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「直感」文学 *秒針の音*

 何もない部屋に、秒針の音だけが響いた。

 どうしようもないのは、誰のせいでもないし、誰のおかげでもないから。

 だけど今ここで秒針の音なんか聞いていると、私はなぜだか寂しい気持ちになったりして。

 いろんなものから逃げるようにして、ここまで来た。

 それは私が望んでいたはずなのに、今はどうして悲しくなってしまうのだろう。

 秒針の音は、嫌なくらいリアルに時間の流れを感じさせて、私の身が少しずつ剥がされていくようだった。

 そんなに、なぜ、そんなに感じなくてはイケナイのだろう。

 私は、今、私は、今、どこにいるのだろう。

 秒針の音は、ただ儚く、ただ静かに、ゆっくりと時を刻むだけで、何もしてくれない。

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