「直感」文学 *サヨナラ、また来年*
晴れた春の日。どこまでも青空。綺麗だった桜は、「サヨナラ」と示すように散っていた。
「ああーいい天気!」
私は大きな声で、両手を空に伸ばした。
「大声出すなよ、恥ずかしいだろ」
と彼は言う。
いいじゃない。こんなに天気がいいんだもの。そりゃ、大声だって出したくなるし、両手だって伸ばしたくなる。こんなに開放的に、自分をさらけ出せる日なんてそんなにないんだから。
「まあでも、本当にいい天気だ」
彼はそう言って、私の作った出し巻き卵を口に放り込んだ。
「どう?味は?」
「うん!うまい!」
と言って笑顔を見せた。可愛らしい顔。って思いながら気付けば私も笑ってる。
散っていく桜はとても儚い。だけど、とても綺麗だった。
突然「サヨナラ、また来年」と耳元で桜が囁いた気がして、私は散った桜にも笑顔を返した。
どこまでも美しい桜。「サヨナラ、また来年」と、私は心の中で囁いた。
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