【8月29日尋問】なぜ安優香さん裁判では11万人の署名運動が行われたのか。裁判報道のあり方を考える
筆者は大阪地裁で係争中の「聴覚障害児の逸失利益をめぐる裁判」に大規模な署名運動が行われているのを知り、取材することになった。ひとつの交通事故の民事裁判に、11万人という規模の署名が集まるのは異例ではないか。裁判の経緯と、問題がどう拡大したか、その報道のあり方について、書いていく。
これまでの振り返り
この裁判について、原告・被告双方がどのような主張をしているかは、様々な新聞、テレビ局が報じてきた。2018年2月1日に大阪市生野区で起きた工事用車両による交通事故で亡くなった当時11歳の井出安優香さんが、聴覚障害を持っていた。安優香さんの遺族が損害賠償を求めて2020年1月21日に起こした民事裁判で、「聴覚障害を理由に逸失利益を低く算定するのが妥当だ」とする主張と、「それは差別だ。健常者と平等の金額にすべきだ」とする主張があって、ここが争いとなってきた。
交通事故の損害賠償額において、事故に遭わなければ将来得られた逸失利益は、最も大きな比重を占める。逸失利益は現在の基礎収入を元に算定され、収入のない未成年者の場合は将来の基礎収入を元に算定されることになる。しかしながら、障害があると逸失利益が低く算定される場合が殆ど、重度障害者では「ゼロ」のケースも。このことを知っているのは保険実務者と法律家のみで、それ以外の人は多くの場合、自らが被害者になって初めて知ることになっていた。安優香さんの遺族もそうだった。
筆者も2022年2月に大阪地裁で被告側準備書面を閲覧した。すると、「確かに、平等には賛同する。しかし~」というようなロジックが多く、「聴覚障害者は稼げない」という見方を事故死した安優香さんに当てはめることの妥当性を立証しようとする主張が展開されているのだ。
被告会社が持ち出すのは、「損害賠償制度の公平な負担の原則」だった。被害者側にとっても過小な賠償額にならず、加害者側にとっても過重な負担にならないように、公平な負担をするという原則だ。そして、「将来このくらいの収入になる」という高度の蓋然性が立証できない場合は、被害者側に控えめな算定をすることもルールになっている。被告会社は、「あくまでも損害賠償制度の維持を考えたものであり、逸失利益を低く算定したとしても、それは安優香さんの将来を否定したことにはならない」と繰り返していた。
これが遺族の怒りを買うことになったのは、報道の通りである。「娘の将来を否定された」という激しい被害感情に加えて、被告側準備書面について、「被告側弁護士と保険会社は、聴覚障害児者の教育や就労、合理的配慮や差別の問題について、あまりに無知であり誤解が多く、偏見を強調して意図的に支払保険料を抑えようと試みている」という印象を遺族は持った。被告側主張の根拠は、「9歳の壁」という、「聴覚障害があると知能が9歳の水準にとどまり将来社会不適応を起こす」という古い学説だった。これに対抗しようと、遺族は「安優香さんは将来働けていた」ということを証拠(その中には安優香さんの書いた作文もあった)とともに立証しようと試みるようになった。安優香さんの能力に加えて、聴覚障害児者への教育・就労についても、安優香さんの通っていた大阪府立生野聴覚支援学校や聴覚障害者を多く雇用するパナソニックの資料ほか多数の証拠とともに反論を重ねていった。
訴状によると、遺族は当初から、逸失利益については2018年の一般平均(497万2000円)で算定するよう訴えていた。被告側は2020年3月の第1回期日で請求棄却を求め、7月1日の準備書面で遺族に安優香さんの聴力データの提出を求め、8月21日の準備書面で国が昭和32年に定めた労働能力喪失率の表を基に「聴力4級相当で労働能力喪失92%」とし、「逸失利益を一般女性平均(382万6300円)の4割(153万520円)に」と主張。「9歳の壁」が出てくるのはこのタイミングで、8月24日の準備書面。遺族の反論を受け、被告側は2021年9月29日の第9回期日で「2018年の聴覚障害者全体の平均収入(294万7000円)を、安優香さんが将来得られた基礎収入として算定することにする」と変更した。
