方々
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朝日町商工会
〒939-0741 富山県下新川郡朝日町泊418
TEL/0765-83-2280 FAX/0765-83-2282
HP : https://www.shokoren-toyama.or.jp/~asahi/
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一般社団法人朝日町観光協会
〒939-0744 富山県下新川郡朝日町平柳688
TEL/0765-83-2780 FAX/0765-83-2781
HP : https://www.asahi-tabi.com/
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バタバタ茶伝承館
〒939-0712 富山県下新川郡朝日町蛭谷484
TEL/0765-84-8870
HP : https://www.town.asahi.toyama.jp/soshiki/shokokanko/1449207727885.html
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