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『短編』再会はどこか不安定 第4回 /全5回
「ところでお前最近どうだ?」
時計は深夜一時を指していた。店内は幾分落ち着き、入ってきた時の賑やかさはもうほとんどなかった。二つ隣の席に座っていた大学生らしきグループも、さっきまではしゃいでいたように見えたが、いつの間にか静かになってしまっていた。二人は机に顔を突っ伏している。寝てしまったのだろう。もう電車も走ってないから、僕に残された道は将の家に帰るか、このファミレスで朝まで過ごすか、どっちもどっちに思えて溜息が漏れる。店内はそんな諦めた空気が漂っていた。
「最近?」
「そう、最近だよ。俺たち結構久し振りじゃん」
ようやくこういった流れが来たのかと感じたが、もう深夜一時。僕にはこの時間から話を始める気力なんてほとんど残っていなかった。
「……ああ、順調だよ、普通普通」
「なんだよ、普通って」
「うーん……、特に問題なく、普通なんだよ、普通」
「それってなんだ?普通に彼女とかいるのか?」
「彼女?」
「そうだよ、彼女だよ」
「……彼女って、そういう話?」
「それ以外に何があるっていうんだよ」
「いくらでもあるだろう、仕事とか、……なんか諸々」
「その諸々の中に女絡みの話だってあっていいだろう?」
「まあ、そうだけど……」
そうだ、こいつはいつだって女のことで頭がいっぱい。どうしてそんなにもずっと女の子のことを考えていられるのか僕には理解出来ないけど、それが彼であることなのだと思うとなんだか妙に納得出来てしまう部分もあった。
「別にいいだろう、そんなことは」
「よくないよ。大事なことだ」
「……えっと、まあ、別にいないよ。彼女とかは」
「ふーん、そうか」
彼は疑ったような目つきを向けていた。
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