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『短編』再会はどこか不安定 最終回 /全5回

「本当だよ。大学卒業した後に、同僚の子と少し付き合ってたけど、すぐに別れちゃったから」

「同僚と付き合ってたのか?」

「そうだよ。同期の女の子。部署は違ったから毎日会ったりはしないけど」

「なんかでもそれ、やりにくそうだな」

「別に。そんなことないよ。普段顔を合わせないから。同じ会社だって言っても、別に気にならない距離感」

「ああ、距離感ね~」

「そうそう、距離感」

将は突然くっくっと笑った。

「距離感って難しいよな。……多分あれだ、俺が上手くいかないのって、その距離感が下手くそなんだよな、きっと」

「っていうか、僕たちだってその距離感を保ったけど、結果別れたんだし」

「でもな、やっぱり大切だと思うよ、その距離感ってのは。……ほら、啓介、俺が大学の時付き合ってた子覚えてるか?美恵」

「ああ、うん。あんまり会ったことなかったし、ぼんやりとだけど」

「あいつと別れたのもやっぱり、距離感が悪かったんだと思うんだよ。……なんつーか俺、唐突なんだよな」

「今日の誘いみたいにか?」

「そう。突然思い立つんだよ、そしたら動かずにいられない。逆に干渉して欲しくない時は、とことん冷たい」

「そんなの嫌だな。相手は疲れるだけだ」

「そう、相手は辛いだけだよな」

将が少し俯くと、突然湿った空気が流れた。何か言葉をかけてあげたいと思ったが、生憎何も思い浮かばない。

「同じような距離感の人が見つかればいいな」

そう言いながら僕は席を立った。禁煙席の方には、喫煙席よりもいくつかのグループがいたが依然店内は落ち着いた空気だ。

「そんな人いるかよ……、どこ行くんだよ?」

「ちょっとトイレ」

僕はそう言ってトイレに向かった。スマホを見ると、
〝さっきはありがとうございました!千奈美です。早速連絡しちゃってすみません。ちゃんと帰れましたか?〟
とメールが入っていた。さっきまで一緒にお酒を飲んでいた千奈美という女の子からだ。おとなしい方の女の子。さっきの店で席を立った時、

「あの、連絡先聞いてもいいですか?」

と突然言われた。ずっとおとなしくしていたから僕は少し驚きながらも、彼女と連絡先を交換した。将も、もう一人の女の子もいないところで。
手を洗いながら、備え付けられた鏡を見た。今はただただ眠りたいと思いながら。

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