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「そっちが切ってよ」「お前が切れよ」という若かりし頃の情事


「……切らないの?」
「えー?私が切るの?……そっちが切ってよ」
「ええ、やだよ、なんか俺から切るの。そっちが切ってよ、待ってるから」
「やだよー。私そっちが切るまで待ってるから」
「なんで?ただ切るだけだよ。ただボタンを押すだけだよ。ねえ、早く切ってよ」

 こんなやり取りを世の中の人がどれくらいしたかどうかは分からない。
 しかしながら初々しいカップルというものは、電話をした時にやりがちな一つのパターンなんじゃないだろうか。
 もう何時間もお互いについて話し込んだカップルが、「ああ、じゃあもうそろそろ切ろうか」という雰囲気になった時に繰り広げられる会話だ。どっちから切ろうが誰に何の影響がある訳じゃないが、なんだか少し切りづらかったりして。
 というのもまだまだ話していたいという一種の愛の表れなのだろうと思う。

 しかしこんなやり取りが、今後はなくなってしまうかもしれないという、面白いニュースがある。
 通信会社のドコモが、音声認識で切れる電話を夏にリリースする。
http://www.excite.co.jp/News/it_g/20170524/Itmedia_news_20170524094.html


電話の基本操作を、画面操作なしで行える「スグ電」の新機能。通話中に「じゃあね」「失礼します」「バイバイ」と言った後に、耳から端末を離すと自動で通話が切れるという。
 通話を切る合図は「じゃあね」「バイバイ」「失礼します」のほか、26日に実施されるアップデートで「バイビー」「おやすみなさい」「おやすみ」「またね」「失礼いたします」、各地方の方言などにも対応する。

 これじゃ

「じゃあ切るね。バイバイ」
「うん、じゃあね」
「……」
「……」
「……切ってない?」
「うん、切ってない♡」

みたいなやり取りが今後出来なくなってしまう……!

「じゃあ切るね」
「うん。じゃあね」
ブチッ!ツーツー……
「え?あれ?」

みたいなことになってしまう。これはなんとも少子高齢化に歯止めが利かぬ発明な訳です。

まあ今後こういうのが当たり前になったとしても、

「ねえ、ほら言ってよ♡」
「やだよ、お前が言えって♡」
「私は嫌よ。ねえ、お願い♡」
「……分かったよ。じゃあ言うよ?」
「うん♡」
「じゃ……」(じゃあね)
「……」
「……ってそう簡単に言わないよ♡」

「うふふ♡」

みたいなやり取りに変わるだけかもしれないけどね♡

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