「直感」文学 *その枝*
木の枝を拾って、ただ宙に投げてみた。
それは少し風に揺られながらも、すぐにその場へ落ちてしまって、
今はただ儚く、湿った土の上に転がったままだった。
とても無防備なその枝を、僕はただじっと眺めたままで、なんの手を加えることもなく見つめていた。
別に何の思い入れもなかったその枝なのに、今では少し気がかりで、この枝をここに放置していくことに少しためらうくらいだった。
夜が明ける。
たとえそうなろうとも、きっとこの枝はずっとこのままで、この姿勢で、ここにいるのだろう。
僕はベンチから腰を上げ、その枝を置いたまま家路を急いだ。
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