これを被告側弁護士や保険会社の目線から見れば、判例に沿った相場を粛々と受け入れ、立証する必要のないことを立証しようとはしなくてよいにもかかわらず、ということだ。「障害者差別だ」という遺族の反論について、被告側準備書面では、「そんなつもりはなかった」「さすがに4割では酷なので、バランスを取って」というトーンが繰り返される。2022年2月21日の第11回期日に合わせた2月4日被告側準備書面では「原告は、過剰に平等を強調して、加害者側に過当な負担を迫っている」という記述も出てきた。
原告弁護団は準備書面で、被告会社の任意保険会社である三井住友海上保険が、ダイバーシティ&インクルージョンをホームページでうたっていることとの矛盾を主張する(同社ホームページによると、2022年4月現在、全国で約330人の障害のある社員が在籍し、聴覚障害社員の働きやすい環境整備も行われている)。
保険各社では1998年の保険自由化以降、過度な利益偏重や保険商品の複雑化とともに、支払保険料を意図的に減額しようとする払い渋りが行われてきた、といわれている。2005年から金融庁が保険金不払いを問題視し調査・行政処分に乗り出すようになった。三井住友海上保険も2006年6月に金融庁から改善命令を出されたことがある。障害を理由にした保険会社の払い渋りについては、Yahoo!ニュース個人で柳原三佳氏が詳しく追及している。
柳原氏が「9歳の壁」や「逸失利益の減額」の主張について、同社がどのように考えているのか、また、被告本人が裁判でこのような主張をしていることを把握しているのか、三井住友海上(広報部)に問い合わせたところ、「お客さま(被告)にかかわる個別のご契約につきましては、守秘義務がございますので、回答は差し控えさせていただきます。係争事案は、個別の事情に応じて法廷でご判断されるものでございますので、法廷を尊重する立場から、一般論の回答を差し控えさせていただきます」という回答だった。
残念ながら、安優香さんが生きていれば20歳になっている2030年(奇しくもSDGsの達成を目標とする年だ)に、聴覚障害者が健常者と同等の収入を稼げるようになっているという「高度の蓋然性」を立証するのは無理がある。セールスフォースの事例を持ち出すまでもなく、障害児者への教育や支援技術が進歩してきても、一緒に働く人の心のバリアはなかなか解消されておらず、コンプライアンスや社会的責任よりコストパフォーマンス優先でついて来れない人はどんどん切り捨てていくのをいとわないことが生産性につながるという企業の意識は今なお根強い。遺族がそれでもやろうとしたのは、女児の名誉のためだった。原告弁護団(その中にはセールスフォース事件の担当弁護士の一人、早田賢史弁護士もいた)は2021年7月1日の準備書面で「裁判所は損害の立証につき蓋然性を求めてきたが、年少者の逸失利益については実質的には可能性をもってその損害を認定してきた。現在の聴覚障害者とそうでない者の賃金格差をそのまま是認するような判断は決して許されない」とする。
聴覚障害当事者の連帯で認知が広がった
さて、この「難しい、わからない」といわれる領域の問題は、どのようにして認知が広がり、メディアの注目を集めることになっていったのか。
最初にメディアに出たのは2021年2月8日、朝日新聞デジタルの約1200字と写真4枚の記事だった。安優香さんの父、井出努さんは取材を受けた当時を、「係争中ということで制約は多かったが、『9歳の壁』とは差別ではないか、取り上げてほしいと各社に働きかけた」と振り返る。この記事が、歴史的に横のつながりの強い聴覚障害者コミュニティに伝わり、聴覚障害者団体や聴覚障害の弁護士が遺族に、裁判支援を申し出た。
4月1日には日本聴力障害新聞がかなり強いトーンで伝えた。安優香さんの父、井出努さんは日本聴力障害新聞に「世論によって裁判の流れが変わると信じている」と語っていた。
