「一番好きなアーティストは?」と聞かれたら、「ティ」にかぶせるスピードでamazarashiと即答する。
ドン底のてっぺんで希望に中指立てるような歌詞と、暗闇を根こそぎ揺さぶり共鳴し合うような歌声。彼の言う通り「生きることに真面目すぎる」その生き様は、現実のフリをした絶望に真正面からぶち当たって相打ち。「正しさなんていらない」と無様に叫んで戦う姿に、自分を重ねながらいつも応援している。
そんな僕が人に薦めるamazarashiの楽曲を10曲に厳選して紹介していく。
少年少女
好きなアーティストを紹介する時、最初に聴いてもらう曲というのはとても緊張するし慎重にもなるものだ。その点、この曲はちょっとヘビー過ぎるかもしれない。だがそれを一番手に送り出し、あなたの後頭部をぶん殴る。重い過去を振り返るセンチメンタルなストーリーと、絶望の淵を四つん這いで這い回るような救いのない現実の呈示。初期amazarashiの世界観を味わうには絶好の楽曲だと思う。
僕らは現実に打ちのめされすぎて、無駄に強くなったのだと知った。
つじつま合わせに生まれた僕等
こちらも初期の曲だが、2017年に一篇の詩を連ねて再リリースされた。思い入れがあるのだろう。にしてもタイトルが残酷すぎる。そしてAメロからAサビまでを修飾語の積み重ねで持っていく歌詞のストーリー構成がぶっ飛んでいる。本曲に限らず、朗読に抑揚をつけて感情を込めたら歌になってしまったような成り立ちになっている。
雨男
歌詞内容は相変わらず希望もないのだけれど、この頃の楽曲から徐々に明るさが灯り始めたように思う。リスナーに確実に楽曲が届いている手応えが生まれ、俺はこう生きてるよ、と姿勢を通して何かメッセージを発したい。そんな心境の変化があったのかもしれないと知るように思う。冒頭サビの繰り返しが、雨の街に響く残響と余韻に似ている。
しらふ
わいの歌は、わざわざ曲にする必要はないのかもしれない。いつかのインタビューで語っていたように、シングルカットにもアルバムにもたびたび詩の朗読に似た楽曲が含まれる。その中でもこの「しらふ」は、群を抜いたエネルギーを発している。地獄のような実体験(としか思えない物語)から写しとった景色。いや刻まれた光景。禍々しい感情の渦に引き込まれていく。
タクシードライバー
amazarashiにしては相当ノリノリな曲のはずで、ライブで聴くと身体が自然と揺れる(のは大抵僕だけだったりする)。歌詞内容は相変わらず哲学的だが、サビのアップテンポな畳み掛けが心地よい。常闇を疾走していく。
エンディングテーマ
どうしたらこんな歌詞が書けるのだろう。どの楽曲を聴いても思うのだが、ボーカルはこの曲をつくるにあたって実際に死んでみたのかもしれない。人が死の間際に垣間見る深淵に手が届いている。そんな景色が眼前に広っては、走馬灯のように散っていく。
ひろ
「amazarashiで好きな曲を3つだけ挙げろ」と言われたら、頭を散々掻きむしったあと、今から紹介する3曲を挙げる。1曲目の「ひろ」はamazarashi結成前にバンドを組んでいた友人の名前だと、どこかで見た記憶がある。本人の想像を遥かに超えた現実を生きることになった彼から、あの日の友人に宛てた手紙のような歌。ライブで一度だけ聴いたとき、僕ら観客に向けては歌っていなかったように感じた。それでいいし、それがいい。Aメロからの転調、そしてAサビと三段構えのメロディー構成が美しい。
終わりで始まり
ベスト3の2番手「終わりで始まり」は、amazarashiの楽曲の中でもっとも強がらず、かといって弱がらず、等身大のまなざしで前を見据えた歌だと思うのは「いつもの帰り道ふと 見上げたいつもの夜空 / なぜだか あの頃とは違って見えたんだ」という歌い出しのせいだろう。いつかのインタビューで本人も「自分がとてもいい状態の時にできた歌です」と語っていた。人生と戦ってきた人。世界と葛藤してきた人。真剣に生きてきたすべての人への応援歌だと思う。
未来になれなかったあの夜に
最新曲で、自身もファンと公言する横浜流星さんの出演で話題となった楽曲がベスト3最後の1曲。ここまで到達した方は、紹介してきた曲をもちろん全て聴いていると思うので、最高のメッセージを受け取る準備ができている。自分には、これしかできなかったんだ。上手に世の中を渡り歩いてチヤホヤされる人々を脇目に、無様に駆け抜けてきたamazarashiだから届けられるメッセージがある。生き様、という圧倒的オリジナリティの強度をまざまざと思い知る一曲。
闇の中~ゆきてかへらぬ~
おまけにして隠れた最大の名曲。まだ「あまざらし」という平仮名名義で活動していた頃の楽曲。絶版になっているのでyoutube音源しか見当たらない。まだ売れるずっと前の、ヒリついた感受性むき出しの歌詞とドスの効いた歌声が胸に刺さる。
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以上、僕からお送りするamazarashiオススメ10選でした。異論は認めます。真剣に生きるって、かっこいい。
P.S. 僕のブログはこの記事のアクセスが圧倒的に多い。みなさんと友達になりたいです。2023年現在の僕にとってのオススメはまた変わるのだけれど、トップ10はあえて更新せず、他のオススメも曲名だけ並べておきます。
*ロングホープ・フィリア
*ロストボーイズ
*かつて焼け落ちた町
*1.0
*命にふさわしい
*美しき思い出
*無題
*僕が死のうと思ったのは
*たられば
*さくら