クリームソーダの記憶
はじめて書きます。
大学4年生のほゆです。
今日はずっと前から予約していた
「旅する喫茶」さんに行って参りました。
旅する喫茶さんではクリームソーダ職人
恒川さんが全国を巡って、
クリームソーダを提供されています。
私はこの方の作るクリームソーダのビジュアルが心底好きで、レシピ本や投稿されているお写真を拝見しながら、自粛中はいそいそと家で
クリームソーダを大量自作する日々を
過ごしました。
なぜこんなにも執着して作っていたのか
ずいぶん謎が深まっていたけれど、
今日食べた青いクリームソーダに
雨続きで久々に晴天な空が透けているのを見て
いつの日かの
クリームソーダを待ちわびて
月曜日を指折り待ちぼうけていた
自分を思い出しました。
私は小学低学年の頃、
超がつくほどの内気な子でした。
授業中トイレに行きたくなっても言い出せず
我慢のしすぎで膀胱炎になったり、
休み時間に隅で1人こっそり
本を読んでるフリをしたり。
家庭の事情で小学校入学と同時に
本家に預けられましたが、
そこでも周りの顔色を伺って
姿勢を崩せないような子でした。
そんな毎日の中で
父の仕事が休みである月曜だけが
私の心の拠り所でした。
父は定休日の前日、仕事が終わった夜更けに
本家にいる私を迎えにきてくれます。
日曜の夜は父に会える喜びで
なかなか寝つけませんでした。
あの頃は、トントンと父の歩幅の音が
ドアの奥から聞こえてくると、
今まで冴えていた瞼を合わせわざと眠ったふり。
音を立てないよう部屋に入り、
ベッドに眠る私のおでこを撫でた後
よいしょっと私をおぶる父が大好きでした。
夜更けの実家に帰る車の中で
わざとらしく今起きたふりを披露する私。
私が語る近況に程よく合いの手を入れながら
運転する父の横顔。
父の作った大雑把な朝ごはんの匂いで
目覚める朝。
月曜日は私にとっての幸せが詰まっていました。
特に私が好きだったのは、
放課後学校に迎えにきてくれた父と向かう
ブルーシールのクリームソーダ。
毎度、父はなにがいい?と聞いたけど
私はクリームソーダを頼み続けたし
父はラムレーズンのコーンアイスが
お決まりでした。
このクリームソーダを食べ終わるまでは
父といられる。
私の話にだけ耳を傾けてくれて、
私が映っている父の目を眺めることができる。
この日だけは父へのお土産話の為に
学校で活発に発言したり
休み時間にキックベースで
男の子を負かしたりしました。
これを食べ終わったら、
また本家で月曜日を待たないといけないと
痛いほどわかっているから、
クリームソーダはいつも本当に
ちょっとずつ口をつけました。
できるだけゆっくり、この一口を口に入れたら
少し増えていますように、と
とんでもないお願いをしたりしながら。
あの頃感じたクリームソーダの味は
頭が痛くなるほど甘く幸せで
グラスの底が見えるくらいに少なくなると
なんだか切ない不思議な甘味でした。
きっとあの頃の名残で
クリームソーダはこれからも
私にとって特別な甘味であり続けるような
気がします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?