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【BanG Dream! It’s MyGO!!!!!感想】椎名立希に見た”弱者としての共感”

はじめに


こんにちは。
アニメ完走をもってMyGO!!!!!の物語がひと段落したので筆を執った次第です。
この先も、ガルパのストーリーやリアルライブで彼女たちの一生へと積み重なっていく一瞬を見届けていくのが楽しみですね。

「共感」をキーワードの1つとして描き、負の感情への共感・肯定のメッセージをこれでもかとストレートに伝えて来る本作、刺さるキャラクター・歌詞・描写も見る人や視点次第で様々だと思います。

今回は、複雑な考察など抜きにして「なぜ椎名立希というキャラが刺さってしまったのか」をつらつらとしたためていきます。

剝き出しの牙で自らを守る一匹狼

椎名立希の特徴として真っ先に挙がるであろう態度・口の悪さという要素。
なんでこんなにカリカリしてるのか?というと単純で、「ずっと余裕がないまま生きてきてしまったから」だと感じています。

名前でからかわれてしらたきと椎茸が嫌いになる人間ですしね……。

優秀な人物として描かれる姉へのコンプレックスは随所に描写されていましたし、何かをスマートに解決できるだけの器用さもありません。

海鈴を新メンバーとして加入させたのなんか余裕のなさと不器用さの極地にある行動です。
「ベースがいなきゃバンドはできない」とかそういうことじゃないんだよ!

何かに取り組むにあたって、精神的にも時間的にも余裕を生み出すことができないのです。初作曲の時なんか見てて苦しいほどにモロでしたね。

私の中には、常時余裕がない人間の苛立ちへの共感がありました。
避けられない比較や能力不相応なプライドに雁字搦めにされた人、いると思うんです。

全てを噛み切らんとするその態度は、牙の奥に自分を隠し、他者を遠ざけることでその身を守る弱者の振る舞いです。弱い犬ほど…ってやつ。

私、このキャラ見たとき…自分のことだと思った。
燈の歌詞について語るそよさんの感情も理解できます。こうも私自身の持つ弱みを体現するようなキャラと向き合わされるの、死ぬほどヤバいです。

燈に対する過保護ムーブも、「自分が内に抱えるものを救う歌への深い共感」に端を発しており、自分を守ろうとする意識の延長線上にあるんじゃないかと思うと愛おしいですね。自他の境界線の引き方が不器用すぎるばっかりに……。

「劣等感」の象徴 第6話について

アニメ放送前に公開された動画の中で挙げられたキーワードです。

第6話で初の作曲に挑戦する際、誰にも頼ることなく1から10までこなそうとしてパンクするというエピソードがありました。
大元の曲作り、来るかどうか不安定な野良猫のパート、素人である愛音への対応、明らかに気が散っているそよ……ただでさえ余裕がないのに、対応しなければならないイレギュラーが多すぎました。

成熟したバンドであれば個々の実力や演奏のクセ、編曲などなど様々な要素を取り入れつつメンバー全員で作り上げることもできると思うのですが……来ない(楽奈)初心者(愛音)心ここにあらず(そよ)作詞以外サッパリ(燈)ではそもそも自分一人で抱え込まざるを得ません。目の前のイレギュラーを潰すことしか考えられない視野狭窄に陥るのも理解できます。

この場面、度重なる譜面変更に振り回され続けながら容赦ないダメ出しに晒されて限界を迎えた愛音に同情が集まることが多いと思うのですが、初めての作曲でありながら劣等感との戦いでもあった立希にも同情の余地はあると思います。

「私は祥子みたいにはできないんだよ!」

一人で曲も作れて、メンバーに合わせた譜面のアレンジもその場でできて、どんな提案でも受け入れて……それを「燈の歌詞に相応しい曲を書く者の責務」と語る超人。そりゃあ「信じられるのは我が身一つ」とか言えますわ……。

立希が愛音に取るべき対応の手本を見せる超人の方


「燈の歌詞に相応しい曲」を作るには、こんなものと戦わなければなりませんでした。

そもそもバンドメンバーが頼れる状態ではないのもそうですが、一人でなんでもできてしまう超人と戦いながら「一人に任せすぎた」とフォローされても、逆効果にしかなりません。

しかしまあこのあとの流れがめちゃくちゃMyGO!!!!!だなぁ~と思うのです。
誰にも頼ることができず導かれることを知らなかった迷子の狂犬
は、逃げた先で捕縛され、心身ともに絆創膏を貼られるに至りました。

立希自身の問題は何も解決していません。しかし確実に前に進むことはできました。これからも迷子であり続けますが、それでも前に進み続けるのです。

MyGO!!!!!アニメの特徴として、「それとなく見せていた人となりとそれが抱える問題が答え合わせとして炸裂するある種の快感」がありますよね。7話ラストのそよさんなんかが凄くわかりやすい例です。
刺激された劣等感が危険な領域へと突入したこの6話は、立希にとってのそういう回だったと思っています。

また、この回を踏まえると迷星叫の歌詞が味わい深くなりますよね。

僕になる それしか それしかできないだろう
誰の真似も上手くやれないんだ
こんな痛い日々をなんで 退屈だって片付ける?
よろめきながらでも もがいているんだよ
迷い星のうた

迷星叫 - MyGO!!!!!

よう沁みる。

これは余談ですが、来ないなら切り捨てれば良いのにそれでも楽奈アレンジパートを入れようとするのも「燈の歌詞に相応しい曲にするため」の一心で、これが結果として「楽奈の居場所」を作ったと思うと……アツいですよね。

成功体験の渇望

この項で触れるのは、共感以上に愛おしさを感じた描写になります。

CRYCHICの初ライブ大成功で涙を浮かべたり、いがみ合い続けていた愛音と「大っっ成功だよ!」とはしゃぎ合ったり……かわいいですよね。

燈過保護ムーブを「歌詞への共感に端を発する」と書きましたが、ライブの成功体験に脳が焼かれていたからこそ、それがより過剰に発露してしまったのだと思います。

そもそも、歌詞を初めて読んだときは「こういう感じか……」止まりでしたしね。
歌になる前に感動していた作曲者とはえらい違いです。

歌になる前に歌詞に感動していた作曲者の方

成功したライブのあとの"ボーカル必死すぎ。"の投稿やそよさんの激昂といった「水差し」にはいずれも毅然とした態度で対応していました。

「失敗した、上手く歌えなかった」と落ち込む燈とは対称的に、「何も分かってない。ブロックしてやる」ですからね。

一度火が着いてしまえば、バンドのためなら平気で徹夜するし学校の欠席早退は当たり前。本業を疎かにするな、という説教は本気になった青春パンクロックジャンキーの前では野暮でしかありません。若いってステキ。

劣等感を抱えた弱者が誰よりも成功を渇望しているの、とても愛おしく、また心強く思うんです。
だからこそ本気になる。だからこそ不器用になる。だからこそ迷子になる。

不器用でも迷子でも必死にやるしかできなくても、その一瞬一瞬を重ね続ける運命共同体と出会えた立希が、少し羨ましくもあります。

おわりに・まとめ

年長者ばかりのコミュニティでずっと自分より優れた誰かと比較して、傷つきたくないから棘を張り巡らせて、そんなことをしていても救われなくて、そういう青春時代を過ごした私には椎名立希は痛いほど刺さりました。

私は時の流れが解決してくれましたが、立希にはそれでも一緒に進んでくれる仲間がいます。

くれぐれも健康には気をつけて、一生を紡いで行って欲しいと、そう思います。

それでは、ありがとうございました

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