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将棋めしとおやつの旅・大阪市福島区(9)レストランイレブン

 関西将棋会館のビルに入っているレストランイレブン。
 対局中の棋士が昼食や夕食に出前をとる店のひとつで、関西の将棋めしの筆頭とも言えよう。当然押さえておきたい。
 明るいうちに外から下見をすると、店の造りもメニューも懐かしい洋食屋という雰囲気。ステンドグラス風の店内装飾が昭和の古き良き時代を思い出させる。個人的にとても好みだ。

 さて、夜の部は17時開店で、既に1時間ほど過ぎている。夕食にはちょうどいい時間となった。
 串ぼうずのテイクアウト(と、豊島先生のグッズ)の袋を両腕にぶら下げたまま入店するのは気が引けたのだが仕方がない。一番奥の席に座った。

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 注文は旅に出る前から決めていた。一口ヘレカツである。
 要するにヒレカツだと知ってはいる。もちろん食べたかったのだが、何より「へれかつ」と人前で発音してみたかった。

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 からしとソースをつけていただく、丁寧に衣をつけた手作り感のある揚げたてのヒレカツ。いや、ヘレカツ。
 付け合わせのにんじんのグラッセは甘く風味が良い。

 しかし、これだけでは終われない。あれを食べないことには、ここに来る楽しみも半減と言っても過言ではない。

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 バターライスだ。海老と玉ねぎ、にんじん、ピーマン、卵が主な具材である。
 美味しい。但し、なんと表現するか難しい味である。主軸にあるものが醤油でもケチャップでもコンソメでもないようで何だかわからない。説明ができない味。でも美味しい。

 もしかして、この味の謎を解くために聡太先生はバターライスをリピートしているのではなかろうか。詰将棋選手権の問題よりも難しそうだが、彼に解ける日は来るのだろうか。
 ちなみにデフォルトのバターライスにマッシュルームは存在感丸出しで入っている。

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 昭和な店内で昭和な洋食に舌鼓を打つ、なんという満足感。念願の「へれかつ」も、どもらずに言えた。至福である。

 一人旅の残念なところは、色々食べてみたくても「それ一口ちょうだい」という手が使えない点である。
 離れたテーブルでポークステーキを美味しそうに召し上がるお客様を横目で見ながら、里見咲紀女流並みの胃袋のキャパがあればテーブルいっぱいに注文するのにと悲しい気持ちになってしまう。
 でも、これ以上は無理だ。座席に置いた串ぼうずのテイクアウトの袋も「私をお忘れではありませんよね」と語りかけてくる。

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 あれもこれも食べてみたい気持ちと胃袋の限界との葛藤を振り切り、完食して店を後にした。

 数年後に関西将棋会館が高槻市へ移転する際に、レストランイレブンが一緒に移ることは無いらしく、これらのメニューの将棋めしとしての役目の終わりが日々近づいてくる。寂しい。

 次に訪れる機会があれば、したり顔で「ちんとんしゃん」と発語するつもりだし、一口と付かない方の「へれとんかつ」をガブリとやってみたい。

(つづく)

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