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【独自調査】LGBTQ平等うたう巨大企業で社員活動が監視されている?ヘイト公言マネージャーに会社は「当社の見解や賛意ではない」
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ニューヨーク証券取引所に上場するアメリカ系IT大手・セールスフォースの日本法人、株式会社セールスフォース・ジャパンのリスク管理シニアマネージャーM氏は、2020年10月から現在まで現職にある。業務は社内で扱う個人情報等のリスク管理がメイン。社内の情報セキュリティー委員会の中心メンバーであり、セールスフォース社内の情報管理に深く関わっている。
M氏は、現在のポジションに就く以前、2018年7月から2020年3月まで同社で日本と韓国のセキュリティマネージャーという役職に就いていた。「社員の安全を守る」というセキュリティマネージャーの性質上、M氏は入退室記録を含む様々な社員の情報にアクセスする立場にあった。その後、グーグル日本法人に転職していた時期を経て、セールスフォースに出戻りした。
セールスフォースの社内システムで公開されていたM氏のV2MOM(セールスフォースで全社員が作成する個人行動計画)では、アフリカや中東、東南アジア、南太平洋などのハイリスク地域でのデューデリジェンス、対人警護、テロ対策、治安情報収集や分析にも携わった経験がアピールされている。
M氏の名前でグーグル検索すると、M氏の個人サイトが一番上に表示された。
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プロフィールには、「ナイジェリアの石油関連施設に危機管理担当マネージャーとして赴任、同国陸軍部隊および武装警察隊と共同で日本人駐在員らの輸送警護を行いつつ、イスラム過激派や分離独立派反政府組織、地元海賊グループなど対象としたテロ対策と情報収集分析の他、武装マフィア組織や地元労働組合への犯罪予防と情報収集、監視および宣撫活動を行う。」などとあった。スパイ活動に精通している人物像が浮かび上がった。
それに合わせて「米系大手IT企業のリスク管理部部長、危機管理チームの運営に加え、地域統括セキュリテイ・マネージャーを歴任。情報漏洩・産業スパイ対策を担当した。」と、セールスフォースやグーグルで行ってきたとみられる業務に関しても記載されていた。
M氏の個人サイトには、セールスフォースに勤務していることは記載されていない。現在の勤務先はオープンにせず、フリーの危機管理コンサルタントとして活動しているのである。
M氏のホームページには、衝撃的なコンテンツがあった。
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「『LGBTQ』の黒幕 -21世紀の新たな支配構造-」。かなりセンセーショナルなタイトルのオンライン講座だ。オンライン講座運営会社のダイレクト出版を通して提供されており、税込2万9800円。購入しなくても無料で紹介した動画を視聴できた。
動画では、2023年にLGBT理解増進法が成立した経緯に着目し、海外で先行して日本にも浸透してきたLGBTQ運動を「伝統や家族のつながりを破壊する危険な存在」とみなした持論が展開されている。トランスジェンダーを認めると「女風呂に男が入ってくる」という誤った認識を信じている人の側に立った発信もされている。M氏自身が動画に出演し、LGBTQ運動を危険視して調査し、人々を啓蒙しなければ、と信じるようになったいきさつを語っている。
これは、インターネットの言論空間ではびこる、「ヘイトではない」と断りを入れての無自覚のヘイトと同類である。
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M氏が個人的にこうした考えを持つのは思想信条の自由としても、LGBTQを公に受け入れているセールスフォースにおいて、「LGBTQ運動を調査」と称して「LGBTQを危険な存在とみなして警戒すべき」という考えを公言し、しかも利益を得る活動をしている人物が、以前は社員の安全を守るという名目で社員の個人情報に容易にアクセスできる立場にあり、現在においても社員の安全を守るための危機管理部門でシニアマネージャーとして勤務している。それが不都合な真実だ。
