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「直感」文学 *つうじる*
目覚めると、そこには紛れもない現実しかなくて、僕はこの世をどう受け止めたらいいのか分からなくなってしまった。
昨日、母親が死んだのだ。それが僕に突きつけられた〝紛れもない現実〟だった。
もう長い事生きたさ。
と、兄貴は言っていたけど、僕が生まれてから1秒だって母さんが生きていなかった時なんてないのだ。それを急に受け止めろと言われても、それは随分と難儀な事に思えた。
電気を消した暗い部屋では、それがたとえ白い色をしていたって、うまく天井を見ることができない。
母さんは、もうこの世にはいないのだ。
もう完全に、なくなってしまったのだ。
「眠れないの?」
妻が部屋に入って来て、ベッドの横に腰を下ろした。
「いや、ちょっと寝ていたよ。……夢を見たんだ」
妻は僕の頭に手を当てて、「どんな夢?」と聞いた。
「母さんが生きていた時の夢さ」
僕はそう言って、また眠りの中に入ろうと目をゆっくりと閉じた。
「大丈夫」
妻の声が優しく僕の耳に届いた。「私がいるんだから」
そう言ってから、朝までずっとその場所にいてくれたんだ。
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