将棋めしとおやつの旅・大阪市福島区(8)関西将棋会館
「西の長崎、東の佐倉」と言えば蘭学の聖地だが、将棋界では「西の福島、東の千駄ヶ谷」だそうだ。
大阪に行くのならこの地は外せない。しかも数年先に移転が決まっているのだから今のうちに訪れておきたい。
夕飯のための外出に合わせ訪れてみた。将棋会館の売店が閉まる時間は役所もびっくりの17時である。商魂たくましくない。
ビルに入ってすぐの右手に将棋会館売店はあった。棋書や扇子が並んでいてお菓子や飲み物は無い。棋士の先生方は館内の自販機を利用するか、福島駅前のファミマあたりで購入してから入館するのだろう。
売店を見渡してみた。木村九段ファンの退職した先輩へのお土産にAbemaトーナメントのチーム木村Tシャツを購入して、あわよくば家に送る荷物のプチプチ代わりにしてしまおうという失礼な企みは崩れ去った。木村のキの字も見つからない、と言うより、アベトナグッズ自体、クリアファイルしか見当たらない。シーズンが過ぎてしまったからだろうか。
扇子は、羽生先生と渡辺先生、永瀬先生のものは置かれているものの、関西の先生のものに滅法手厚い。ここは関西将棋会館。当然だ。
木村九段ファンの先輩用に、豊島先生の揮毫タオル、アベトナクリアファイル、SHOちゃんと福島区キャラの入ったボールペンを選んだ。
豊島先生といえば、木村先生の初タイトル獲得に貢献してくれたお方だ。王位を渡してくれた恩がある。何らかのお礼が必要だと常々思っていた。このような形で返せるのかどうかは知らないが、選んだ訳を話せば先輩は納得してくれるだろう。
自分用にも、恩がある豊島先生の揮毫タオルとSHOちゃんボールペン、女流棋士トランプを購入した。なかなかマニアックな一品、ボブルヘッド人形は見るだけにしておいた。
なお、先輩へのお土産は大阪からレターパックで送ったところ、私の帰宅日にはすでに届いていた。速い。
家への荷物は、自分用の豊島先生揮毫タオル「随所作主」を恐れ多くもパッキン代わりにして、パティスリークロシェのアールグレイのクッキー(透明の柔らかい筒状ケース入り)を包んで送ったところ、その文言通り「常に己の主体を失わず」割れも潰れもせずに届いた。立派なタオルはまた畳んで袋にしまってある。
さて、将棋会館のビルの2階は道場になっているという。ちょっと覗いてみたいと思って、1階の警備員さんのいる受付窓口の数メートル手前まで近づいたのだが、勇気が出なかった。
せめて「ウォーズで〇級です」と言えるくらいであれば一歩踏み出せたのだろうが、その先には結界が張られているかのように、入ることが憚られた。
左側に警備員さんのいる受付がある。駒形の鏡を撮ったら映り込んでしまった。
「1階ロビーでの長時間の滞在はご遠慮下さい」とある。当然だが出待ち入り待ちお断りということだ。迷惑なファンになってはいけない。潔く出ていくことにした。
関東住みの自分が千駄ヶ谷の将棋会館より先にこちらを訪れることになるとは思わなかった。これも全て新型コロナのせいである。
(つづく)