図5

就活の二次関数理論

この歳になってもよくOB訪問を受けますが、たいてい学生の悩みは「どうやってESと面接対策をすればいいか」に尽きる印象です。なのでそのステージで悩んでいる学生には、僕が就活中に編み出した就活の二次関数理論を渡してみる機会が多い。今回はその理論について書いてみます。

※当たり前のことを言いますが、すべて個人的な仮説です。

採用には3種類ある(とおもう)

そもそもESを書くのも面接するのも、すべては内定を勝ち取って採用されるため。とすると「そもそもどうすれば採用してもらえるか」から逆算して考えてみる。僕の圧倒的偏見によれば、採用には3種類あるように思います。

①コネ採用
説明不要ですね。現実として存在するはずなので一応入れてます。コネに文句垂れる人もいますが、企業にとってはその子を採用するだけで数億のビジネスが確約したりしますからね。企業戦略として成立するなら活用すればいいし、もともと採用枠はちょっとだけ少ないと考えで臨むのが健康的です。

②イチバン採用
いわゆる“日本一・世界一になりました”系学生です。挫折を乗り越えて努力と工夫でイチバンを掴み取る力があるということなので、そのまま社会生活でも高い能力や精神力を発揮する期待が持てます。(もちろんESや面接でとんちんかんなことを言ってたらアレですが)企業としては魅力的な人材に映るでしょう。

③納得&共感採用
コネもない。イチバンにもなれない。僕のような“ほとんどの学生”が内定を勝ち取るためには、いかに面接官に「わたしがなぜ御社に入りたいか」に納得&共感してもらえるかが鍵だと思っています。言い換えれば、「なんであなたはわたしの目の前に座っているんですか?」と面接官に言われた際、「いやあ、実はかくかくしかじかで…」と表情豊かに返した結果、「そりゃあ目の前に来ちゃうわ…あなたのこと応援させて」とその企業に辿り着いた理由に面接官が納得し、あなたの人生に共感してもらえている状態を目指すということです。

ちなみに僕は企業の採用人事に関わったことはないです。なので完全に想像の域を出ないことをご留意ください。ただ僕はこの納得&共感採用で電博リクルートの内定をもらえたと思っているので、それなりに有効なんじゃないかとは思います。

人生を一次関数で話したがる問題

さて、ここからは懐かしき「○次関数」を援用していきます。ご安心ください、僕は文系で数学はさっぱりでした。単なる比喩表現としてご笑覧ください。

これがいわゆる「一次関数」ですね。

図1

横軸は時間ですが、縦軸がなんなのかは僕にもわかりません。(なんかすみません。説明に支障はないので先に進みます。)

なぜこの図を出したかというと、多くの学生は自分の人生を一次関数で話しすぎと思うからです。たとえば広告志望のAくんがいたとして、彼の言い分を一次関数上にプロットしていくと…

図2

極端にデフォルメしましたが、でもこう話す学生っていますね。まるで広告に入るために生きてきました、と言わんばかりに一直線にエピソードをまとめて話すパターンです。

すると何が起こるか。「大学名や所属する団体が違うだけで話してる内容はほぼ一緒」という学生が大量生産され、面接官からしたらどれが誰だかわからなくなる(つまり誰でもいい)ように思います。

図3

こうなると、誰も印象に残らない。という以前に「就活ではこう話せ」と指導を受けたんじゃないかとさえ疑いたくなる。「この子は自分で考えて話せないのかな?」「不安で一応うちを受けてくれたのかなあ」という評価にもつながりかねません。

僕は就活本と呼ばれる類のものを読んだことがないのでわかりませんが、「矛盾のないわかりやすいストーリーで人生のエピソードをまとめよ」と書いてあるのかと疑ってしまいます(違ったらごめんなさい)。

しかし当たり前ですが、これまであなたは広告に入るために生きてきたわけがない。つまり一直線にあなたの人生や志望動機を語れるわけがない。なのに、就活ではそう話すもんだと学生は錯覚してしまっているようにも思います。

その結果、野球にたとえるなら全員が投球フォームを矯正してストレートを投げ込んでしまう状態です。当然身体に合わないフォームなので球速が出ません。120km程度の打ちごろのストレートをど真ん中に投げ込み、面接官に綺麗に打ち返されてしまう。(学歴補正が入ったとしても、せいぜい球速+5kmくらいでしょう)

もちろん、生まれてこのかた広告に入ることが決まっていたかのような人生を歩んできた学生もいます(たとえば親がエンタメ業界で、人生の節々で面白いことを仕掛けまくってきたタイプなど)。そういう子は堂々と150kmのストレートを投げ込んだらいい。つまり前述したイチバン採用に近い人材です。一次関数上で勝負するというのはそういうことで、とにかく説得力ある実績のエピソードとそれに紐づく能力で評価されていきます。

僕みたいな学生には一次関数上で戦うのは厳しい。それが就活当時の感想でした。

曲がった人生を語る「就活の二次関数理論」

では、どうするか。自分は広告に入るために生きてきたわけではありません。ですが、広告に入りたいと思ってしまったのも事実。つまり“人生の予定を狂わせて(曲げて)しまった出来事”があなたの中にきっとあるはずなんです。それを正直に話していくと、人生の軌道は二次関数的になるのではないでしょうか。

図4

字数の関係で乱暴に書きましたが、上記は実際に僕がESや面接で話した要約です。よくいますよね、国際ボランティア系学生。まさに僕もその一人で、普通にいけばNPOなどに就職しそうなものです。ですが、実際にボランティアをしてみて思ったのは「このままじゃ、ずっとこのままだ」ということでした。この手の問題は多くの人が関心を寄せて行動しなければ変わらない一方、ほとんどの人は興味も関心もありません。だから遊び心とアイデアが必要だ。本気でそう思ったので、広告志望へと切り替えました。