セールスフォースは、「社員を家族」と考える「オハナ・カルチャー」や平等の価値観のもとに、LGBTQを公に受け入れている会社だ。社内には、LGBTQをテーマにした従業員リソースグループ「アウトフォース」がある。セールスフォースは2023年中に社員16%を削減したが(筆者執筆MyNewsJapan3月27日セールスフォース「オハナ・カルチャー」の嘘〝家族〟を「PEP or PIP」で雑に16%削減)、それを経ても、アウトフォースの活動は存続している。4月19~21日の日本最大級の性の多様性の祭典「東京レインボープライド2024」では、セールスフォースが「プラチナスポンサー」(協賛金500万円)として名を連ねてブースを出展。21日には有志社員のパレードが行われ、250人が参加したことが、同社Xで伝えられた。日本の大企業では他に例を見ない浸透ぶりである。
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だがそうしたなかで、M氏の「LGBTQ運動を調査」と称した活動、それも利益を得る活動を、会社や上司、人事は「業務外の私生活での行動」「それも多様性の一つ」と言って野放しにするのだろうか。
M氏は入社前、海外でのスパイ活動に従事しており、そうした活動に精通していることを社内外でオープンにして隠さない人物だ。セールスフォースはM氏を、外からの脅威から会社を守るために雇用しているのか、それとも内からの脅威に対応するために雇用しているのか。
仮に、LGBTQの当事者がカミングアウトして、または当事者でなくてもアライ(同調者)として、アウトフォースに入り、目立つ形で活動するなどしたら、本人の気づかないうちに危機管理部門の個人情報シニアマネージャーであるM氏から“要注意人物”とマークされて監視されるのか。マークされた社員の個人情報は、一体何のために使われるのか。“過激に走らないか”と称した思想チェックだろうか。
M氏はこれでは、「LGBTQ運動を調査する活動の舞台として、セールスフォースを選んでいるのだろうか」と見られても仕方がない。社員らはそうしたことに気づいているのだろうか。
解雇裁判の尋問で会社側証人
筆者は2023年8月からリンクトインで、セールスフォースの危機管理部門のマネージャーだった元社員が、不当解雇を訴えている裁判を伝えてきた。この裁判で、5月22日10時から東京地裁で証人尋問が行われることになった。
これまでの経緯
セールスフォース日本、役員のパワハラ申立てたマネージャーを報復禁止に反し解雇した疑い浮上。出社めぐっても対立…東京地裁で係争中
セールスフォース日本法人におけるセキュリティマネージャー解雇訴訟、証人尋問へ
その出社ルール、解雇目的の人事権濫用か―米系ITセールスフォース日本法人のマネージャー訴訟
裁判資料によると、会社側証人は、元社員の直属上司(オーストラリア勤務)、M氏、M氏の直属の上司であるビジネスオペレーション担当役員I氏。各々の証人が何を語り、弁護士がどう詰めるかが注目される。しかし、裁判の陳述書、社内文書、インターネットで公開されている情報をもとに、会社側証人の人物像を調べていくと、疑問を感じる部分があった。そのことで調査に至った。
解雇裁判およびM氏のオンライン講座に関して、筆者は、株式会社セールスフォース・ジャパンにオンライン講座へのリンクを含めたメールで問い合わせた。その結果、広報が4月24日、「係争中の案件についてはコメントを控えさせていただきます。また、リンク先のビデオで述べられている立場や発言は当社の見解や賛意ではありません。」と回答した。
いずれにしても、セールスフォースの行っていることは非常に不透明と感じざるをえない。
【情報提供の呼び掛け】
セールスフォースにおけるLGBTQや平等をめぐる活動について、職場環境について、また危機管理などがどのようなものか、ぜひお聞かせください。些細なことでも、「記事にはしてほしくないが、伝えたい」という形でもお受けします。情報提供者保護を日々アップデートしています。hasets2015@gmail.com または yuhase@proton.me にお願いします。(実名・匿名どちらも可)
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![長谷川祐子(長谷ゆう)/ライター・翻訳者・ジャーナリスト](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/151402497/profile_ae4cd4f772a3f12d210656d5e0c51987.jpg?width=600&crop=1:1,smart)