当初は弁護士1人で担当していた事件に、3月には自らも聴覚障害や視覚障害をオープンにする弁護士や障害者問題の裁判で弁護経験のある弁護士が参加し、大阪府外からも合わせて30人程度の大弁護団が形成されることになった。5月26日の第7回期日では、安優香さんより重い難聴の久保陽奈弁護士が口話で、聴覚障害のある松田崚弁護士が手話で意見陳述。
5月18日に公益社団法人大阪聴力障害者協会の役員が遺族と面会し、26日に第7回期日を傍聴。27日から公正な判決を求める署名運動が行われることになり、同協会の機関紙「ろうあ大阪」で継続的に伝えられていくことになった。署名は7月6日には10万人台に達し、14日の第8回期日を前に大阪地裁に提出された。署名は2022年3月時点で11万4549人で、判決の日まで集められ、提出されることになった。
11万人という規模の署名が集まったのは、加害者が持病のてんかんを隠して運転を続け、本件以前にも数件に及ぶ当て逃げや人身事故を犯しており、集団下校中に歩道で信号待ちしていた安優香さんのところに発作を起こして突っ込んだという事故の態様(刑事裁判では危険運転致死傷罪が適用され、懲役7年の実刑判決)や、民事裁判では安優香さんの障害を持ち出して損害賠償額を減額しようとしており反省が見られない、ということで加害者(加古川刑務所で服役中)の行為が強い非難を免れないことも背景にあった。
障害があると、逸失利益が低く算定される。なぜ、それが差別ではないのか―。そこには、障害者の平均収入が低い現実が背景にあった。
こうした現実を根拠に、逸失利益が低く算定され、遺族は精神的苦痛を受けてきた。大阪聴力障害者協会は、「安優香さん一人の個人的な問題ではなく、優生思想につながる差別の問題」とコメントを発表した。
大阪聴力障害者協会の今西伸行事務局長は、筆者のオンライン取材に「判例を作ってしまうと、同じような問題があった時に同じようにされてしまう」「差別問題を少しでも多くの人に知ってもらう手段として、署名運動を行った」「目標数をはるかに超える署名数だったので、喜びのほうが大きかった」と語った。「それまで同協会とのつながりはあまりなかった遺族も、仲間がたくさんいることに驚いていた」という。多くの人が裁判支援に携わるようになり、それまでより大きな法廷で審理が行われるようになった。筆者が「署名運動を行っていなかったら、裁判所は逸失利益を一般同等に認めることに消極的になっていきそうだったか?」と尋ねると、今西氏は「それは想像できる」と答えた。
障害者団体による働きかけもあって、メディアも命の格差を追認するとみられる司法判断が行われる可能性に倫理的な問題があるとみるようになり、判決を待たずして取り上げられることが増えていった。
テレビ朝日は5月26日、約10分間の枠で、遺族の思いだけでなく、原告弁護団に参加した久保弁護士が音声認識アプリを駆使して活動する様子も伝えた。
アベマプライム(2021年6月7日放送)では約21分間の枠で、先天性の感音性難聴で補聴器を使用するタレントの我妻ゆりか氏や作家で車いす当事者の乙武洋匡氏、人事向け情報サイト「人事のミカタ」編集長で障害者雇用の実態調査も行う手塚伸弥氏、ジャーナリストの堀潤氏などが出演してのディスカッションが行われた。乙武氏は6月12日にnoteでも書いている。
テレビ大阪7月7日 1分25秒
毎日新聞9月20日 約2600字
9月29日の第9回期日で被告側が「逸失利益は平均賃金の60%」と主張変更した時には、テレビや新聞も報じた。
毎日放送9月29日 約1分
産経新聞10月9日 約1300字、写真2枚
ABCテレビは2021年12月25日、15分間の枠でドキュメンタリー「娘の11年間を認めて "いのちの格差"と闘う両親」を放送。
テレビ朝日「テレメンタリー」は2022年1月9日にも23分間の枠で、「安優香の11年を認めてください~聴覚障害を理由に将来の収入が「健常者の40%」」というドキュメンタリー番組を伝えた。