僕は広告に入るために生きてきたわけではないので、人生を狂わされてそこに向かわざるを得なかった個人的な原体験と思考プロセスがありました。だから関数で表すと、どこかで急激にカーブしている。この部分こそ「志望動機」であり、その手前の部分が「元々の性格や環境」や「ガクチカ」、そして先の部分が「会社に入ってやりたいこと」になります。

図5

正直に語れば、人生は二次関数の曲線を描くはずです。結果、ほとんどの人が辿らない軌道を通らざるを得ない。すると面接官の印象に残り、勝負はそのカーブの切れ味になります。

極端なことをいえば、僕は図で示した3つのエリアだけエピソードを整理できていればあとはフリートークで望んでもいいんじゃないかと思います。自分の人生が“辻褄の合ったカーブを描いている”ことを自覚する。一次関数的に矯正することもできましたが、それをしていたら確実に埋もれていたと思います。

就活の二次関数理論のメリット・デメリット

こちらの理論ですが、繰り返しますが個人の偏見による仮説です。なので「こんな考え方もあるのね〜」くらいに思ってもらえればいいのですが、いくつかメリット・デメリットがあるはずなので思いつくままに羅列します。

メリット① 印象に残り、埋もれにくい
その理由はこれまで書いた通りです。大企業ほど数多の学生が受ける中、奇抜な見た目や素行ではなく中身とエピソードで差をつけて印象に残す、というのは大事な生存戦略だと思います。

メリット② 納得&共感採用の土壌で勝負できる
最大のメリットはこちらのほうで、人生のカーブを説明するということは、ときに迷い、葛藤しながらも、最後は自らの強い意志で企業を志望するに至った理由を語るということです。聞き手は嘘のない人間らしい想いに感情移入し、意志を持って行動に移せる力も感じながら、話し手を応援したい気持ちが自然と芽生えやすいと思います。

この構造は、恋愛ドラマを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。最初からうまくいきそうな(=一次関数的なストーリーの)カップルの話なんて、予定調和すぎて応援したい気持ちが湧かないと思います。だから必然的に、恋愛ドラマは二次関数的になる。最初はトラブルまみれでどうなるかと思った男女が壁を乗り越えて結ばれていく話には、つい感情移入して応援したくなります。

面接官も人で、人は人の想定外な物語に惹きつけられます。あなたを応援したい、という気持ちは、あなたと一緒に働いてみたい、というラブコールでもあると思います。

メリット③ 自分らしさを損なわずに就活できる
視点を面接官ではなく就活生本人に移せば、無理な嘘をついて人生を一次関数的に改造する、という作業はとても苦しいです。そして話し方も、まるで暗記した内容を読み上げるような非人間的な態度になってしまいます。そこまでして落とされた日には…悔やんでも悔やみきれません。

嘘なく自分らしく人生を語れる、というのは本来気持ちが良いものです。話にも自然と熱量が乗っかり、そのまま面接官に伝染します。それを感じ取るためにESだけでなくわざわざ面接をするのだと思います。

デメリット① そういう仕事ばかりじゃないと言われがち
大きなカーブを描いてその企業を目指すくらいですから、ある程度「会社でやりたいこと」が狭い(見方を変えればこだわりがある)ように思われます。僕の場合、社会貢献的な仕事をつくりたいと言ったので「そういう仕事ばかりじゃないよ…?(NPOに行った方がいいんじゃない?)」と面接官に言われた記憶があります。

図7

僕のこの質問に対して“やりたくもなかったけど、他人の課題に向き合う熱量に当てられて、こんなことをした経験がある”というエピソードを話しました。そして「僕のいう社会問題はつまるところ“人が抱える課題”だと思います。そしてあらゆる企業は社会の公器で、社員に支えられて、それぞれが強い課題意識を持って取り組まれている。だからその熱量に当てられて、その人を助けたくなっちゃうと思います。」と結びました。

他にも返す刀のいいロジックがあると思いますが、僕の場合は「自分のやりたいことは拡張的である」という返しでした。なのでたとえば、笑いの力で日本を面白くしたいと言って、「笑わせる仕事ばかりじゃないよ」と返されたら、「笑いの力って、つまるところ感情を動かす力だと思うんです。自分はその感情を動かす大切さを痛感してきたし、どの感情も大事だと思った上で、最後は笑ってほしいなと願うように思っています。」と返してみる。…どうですかね。

デメリット② “ついで就活”に思われる可能性も
嘘のない就活ができていれば本来心配はないのですが、たとえば僕が「本当はNPO志望の学生で、広告を受けたのは内定自慢のための“ついで就活”」だったとします。その場合も「本当はNPOに行くはずが、かくかくしかじかで広告を目指すことに…」とストーリーで組み立てることができてしまいます。というよりも、そう話すことでしか志望理由を語れない状態に近いでしょうか。

特に一次面接では、面接官は大量の学生を捌きます。本当に第一志望で受けていたとしても、二次関数的に人生を語ることで「こいつはついでに受けたな」と面接官に判断されてしまうかもしれません。ここはどうしようもない運も働きますが、ついで就活勢とは確実に一線を画すべく、短い時間できちんと熱量と思考量を伝え切る。その準備を怠ってはいけません。

ということで…

就活の二次関数理論、いかがでしたでしょうか。当然反論もあるだろうし、いろんな臨み方があってしかるべきです。でないと多様性に溢れるいい人材を見落としてしまいますからね。僕の場合はこう考えた、というものであって、つまるところ自分の頭で納得がいくまで考え抜くより他ありません。

という逃げの一言を添えつつ、あくまでやり方のひとつとしてご覧いただけたらと思います。

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