経営者とアーティストのバランス
自分のアートを表現出来る環境作りをしたくとも、まだ先にやる事だらけでいつになることやら…
ブランド構築に組織化は必須であり、そこには人材の育成など、大切な事ばかり。
それを放棄してまで、自分の好きなことを優先できないと、現時点では半ば諦めていましたが、突然そのチャンスは訪れました。
それは、昨年2019年の10月頃、銀座三越さんのバイヤーとの商談でのことです。
「来年、2020年の2/19からの2週間エスカレーター前のイベントスペースを押さえましたので、他のブランドでは出来ない、仲垣さんの世界観で、yuhakuだからこその、目を引く凄い事、出来ませんか?」「テーマは1点もの。唯一無二です。」というお話を頂いたのです。
正直漠然とした内容でのオファーでしたが、長年お付き合いしている三越さんとの商談では、いつも期待を込めて、あえてその様な自由度の高い表現して頂いているのであろうと解釈しています(笑)
このオファーを頂いた数ヶ月前にも、yuhakuとしてのポップアップイベントを同じ場所でさせていただいていましたが、この商談中のバイヤーからいただいた「仲垣さんの世界観を!!」という言葉に、今回は売上だけではないブランド価値を魅せていきたいという考えが強く沸き立ち、「では、仲垣友博としてのアートを表現させてください。」という事になりました。
夢を語っても、実行されなければ、ただの夢どころか、口先だけの人間にも見られてしまうとも感じていた為に、この好機を使わない手は無いと思いました。
しかも、銀座三越さんからのオファーともなれば、社長業を止めてでもやらなければいけないという、立派な言い訳が立つ!!(笑)
という事で、初の個展の開催が決まったのですが、構想から制作期間を考えると約1か月半必要だと試算し、年末まではひたすら社長業に集中し、年始から会期までを作品制作に集中するというスケジュールを組みました。
社員には「年始から会期までは会社来ないので、よろしく!」という感じで、自分が居なくても会社を回せる体制づくりの試運転と考え、その間の会社を任せる事にしました。
とにかくやりたい事は山ほどあるが、タイムリミットと、yuhakuというブランドとアーティスト仲垣友博を結び付ける作品を作らなくては本末転倒。
また、空間にも制限がある上に、数ヶ月前には什器レンタルの手配もしておかなくてはいけないので、作るものは漠然としながらも展示スペースをどう使うかだけは決めるというスケジュール。
そんなこんなで、頭の中がとっ散らかってしまっていたんですが、頭の中の整理と気持ちを落ち着ける為にも、年始からは美術館巡りなどをし、様々な分野の展示を見ることで、頭のリセット&インプット。
色々な作品を見ましたが、作品はその人の個性で出来上がっているので、自分の中に取り入れるという感覚はありませんでしたが、その展示方法にはインスピレーションを受ける事が出来ました。
実の事を言うと、什器の手配をした段階で、既に大まかな作品のイメージ図は頭に浮かんでいたのです。
ただ、それをどのような手法で表現するかを悩みに悩んでいました。
今回の展示では、今までの経験を表現する
・幼い頃から見て、影響を受けた盆栽
・自分の中で最も美しく、ずっと見てきた空
・ずっと憧れた絵画の道
・20数年間触ってきた革
・自分で編み出した革の染色技法
これを1つの作品にまとめるにあたり、「有機質と無機質のバランス」このワードこそ、商品づくりで最も大切にしているデザイン思考の1つであり、今回の鍵となるのである。
上記の経験値の中での有機質には、「革」「盆栽」「染色」など多数あるが、それと対比する無機質には、以前から作品づくりの際でも使用した「スクエア」(正方形)だと思いました。
自分の生み出す革の有機的な染色には無機的な直線の形状が非常に相性が良いとも感じていたのです。
草間弥生が「ドット」で貫くなら、仲垣友博は「スクエア」を貫く!!そうして、生まれた作品達がこちら。
ちなみに、作品撮りはカメラにもハマっているため、自分自身で撮影しました。
初日には、11年間yuhakuのファンでいてくれているお客様に、京都からご来場頂いた他、多数ご来場頂き、土日には自分も店頭で接客をしました。
コロナの影響で、館全体の来客数は減っていましたが、たくさんの方に見て頂き、銀座三越さんの館内では非常に高い評価を頂きました。
その翌週はというと、残念ながら「不要不急の外出は極力控える様に」というアナウンスにより、土日にも関わらず平日以下の来客という事で、非常に寂しい思いをしました。
しかしながら、この良い機会を与えて頂いたお陰で、口先だけでなく、yuhakuとアートを共にあるブランドであるとの証明が出来、今後の更なる挑戦の為のスタート地点に立てたと実感しています。
アートは希望です。
これを見せることも自分の経営の中では大切なことです。
その為には「経営者とアーティストのバランス」が重要なのです。
実はこの秋から冬にかけローンチする、更なるプロジェクトが既に動き始めているのです。
さぁ、乞うご期待ください!!!