グルーヴのチカラ
ヒット曲を書いて、誰かに曲を提供して、ドラマのタイアップを取って、印税を貰いてえ。コンペで選ばれたい。どうやったら人に聞いてもらえるんだろう?どうやったらyoutubeの再生回数が伸びるんだろう?なんであの人はろくに楽器もできないし理論も学んでいないのにコネで曲を書いてもらって売れ(おっと失礼)そんなことばっかり考えていて 私は音楽の本質をすっかり忘れてしまった。
安定した正社員を捨ててまでフリーランスのミュージシャンになり、演奏が楽しくて、バンドの仕事はおろかホテルの片隅で1人ピアノを弾くだけの仕事も、ニヤニヤしながらやっていたのに、いつのまにか私の演奏技術、作編曲の技術、そして何より音楽を愛する気持ちはいつの間にか、他人に勝つための道具になっていた。
音楽ってなんだ…?なんで私はこの仕事をしてる…?ライブが楽しくない、レコーディングしては再生回数ばかり気にする日々。否定され、自信を失い、否定した人に認めてもらおうと間違った方向で頑張る日々。
そんな時に何気なくEarth wind and fireの、September を聴いた。
泣いた。
毎週末死ぬほど演奏して、寝ていても勝手に指が動くほど染み付いた、もはや飽きているはずの曲。
音楽が生きている、そこにはグルーヴがある。音楽の本質がある。
いや、Earthがどんな気持ちでSeptember をレコーディングしたのかは知る由もないし、もしかしたら嫌々やってたのかもしれないし、それはEarthのメンバー以外わからないけど。
毎週演奏しているくせに歌詞の意味も知らんし、コーラスで歌っているくせに英語がわかっていないけど、なんだこのグルーヴは!身体に響くこのリズムはなんだ!そして妙にダサいサイケなPV。泣いているのに体が勝手にリズムを刻む。音楽の本質ってグルーヴなんじゃないか?
きっと原始人たちはハーモニー楽器なんて持っていないからその辺にある何かを叩いて歌って踊ってたんだと思う。
とすると音楽の本質はグルーヴだ。リズムと歌と踊りだ。それが音楽の最も本能的な部分なのではないか。
本当は知る人ぞ知るよく考えられたニヤリとする対旋律とか作曲者しか知らないクソ細かいフレーズみたいなギミックなど要らない。グルーヴがあれば人は踊るんだ。体だけでなく心も踊る。原始人はピアノもギターもバイオリンも持ってない。だけど多分踊ってた。
人間の身体には心臓がある。ハートビートを刻み、足で大地を踏み鳴らして踊る。そもそも人間はグルーヴと共に生きている。
なにも音楽というのは特別なものでもなんでもなくて、人間が生きているのと同じぐらい自然なものだったはずだ。それが時代とともに商業的な側面が強く出てしまっているけど…。
人は音楽、グルーヴで踊り、時に涙を流す。大事なことを忘れていた。大事なことを思い出させてくれた。グルーヴのチカラは本当に偉大だ。
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