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「直感」文学 *初めてのネタ見せ*

 「笑えません」

 ネタを見せたのは初めてだ。今目の前にいるのはミツキだけだというのに、彼女は真っ直ぐに僕の目を見てそう言った。
 
 何の躊躇もなく、ただ真っ直ぐに筋の通った意見だった。

 「え……えっ?」

 僕はただ彼女のその反応に後ずさりして、口はおぼろげに開くだけなのだ。

 「それは〝ネタ〟というほど、優れたものではないですよ」

 大学の後輩であるミツキが見せろとせがんだからしょうがなく見せたのに、この樣だ。今までは誰にも見せてこなかったのに、

 いやはや……、

 今考えてみれば、どうして見せたのかも謎に思える。

 そもそも、僕が実はお笑い芸人を目指しているということだって、彼女以外には言っていないのだ。

 それだって不思議な訳だけど、、

 「いいよ、もう!見てられない!」

 ミツキはそう言いながら立ち上がった。

 「ほら立って!」

 彼女はそう言いながら、僕を無理矢理に立たせた。

 「私が教えてあげるから」

 それから何年経っても、僕は彼女の指し示す方角へ動いてばかりなのである。ただ彼女の隣でツッコミを入れながら。


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