2022年2月1日にはフジテレビ系列の関西テレビ「報道ランナー」も、8分間の枠で「重機に命を奪われた娘 4年たっても遺族を苦しめる「逸失利益」の考え どうして障害があると将来を否定されるのか…」というドキュメンタリーを伝えた。
なかでも、「交通事故で息子が寝たきりに――介護を続ける親の苦悩と、「親なき後」への不安」で2022年7月にPEPジャーナリズム大賞の課題発見部門賞受賞したフリージャーナリストの柳原三佳氏(2021年5月6日(約4700字、写真8枚、動画1点)・6月4日(約3000字、写真4枚、動画1点)・7月13日(約2600字、写真6枚)、2022年2月1日(約3200字、写真7枚)にYahoo!ニュース個人より配信)や、NHKの「ハートネットTV」(2021年10月9日放送、15分間、こちらにも詳細な取材)および「クローズアップ現代」(2021年12月9日放送、27分間。こちらにも取材ノート)が、特に核心に迫る報道を行った。
「中立性ありき」では伝えられないこと
一連の報道について、一部に「遺族の側ばかりに一方的に肩入れしすぎる。裁判ではどちらにも言い分があるのに…」とみる向きがある。この見方はどうだろうか。
裁判報道では、もちろん双方の主張に目を通し、「こちらに理がある」と断定するように誘導する報じ方(この事案で言えば、遺族の言い分のみを一方的に垂れ流し「逸失利益を低く算定するのは差別だ」と断定する伝え方)は避けるのだが、問題は、一方の側が平等の思想に基づいた主張をしており、他方がそれとは反対の平等を骨抜きにすることを容認する主張をしており、そしてどちらか一方が圧倒的に弱い立場である場合だ。
この事案は、「中立性ありき」の報道にそぐわず、双方の言い分を機械的に示すだけなく、それが裁判で争われることになった背景や構図に迫り、過去の判例や専門家の意見を入れ、今日の世情の変遷も踏まえながら、どうしていくのがいいか考える材料を提供していくのが望ましいとされたとみられ、特にNHKがそのように踏み込んだ報道のあり方になっている。(NHKハートネットは、なぜ安優香さんの逸失利益を女性労働者の平均の40%としたのか、具体的な根拠について被告側に取材を申し込んだが、回答は得られなかった旨も記載している)
これまで障害者の逸失利益が健常者と同等に認められた判例は少ない。「未成年者の聴覚障害を理由に逸失利益を低く算定することの妥当性」が裁判で争われるのは、いまだにそれが差別にあたるかどうかの社会的合意がないからこそではないか。そうした問題意識を喚起する報道のあり方になった。
NHKクローズアップ現代では、被告側の弁護をすることが多い嵩原安三郎弁護士からの「損害を穴埋めする、填補(てんぽ)するという考え方が損害賠償の基本。被害者に価値を付けるのではない、年収はその人の命の価値ではない。あくまで損害の填補ということを理解していただきたい」という一般論的解説も示しつつ、諸外国との損害賠償制度の比較が行われ、中谷雄二弁護士が「日本の損害賠償制度では、逸失利益の比重が大きくなりすぎているのではないか」とコメントしている。
NHKクローズアップ現代は、東京地裁交通部で損害賠償請求訴訟に携わった豊島英征元裁判官(現在弁護士)にも取材し、コメントを取り上げた。逸失利益をめぐる裁判で判断を下すポイントは、「どれだけの収入を得られる蓋然性があったかの事実を証拠に基づいて認定」としたうえで、「民事訴訟をやる中で、思わずこちらが感情移入してしまうような辛い思いをしている方はたくさんいる。ただ、裁判である以上は証拠に基づいて事実を認定する枠組み自体ははずせない。その中でこうすべきじゃないかっていうような所も含めて、加味して考えていく。そういう形で『事実』と『こうすべきじゃないか』という両方を取り入れて判断をしていくことが非常に悩ましいと考えていた。少なくとも私は、裁判官として実務を行う上ではそういったせめぎ合いの中で常に逸失利益を算定していたと記憶している」
専門家の意見として裁判で提出されることになった、立命館大学の吉村良一名誉教授は2022年2月1日の関西テレビのインタビューに、「そんなのおかしい、根本から変えなさいと(学者は)論文を書くが、裁判官はなかなか受け入れない。裁判所のよりどころになるのは憲法や法律だが、もっと広く言えば社会の人々の法意識。そんなのおかしいね、と思うかどうか」と語った。
