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「聴覚障害の逸失利益100%」大阪高裁判決確定で、出版に向けて始動します

大阪高裁で1月20日に判決が下された、聴覚障害女児の逸失利益を全労働者の100%と認めた裁判で、被告側は期限の2月4日までに上告せず、判決が確定した。

裁判所のホームページにも判決文が公開された。

2月5日、重機事故で死亡した井出安優香さん(当時11歳)の遺族の弁護団が、声明を発表し、以下の点を評価するとした。

・控訴審判決は、判断の枠組みとして、全労働者平均賃金を減額することが許容されるのは、損害の公平な分担の理念に照らして、「顕著な妨げとなる事由が存在する場合に限られる」と判示し、原則と例外を転換させたこと

・障害者が社会参加する上で受ける制限は社会の側に原因があるという「社会モデル」の理念の浸透と障害者法制の整備、デジタル技術の進歩によって、就労における社会的障壁は「ささやかな合理的配慮」により除去できるとしたこと

・聴覚障害及び安優香さんの障害像の正確な理解のもと、安優香さんがその学力、コミュニケーション能力等をいかんなく発揮し、過重ではない合理的配慮によって、聴覚障害のない者と同じ職場で同じ条件で働くことができたと予測できるとしたこと

・コミュニケーションを音声に限るという意識や慣習こそが社会的障壁であるとした点や、聴覚障害者の平均収入について、法的義務となった合理的配慮を欠くという違法・不適切な実態を前提にしてはならないとした

そのうえで、「被告側の差別的主張がなされたことが報道された結果、聴覚障害4人、視覚障害1人を含む弁護団が形成され、合理的配慮によって弁護士としての職責を全うしている姿こそが『証拠』になると信じて弁護活動が展開された」「聴覚障害者団体によって、公正な判決を求める署名運動が起こり、合計14万筆以上の署名が集まる等、多くの賛同・支援が集まったことにも御礼を申し上げる」「控訴審判決は安優香さんが11年間、懸命に生きた証であり、家族の深い愛情、支援、教育関係者の皆様の尽力があったからこそ」と述べられた。

声明は、「全国の裁判所、弁護士、損害保険会社等、障害者の逸失利益の算定に関わる全ての方々に対し、この判決の意義・趣旨を深く理解し、従来の『障害があるから当然に逸失利益を減額する』という安直かつ差別的な取扱いを改められることを強く願う」と締めくくられた。

判決確定を受けて、出版に向けて始動します

私は、この事件を克明に記録して伝えるべく、出版に向けて動いていきます。本の内容は、安優香さんの生育歴と学校での様子、事故と刑事裁判、民事裁判、支援運動の広がり、判決、それらの社会的インパクトについて。全体を俯瞰する立場から、新聞・テレビで伝えられていない部分までカバーしていきます。8万~10万字を想定しています。

取材にご協力いただける方、助言いただける専門家を求めていきます。そして原稿案がまとまり次第、伴走いただける出版社を探していきます。

出版は私にとっては初めてのことです。幅広い方面からのサポートをよろしくお願いいたします。respect340231アットマークhotmail.co.jpまでお願いします。

【これまでの執筆実績】

鳥取市人権情報センター冊子「架橋」に寄稿「障害と逸失利益~いのちの価値に差のない社会へ~」(2024年2月)

【影響は広がる】

大阪聴力障害者協会の声明

全日本ろうあ連盟の声明

TBSラジオ 聴覚障害児の交通死亡事故めぐる裁判。争点となった『逸失利益』とは。弁護団の大胡田弁護士が登場。

DAA(一般社団法人事故車損害調査協会) 聴覚障害者の逸失利益の大阪高裁判決について「報道されていないことを話したい」

読売テレビの取材に、被告側は「回答を控える」、被告側の保険会社(三井住友海上保険)は「今回の判決を厳粛に受け止め、今後も誠実な対応に努めてまいります」、業界団体の日本損害保険協会は「個別の判決についてはコメントは控える。一般論として、保険会社は一件一件の事案を精査のうえ、個別の事案ごとに被害者の年齢や収入、怪我の状況などを踏まえて支払金額を決定している」と回答。

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長谷川祐子(長谷ゆう)/ライター・翻訳者・ジャーナリスト/3.8国際女性デートークイベント
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