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103万円の壁の引き上げ~未曽有の物価高を克服できるのか

令和6年12月20日に、自民・公明両党は、2025年度の税制改正大綱を決定しました。
先般の衆議院選挙で争点になった「物価高」に対する政策として、国民民主党は、所得税が課される年収の基準を103万円から178万円に引き上げることを訴えていましたが、自民・公明両党は大綱に123万円と明記しました。
これをどう感じますか?

30年前の話ですが、私もアルバイトをしていたことがあり、その時は時給800円でした。毎日5時間、週に5日働き、1か月の給料はだいたい8万円でした。なんでこのような話をしたのかというと、現在で同じ働き方をするとどうなるのかを見たいからです。いま時給が1050円として、同じだけ働くと、1か月の給料はだいたい10万5千円になり、年収は126万円になります。
この人が大学生であれば、勤労学生控除を受けられるので、本人は所得税はかかりません(正社員の4分の3未満の勤務時間であれば、社会保険も原則かかりません)。しかし、通常は世帯主の扶養の範囲内で働かないといけないため、大学生の息子さんが103万円を超えると、世帯主の扶養控除を受けることができなくなり、一家全体でみた場合、手取り額は減少してしまうのです。

今回の改正が実現すれば、103万円の壁が123万円(大学生については、150万円)に上がります。これにより、アルバイトをする時間は、おおむね24%増やす(いままで4時間で調整していたのを5時間に増やす)ことができ、朗報と感じる人も多いのではないでしょうか?

一方で、大学生のアルバイトについては150万円と、123万円と国民民主党主張の178万円のおおむね半分とされています。

この改正のメリットとデメリットをみてみると

●メリット
①壁が高くなったことにより、扶養から外れにくくなるため、働ける時間が増える
② ①の場合、一家全体での手取り額が増える
●デメリット
①社会保険は、変わらず130万円の壁があるため、大学生といえど除外される要件から外れれば、社会保険に加入しなければならなくなる(税金のところだけ議論されているが、社会保険の扶養に関しては、いまのところなんら議論されていないので、この改正が成立しても、使い勝手が悪いものと感じる)
②大学生が150万円稼ぐためには、103万円で調整していた時の1.5倍働かなくてはならない。(この観点から、私は150万円まで壁を上げる必要性を感じない)

●それ以前に・・・
前回の衆議院選で、自民・公明両党は過半数割れしており、国民民主党の理解がなければ法案を可決することはできない。一方で、国民民主党は178万円以外はあり得ないを一切譲歩しない考えであるという。なので、これだけ盛り上がっていても、この改正は「反対多数」になるのかもしれないなぁと、個人的には思っています。

日本は未曽有の物価高で国民の生活は疲弊しています。
令和7年は、ここからの出口が見えるような政策をかかげ、新しい1年にしてほしいものです。

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