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将棋めしとおやつの旅・神奈川~愛知(14)豊市

 「どうまい牛乳プリン」は、どうまい牛乳を使って作られたプリンで、2020年の王位戦第1局で木村一基王位(当時)と藤井聡太七段(当時)が召し上がったおやつである。
 この、どうまいは、ド美味いという意味だそうだ。ド根性やド派手と同じドである。決して北海道米の略称ではない。

 さて、このプリンも下調べしていたが、私の検索レベルが昆虫並みに低かったため、どこで買えるのかわからなかった。
 ホテルアークリッシュ豊橋内にはホテルメイドのなんやかんやを扱うショップがあるのではないか、椿山荘のバームクーヘンのように、フロントの前あたりのカフェのショーケースにこのプリンが鎮座しているのではないか、などと予想していたが、何しろこのホテル、フロントが見つからない。
 怪しまれない程度にホテル内をうろついたが、プリンを販売していそうなところを見つけることができなかった。
 後から知ったのだが、フロントは最上階の16階にあったそうだ。なるほど、客のほとんどはヘリで来ると。木村先生も聡太先生も屋上ヘリポートに着いたら上着とネクタイと髪を颯爽となびかせてフロントへ向かったに違いないわけがない。何故16階なのだ。 

 このホテルの3階は、隣の豊橋駅隣接複合ショッピングモール、ココラアベニューと空中回廊で繋がっていた。おそらくショッピングモール内には食料品店が入っていて、「どうまい牛乳プリン」は無かったとしても、この地域で給食に出されているようなどうまい牛乳は置いているだろう。もうそれでいい、どうまいと書かれていれば。そんな気持ちでココラアベニューへと歩を進めた。

 この中にカルディが入っていたので、日頃から買いたかったものを探しに行くが見つからず、がっかりして向かいの店舗を何気なく眺めた。そこが豊市だった。
 豊橋の地産名産やパンなどが販売されており、広めのイートインスペースが併設され、コーヒーとパンをいただくおばさま方が見える。
 豊市のレジカウンターに歩み寄りながら同伴者が指をさした。

「ねえ、もしかしてこれじゃない?」

 カウンターの下はショーケース。下段に「どうまい牛乳プリン」があった。世紀の大発見だ。
 この旅で初めての同伴者の活躍に感激でむせび泣きそうな私であったが、この時視界の端に驚くべきものが入ってきた。


 源氏和牛カレー。

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 豊市でも源氏和牛カレーは食べられたのだ。825円とは安い。
 THE GARDENではサラダ付きで1,100円だった。

 主婦のそろばんは止まらない。

 ホテル内で飲食して1時間半の駐車場無料券がもらえた。
 そのおかげで時間を気にせずプリン捜索に来ることができた。
 本来の駐車場料金は30分150円かかる。
 ということは、むしろこの場合は得ではないだろうか。
 そんな瞬時の損得計算にかまけて、同伴者のプリン発見の手柄を褒めたたえる言葉は、いささか棒読みとなってしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 それにしても、このプリンが瓶入りとは想像していなかった。牛乳プリンなのだから、牛乳瓶のような容器に入っていても不思議ではないのに。
 対局者にはプリンアラモードとして提供されていたので、丸くて裏にプッチンがついているか、ついていなくても横から見て逆さ台形のものだと勝手に思っていた。瓶に入っていたら、逆さに出せない。

 プリンの興奮とカレーの動揺で販売中の画像は撮りそびれたので、持ち帰った後の様子をご覧いただきたい。

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 保冷剤を多めに入れていただき、車内では発泡スチロール箱に入れて持ち帰って、しっかり冷たいまま開封したというのに、同伴者は「下の方に黒くて細かい粒々があるから傷んでいるのではないか」と怖がっている。気の毒に、バニラビーンズを知らなかったそうだ。妻からお安いプリンしか与えられていなかったのだろう…。

 さて、「どうまい牛乳プリン」は滑らかな食感ではあるものの、トロっとし過ぎていないので、スプーンの上でしっかり形を保つ。卵感よりも牛乳感の方が強いかと予想していたが、どちらも程良い主張がある。甘みはしっかり。カラメルソースの苦みもしっかり。いずれも濃くて美味しい。
 バニラビーンズのことは黙秘し、夫の分まで食べてしまえば良かった。チラッとそう思ったことは内緒である。

 こちら、お土産として是非お勧めする。ただ、瓶なので重さがある。保冷材もたくさん入れてもらうと更に重くなる。紙箱のままで持ち帰る場合は慎重に。

(つづく)

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