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将棋めしとおやつの旅・神奈川~愛知(2)開化亭

 愛知県までノンストップで行ける距離ではないので、昼食の場所を考えた。
 JT杯東海大会に出場される永瀬拓矢王座のご実家である『川崎家』に寄るのが応援の意味もあり最善手かと思った。しかし、開店と同時に入店したとしても、宿泊地に着く頃には陽が沈んでしまう。泣く泣く諦め、もっと遠くに設定することにした。
 そこで例のマップで見つけたのが『開化亭』だ。箱根の岡田美術館に併設されていて、岡田美術館杯女流名人戦の対局場のひとつとなっている。

 さて、『開化亭』は岡田美術館の駐車場から足湯を横に見ながら進み、美術館入口をあっさりスルーして、壁に囲まれた細い通路を抜けた先の急な坂の上にあった。

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 画像ではなだらかに見える坂だが結構きつい角度である。女流棋士がここを草履で登れるのだろうかと心配したが、女流名人戦は洋装対局だった。

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 登り切る少し手前に、温泉の熱い湯を数秒で冷ます装置、湯雨竹があった。これを見ながら、日ごろの運動不足で上がった息を整える。

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 紅葉にはまだ少し早いがこの佇まい、風流である。
 
 中に入るとカウンターの席に案内された。
 注文は既に決まっているが、検分の時に里見香奈女流や加藤桃子女流がしていたように、膝の上にメニューを広げて目を通す。ご満悦な私の様子を撮ってくれるような気配りを同伴者が持ち合わせていないため、仕方なく自分でメニューを上から撮り、豆アジ天うどんを注文する。

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 対局場となったところはどこなのだろうと見まわすと、窓の外の池の前に家族連れの姿があった。どうやら奥に3人以上のお客様を案内する飲食スペースがあり、そこから池の前に出入りできるようだ。

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 うどんが来る前に、対局場探検である。
 廊下(橋)を渡って、右手に池を臨む回廊、左手には4人掛け掘り座卓の飲食スペース。

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 硝子戸を開けて池の前に出る。この景色を見ながら里見香奈女流と加藤桃子女流が対局されたのだろうか。対局のあった1月は寒々しい景色だったことだろう。

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 昭和初期の住居を改装した建物とのことで、硝子戸は木枠でできていた。古い建物好きの大好物、景色がゆがんで見える硝子である。とても嬉しい。

 左手の飲食スペースは2部屋あり、奥が対局場となった場所だった。

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 対局の際、掘り座卓は畳で埋め、座卓は別の部屋へ動かされるのだろう。この部屋の向かって左側に加藤桃子女流、右側に里見香奈女流が座って対局したのだ。感激でじわじわと熱くなる。
 次に来るときは絶対にカウンター席ではなくこの部屋を希望しなければ。そして加藤女流が召し上がった花豆のパウンドケーキもいただくのだ。

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 カウンター席に戻ると、名物の豆アジ天うどんが提供された。

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 「豆」という名の通りアジは小さいが4枚ものっている。温玉は味がついていないので、うどんに入れるよう説明があった。

 衣サクサク派の私が、断腸の思いで画像や動画を撮ったので見ていただければ幸いだ。
 おだしの効いたところに梅干しの酸味がさわやかにプラスされたつゆ、柔らかく細めのうどんが食べやすい。豆アジ天の下の玉ねぎスライスは食感と味の変化に一役買っている。

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 8割ほどいただいたところで温玉を滑り込ませ、麺に軽く絡めたら絶品である。あっという間に完食であった。

 極寒の1月、このさわやかで温まるうどんを両対局者が召し上がったのだ。同じものをいただけてとても嬉しいと顔をほころばせていると、「美味しい!君に任せていれば美味しいものが食べられるんだね!」と、同伴者が満面の笑みで言った。
 タイトルホルダーと挑戦者に提供されたメニューを中心に組み立てた旅程(献立)だから、おそらく美味しいものは食べられるだろうが、問題は2泊3日しかないことだ。あなたにもどこかで無理はしてもらうことになるが、果たしてついて来られるかな…と思ったが口には出さないでおいた。

(つづく)

 

 


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