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エッセイ | 夜の底が白くなった。

川端康成の『雪国』。
冒頭はあの有名な「国境のトンネルを抜けると雪国であった。」

わたしは、そのあとに続く2文目がすきだ。
「夜の底が白くなった。」 

雪国に引っ越してはじめて、雪が夜を明るくすることを知った。

昨晩、長野にはまた雪が降った。
夜7時頃、ふと窓を開けたい気分になってカーテンを開けた。なんだか妙に明るかった。
あれ?もう7時だよね?
時計おかしい?
iPhoneの時計がついに寒さで狂い出したかー。
時計を3度見くらいした。ラスト1回はiPhoneを再起動させて。
やっぱり7時だった。
日が長くなったにしては長くなりすぎじゃない??

窓を開けると雪が舞っていた。
雪ってこんなに明るくなるんだ。

ちらちらふわふわ
舞う雪が、夜の底を白く塗っていく感じをボーっと眺めていた。

1月に東京に長く帰省していたので、もうすぐ冬も終わるなあと思っていた。
長野の季節は東京よりもゆっくり進んでいくみたいだ。
焦ることなんてないさ。
白く塗られた山々がそう言っているみたい。

まだ少し、街が、山が、この白い絵の具で塗られていくさまを楽しめるみたい。

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