将棋めしとおやつの旅~東京・その1(3)おかしやうっち~
『おかしやうっち~』は2020年名人戦第5局、将棋会館での対局のおやつ「水ちょこ」で気になっていた店だ。いったいどんなチョコレートなのかという謎を解明したく訪店を決めた。
『レティエ』に向かう際にこの店の前を通ったところ、既に3人並んでいた。時刻は11時半くらい。開店まで30分もある。並んでまで彼らが求めているものが「水ちょこ」ではないことを願った。なお、イートインは予約制で平日のみである。
開店早々に店の前へ行くと、まだ並んでいる人がいる。小さい店内は一組ずつしか入店できないので、外の列に並んで順番を待つ。
「水ちょこ8種」が2,400円、つまり1種(1つ)300円である。有楽町のラ・メ〇ン・ド・ショ〇ラで起こした眩暈と同じ感覚。これは財布の紐と頭が緩んでいるうちに注文を終えなければならない。
店の前で並びながら眺めていたプリンもついでに行ってしまえと心が叫んでいる。ここを乗り越えれば幸せが待っているはずだ。
色々と緩んでいた私だが、それでもなお「神果卵」(900円)と発語するほどまでには遊びが無く、「素王卵」と「ゆずたま」を購入していた。
「今日が一番美味しいので、せめて一つだけでも今日召し上がってくださいね」と言われて受け取った「水ちょこ」は生クリームではなく水でカカオを練り上げたチョコだそうだ。だから「水ちょこ」なのかと納得。プリンと共にクーラーボックスに納めて宿泊先に持ち帰った。
カカオの種類と含有量が示された紙が入っていたが、見た目では全くわからない。そのうち箱を何気なく180度回転させ、それを元に戻し、紙の向きを考えずに入れて蓋をして、などと繰り返しているうちに完全にわからなくなった。
小さいチョコを、コーヒーをかき回すヘラで切り分けて、同伴者と利きチョコ合戦である。「これは苦いから多分パーセンテージ高いやつ」という程度の判定しかできない杜撰な舌。作った人に謝りたい。ただ、どれも生チョコのような食感とカカオの強い味わい深さがあり、これが水で練られているとは…という驚きがあった。
さて、お次はプリン「素王卵」と「ゆずたま」である。ホテルの備品にスプーンが無かったので、さっきのヘラで真ん中に筋を入れる。ここからこっちは私のだからねという主張をするためにこの作業には細心の注意を払う。そして、1本のヘラでかわるがわる食した。
「素王卵」はなめらかで卵らしい卵味のプリンだ。新潟の素王卵の全卵が使われている。表面はツヤツヤで綺麗。プルプル揺れるプリンではなく、腰が入ってしなるような揺れ感をもつ。優しい甘みと卵の風味で美味しい。まずはキャラメルをかけずに食べ、半分ほどでキャラメルをかけたら、これこそよく知っているプリンという味になった。
「ゆずたま」は柚子を飼料に入れた鶏が産んだ卵を使って作られたプリンだ。これが本当にほんのり柚子風味で驚く。鶏たちが柚子風味の飼料を美味しいと感じて食べてくれていると嬉しい。
ピンクのペンギン型の容器はキャラメルソースで、推奨されてもいないのに最後は「ゆずたま」にもかけて食べてしまった。ブラックコーヒーと一緒にいただいたせいで甘みを欲してしまったのだ。許してほしい。
それにしても、この箱に貼られたシールのイラストの可愛さよ。えくぼのある手と、ちょんとした鼻の横顔がキュートだ。このシールは注意深くはがして2021年版将棋手帳の内側に貼った。
ここで詳しくは書かないが、この箱を入れてくれたポリエチレン手提げ袋には、洒落た部分に印刷があり、文字も可愛い。ぜひ購入して確かめてほしいと思う。
(つづく)