ゆつゆつお散歩紀行43
気持ちのいい朝じゃなかった。メガネが落ちているのを知っていたから、取り方を知らないベッドの下に落ちている。なんとか目が見えないので、携帯で動画を撮りながら、折り畳み傘を使って取り出した。朝の6時だったと思う。美術館がopenするまで時間がある。10:00時ごろだ。チェックアウトは、10:00時までだが、美術館に長くいたいので9:00に出ることにした。それまで二度寝する。朝、カフェに行くほどの気力はなかった。
それほどに先週の語学学校はストレスフルだった。まず初日は、道が封鎖してバスが使い内にも関わらず、朝早くから集めさせられた。そしてガンガン英語を話すヨーロッパ系の人々に驚くのとともに、割と日本人がいて集まっていることに妙な安心感を抱いていた。けれども逆張りだけは得意な僕は、日本人に話しかけなかった。このままぼっちのまま過ごすのかと思っていた。プレイスメントテストを小さな携帯だけで受けさせられた。校長が僕のテストを除くやいなや、writingのスコアをB2と書き込んだので不安になった。さらに、ちょっと話しただけでspeakingのスコアをB1と書き込んだので不安が増大した。
市内観光では誰にも話しかけなかったし話しかけられなかった。このままではまずいと思い食堂で中国人に話しかけた。悲しいかな、人間は自分と似た見た目の人に親近感を抱きやすいのだ。しかし、その中国人も全く英語ができないので、話すことができなかった。基本的な疑問文をある程度は理解してくれた。なぜか連絡先を交換してくれた。この中国人の展開は、また今度記す。
プレイスメンステストではB2クラスに振り分けられることになった。待て、レベルが高すぎる。スピーキングのテストをしていないし、マジで話せない。この結果に抗議するほどの英語力もなければ、勇気もない。元々はB1から始まったらいいなと思っていたのだけど。不安を胸に帰って次の日を迎えたら、案の定みんな流暢に話しているではないか。しかもヨーロッパ系は、よくできる。アラビア人もトルコ人も発音が独特すぎてよくわからないが、とにかくよく話す。
このまま友達ができるのだろうか、なんて思っていた。大学では自動的に友達ができていたのだが、それは言葉の壁がないからだ。
けれど、みんなフレンドリーなのが救いだ。挨拶していれば、顔見知りになってなんとなく仲良くなっていくもので、この先週の出来事は、結局緊張していたのだ。話を戻す。
そんなわけで09:00にホステルを出た。シャワーを浴びたかったが、タオルを持っていなかったのと、なんか不潔に思えてしまって、諦めた。
今日は学校を休んだ。昨日ディベートに参加できず授業についていけないストレスと、イタリア人に発音を訂正されて後々確認したらイタリア人が正しかったという自分の発音の悪さへの絶望のために、朝起きて休むという選択肢が頭に浮かんだのだろう。ここで休んだらサボり癖になってしまうのではないか、という不安もあったが、そんな不安を掻き消すぐらいに、学校の足取りは重かった。ここで授業をサボったら留学そのものが本末転倒なのではないかという気もしていた。
自分のことが嫌いになってしまうのは承知の上で、なんとなく休むんだろうなという気で、喫茶店に行った。喫茶店で、GPTくんに休みのメールを作ってそれをメールした。買った英語版のカフカの小説を読んでみたが、全くわからなかった。今日休むのだからそれを取り返すぐらいは勉強しないと、とか授業には出ないけど遅れを取り戻すとか矛盾したことを考えていた。
いつもその日あったことをホストファミリーに話しているのだが、そこで嘘をつくのが嫌で、夕方に映画に行くことにして家での夕食をスキップすることにした。その連絡を入れた。
その喫茶店は、バックウェル書店という本屋の中にある。メールを送って一安心すると、トイレを催して席を離れることになった。結局いらないものばかりを持ってきてしまって、カバンが重い。英語の授業をサボっているのに英語を勉強している自分が滑稽に見えてきたので、気分転換に地下の本棚を見に行くと、京都丸善を思わせる広さだったのでテンションが上がった。ここで英語の教材を買おうという気なって、GPTにおすすめの単語帳を聞いた。けれどもその本屋にはなかった。
自分の関心にそう哲学と古典を眺めていると2時間ぐらい経っていた。中級者向けのリーディングの本と、スピーキングの本と、単語の本を買った。