長編小説『becase』 2
私はどこか彼に、そういった不審な点を見出した、もしくは、見抜いたのだろうか。言葉の端々に散る、彼が消えてしまう予感を感じ取ったのだろうか。でも、いくら考えてみても、彼がそう言った振る舞いをしていたとは到底思えなかった。
私と彼はいつも通りの会話をいつも通りに取り交わしていただけで、不信な点なんて一つもないと思う。
もしかすると、そんな直感なんてただの空砲で、しばらくすれば彼はいつものように「負けたー」なんて言いながら、何事もなかったようにパチンコ店から帰ってくるかもしれない。そう考えてみる事も出来るけど、それは考えれば考える程、あり得ない事なのではないかと思ってしまうのだ。やっぱり。