液体の恋
今日は、今年最初に決めた、週に一度映画を観る日。最近友達からおすすめされた「鍵泥棒のメソッド」を観た。
感想は一言でいうと「お上手」。張り巡らされた伏線が回収されていく心地よさの中に、人が人生をいい意味で踏み外すに至る真実が散りばめられていた。素直にいい映画だった。
映画の中で、恋について女性が語る。「30歳を過ぎるとね、胸のあたりがキューンってなるマシーンが壊れちゃうの。」そうなんだよなあと相槌を打ちながら、今日のnoteはそれをテーマに書こうと思っていた。映画を観終わって、余韻に浸りながらいつものラム酒バーに行く。
ドアの前に立つと、店主とお客さんで話が盛り上がっている。ドアを開けると20代中盤くらいのカップルがそこにいて、ひとつ席をあけて腰を落ち着けた。
このバーはお客さん同士で自然と話が広がることも少なくなくて、だから、自然とカップルの会話に僕も加わった。カップルは積極的に僕に話を振ってくれる。嬉しくも案外珍しいなあと感じた。いい感じのバーにカップルで来たら、2人の会話に没頭するものだ。やりたいことそのままに振る舞って、思ったことを自然体で共有し合うその2人はひどく頑丈に見えた。
お二人はなんというか、頑丈ですね。
口に出して伝えてみる。するとバーのマスターは「どちらかというと"やわらか"くない?」。たしかにそうなのだけれど、そのやわらかさが頑丈に思えたのはなぜだろう。その答えをマスターが提示する。
二人はどちらかというと液体だよね。
そうか、液体か。固体は硬いが、だから壊れる。ひび割れる。しかし液体は、圧力に対してカタチを変える。だからやわらかくて、そのぶん頑丈ともいえる。やわらかさと頑丈さは両立するのだ。
目の前の笑顔が素敵な二つの液体は美しく混ざっていて、なんだか尊かった。付き合った経緯を聞くと、男性側が女性側に一度は振られたものの、再度アタックして実を結んだらしい。そこまでしたのは、キューンときてしまったから。
僕のキューンとする機能は壊れてしまっている。どうすればいいですか、と聞くと、うちはラム屋ですからと一蹴されてしまった。