2021年12月15日の第10回期日では、本件に関するメディア記事多数が、社会的関心の高さを示す証拠として用いられていった。
判決次第では、損害賠償制度のあり方の見直しに向けての議論が本格化する可能性もありえる。
また、NHKハートネットTVやクローズアップ現代では、報道が増えるにつれ、障害者問題の裁判に伴う誤解や偏見、遺族への「稼げないならワガママ言うな」などといったネットでのバッシングも出てきている、ということまで伝えられた。井出努さんは、「ほんまに気分が悪くなるようなコメントでしたね」とNHKに語っていた。
安優香さんの母、井出さつ美さんも、2022年2月21日の第11回期日後の筆者の取材に、「当事者でないとわからない気持ちがある。娘のために、いくら批判浴びても引き下がろうという気持ちはない」「9歳の壁、という言葉が許せなかった。それが原動力」と語った。
障害者の逸失利益をめぐる裁判で弁護経験のある中谷雄二弁護士は、NHKハートネットTVで、こうした裁判は総じて、原告の思いが理解されにくい構図があると指摘し、「民事裁判という制度を使う以上は、損害賠償の請求以外に方法がない。お金じゃないんですよ。本人を生かして返してほしいわけですよ。それができないからこそ、せめてほかの子どもと同じように扱ってほしいという思いがある」と語った。
フォトジャーナリストの安田菜津紀氏も、NHKクローズアップ現代で、「裁判というのは被害を訴え出ることができる非常に数少ない手段の一つ。『要はお金なのか』という心ないことばを受けたとしても、ご遺族が自分自身を責める必要は全くないということをまずお伝えしなければならない」と語った。
日本のメディアでの裁判報道では、障害者の人権や差別という問題が含まれるとなると「センシティブだから」と報道が及び腰になりがち、判決が出てから内容を簡潔に伝えるにとどまり、その事件が抱える問題を深く掘り下げにくい傾向にある。民放テレビ局では「事故になった車のメーカーや保険会社はどこですか?」などといってスポンサー配慮が働くこともあるという(保険会社を実名で伝えたのは柳原氏のみ)。法廷を尊重し、一方の言い分だけでなく被告側(多くはノーコメントだ)の言い分にも公平に配慮すべき、という大義名分を示しながら、小さき声を伝えられない、何が問題なのかを知ろうともしないことがあれば、メディアの不作為の責任は小さくない。もはやそれは偽りの中立性ではないか。
問題の認知が広がったのは、聴覚障害当事者コミュニティの連帯の結果といえる。裁判報道のあり方を考えるうえで興味深いケースとなるのではないか。11万人の署名が集まったという点は、それだけの共感を得たという証であり、大きなインパクトだが、やはり何が問題なのか、本質を可能な限りわかりやすく客観的に可視化することが大切である。
ここでもう一度、被告側の言い分を示す。
障害者の逸失利益をめぐる裁判は、障害者雇用の賃金が低く定着も難しい現状から副次的に起きている問題でもあり、現に生きていて働いてきた障害者によるセールスフォース発達障害者雇用訴訟(9月1日第7回期日)や岐阜特例子会社パワハラ裁判(8月30日判決)とも地続きの関係にあるといえる。これは支援学校に通う難聴児の事例だが、こうした認識を追認する判例となった場合、発達障害や他の精神障害の未成年者についても類推解釈されることがありえる(重度知的障害のある自閉症児については、県の最低賃金基準で逸失利益を認めた判例がある)。
今後、どのような判決になるのか注目される。
8月29日に証人尋問
8月29日午後1時20分より大阪地裁で、第13回期日が予定されている。この日は証人尋問が行われ、遺族が今の心境をどう語るか注目される。
11月27日続報・証人尋問傍聴記
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