「直感」文学 *見えない鍵*
「ああ.......」
不意に漏れたのはそんな情けない言葉だけだった。
いや、最初から間違っていたのかもしれない。
そもそも僕は自分の会社のセキュリティのことなんてあまり知らなかった。それが原因だ。
セキュリティーカードを持っている。鍵だって持っている。
それなのに、僕は会社のエントランスから出ることが出来ずに、天井からは甲高いブザー音が鳴り響いている。
ドアは固く閉ざされ、僕になす術がないことを知らせた。
もう諦めて、ただここでじっとしていることしか出来ないのだ。
やがてセキュリティ会社の人間が訪れて、僕は話を聞かれるのかもしれない。
カードも鍵も持っているというのに、社員証は持っていない。
なんて不運なのだろうか。
僕は自分がここの社員であるという事実を説明する事ができるだろうか。
......。
それに、
会社から盗み出したこの大量の現金に、どう言い訳を付ければいいのだろうか。
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